江戸川大学社会学部ライフデザイン学科 篠田卓馬
1.はじめに
このレポートは、2010年10月28日に神保町の岩波アネックスビルにおいて、山梨県勝沼町で、中央葡萄酒株式会社を経営されている三澤茂計さんに「国際的になった日本のワイン」をテーマに、お話ししていただいたものをまとめたものである。
2.ブドウ・ワインの歴史
(1)ワインの起こり
西洋では水が美味しくなく、代わりの飲み物として水を使わないワインが飲みだされたのである。しかし日本では地下水が豊富で水がそのまま飲めたため、日本酒などの水を多く使う酒が発達していった。
(2)大善寺のブドウ伝説
日本原産の甲州種には1200年の歴史があり、勝沼の大善寺にはブドウにまつわる伝説がある。僧行基が修業をし、満願の日になると、右手にブドウを持った薬師如来が夢となって現れ、それに喜んだ行基がブドウの作り方を民衆に広め救ったという。これが伝説上の甲州葡萄の起源と言われている。
3.日本のワイン
日本はワイン新興国、国産よりも輸入ワインの方がブランド価値がどうしても高くなる。それは妄想的な被害者コンプレックスとして日本ワイン業界に根強くある。日本産のワインとして売るにはどうしてブランド価値と信用をあげなければならない。そのためには原材料のブドウを生産しているこの勝沼の品位をあげ、「風格」を作り上げる必要があった。中でもひときわ活躍したのが、メルシャンの社長になる浅井昭吾さんであった。ブドウ作り、ワイン造りの知識を占有するわけではなく、他の会社にも広めて勝沼全体の底上げをしたのであった。これによって勝沼はブドウ、ワインの名産地と呼ばれ、国内ワインの抱えてきたコンプレックスを打破する力になったのである。
4.世界で評価されていくワイン
日本のお酒というと海外で日本酒が有名であり、日本産のワインは今まで評価を受けてこなかった。しかし、日本食の海外進出に伴い、日本食に合う甲州ワインということで、現地の食文化と融合した食事スタイルを作り上げることに成功し、海外でも評価を受け始めることになる。特にイギリスで生まれたワイン業界に終えける最高水準の資格である、マスターオブうワインに選ばれた事が大きい。なぜ評価されたのかというと、日本でクロワッサンを作るのと同じように、海外品種によって作られたワインではなく、オリジナルのブドウをちゃんと使って開発して行ったことが評価されたのである。
5.これからのワイン
今まで、ワイナリーがワイン用ブドウを調達する際に食用ブドウ農家に甘え、自らが作る最高のブドウを作り上げてこなかった。これからはワイナリー自身が本物のワイン用ブドウを作り、自ら自立していくことが大切である。なぜなら、自ら品質を高めていく姿勢と挑戦がなければ、自己満足に終わりいずれは消えてなくなってしまうからだ。ワイン市場の激戦地であるロンドンはワインビジネスの実に7割を占めており、現在ニュージーランドが1番人気となっている。ここで勝つことを目標にワイン造りをすべきである。
また、現在人気になっているワインは、ロゼや白ワインという軽いさっぱり系のものである。これは近年の軽食文化と結び付いたものであり気軽に飲めるところが評価されている。重い赤ワインについては健康志向の人が好んでいる。しかし、依然として国内では3000円を切るワインは少なく、仕切りが高いものとなっている。
6.感想
自ら挑戦し、踏み出し戦い続けること。周辺に満足しないで常に上を知り、そこを目指して進み続けること。それをしなければ、いずれは誰かに抜かされ置いていかれることになる。それを三澤さんのお話で学んだ。
三澤さんのお話を聞いていて一番感じたのは、ワイン造りについての熱い情熱であった。 海外から持ち込まれたワイン文化であっても、日本の原産種である甲州種を使って、世界に評価されるワインをローカルから作り上げていったその情熱はすさまじく感じた。この勝沼において、まちづくりはワイン、ブドウの街としてアピールすることによって風格をあげ、世界で戦えるワインを作り上げる土台を担ったのではないかと思う。まちづくりは観光客の増加や、そこに住む人々の生活の活性化だけではなく、その土地の産業自体もよりゆたかにして行ってくれるのである。