江戸川大学社会学部2年 篠田卓馬

今回のゲストは西上ありささん。まちづくりを通して人の幸せを考えてきた人である。

「島のシアワセ、田舎のシアワセ、まちのシアワセ」のテーマで、学生時代から行ってきた家島での活動についてお話を伺った。

家島とまちづくりのきっかけ

家島は兵庫県姫路市の瀬戸内海に浮かぶ周囲15キロメートルの小さな島で、おもな産業は採石業と漁業、長年日本の経済成長を裏から支えてきた島である。しかし、政策の転換により公共事業が削減されると仕事がなくなり、相次いで会社が倒産。各組合長による集会を開いても、石の値段を下げればよいのでは、というお金の問題が解決すればいいという発言ばかりであった。

西上さんは、この場に、学生でありながら参加させられ、「お金の問題ではない、地域にあるものを活かしていくことが必要」と発言、しかし、組合長たちには相手にされず、机を蹴倒して出ていかれてしまった。この後、地元のおばちゃんたちと地域の誇りや魅力を探したのだが、おばちゃんたちが紹介してくれたのは、いわくのついた石ばかりで、外から来る観光客には向かないものであった。西上さんがこれよりも興味を引かれたのは、町にあふれる生活感で、内外を問わずに干されている洗濯物や冷蔵庫、流し台または原付1台に5人で乗り込んでいる様子など、他地域では見ることのできないものであった。

探られる島プロジェクト

「探られる島プロジェクト」はこんな中で発足する。これは西上さんが企画したもので、外から人に来てもらい、「家島にもともとある良さ」を発見、宣伝し観光客に来てもらおうというものであった。全部で5回行われ、家島の日常風景の豊かさや採石業の現場、または倒産した採石業をしていた方の豪邸をゲストハウスにして、在日外国人に泊まってもらうという、今までの「外向きの観光」とは違う、「中に入って一緒に楽しめる観光」を行った。

若者からのまちづくりを

西上さんは、「まちづくりを行うということは将来のまち、福祉、人の未来にもつながっている」と話した。まちづくりというと、なんとなく町に長く住んでいるおじさん、おばさんの活動を想像してしまうが、もっと大事なのはこれからも自分の町に住み続ける「若者」の存在なのではないだろうか。

しかし、若者である私にとっては、正直「町」といわれてもピンとこない節がある。私は、この理由を地域と自身との関係性を見いだせていない点にあるのではないかと考えた。普段の日常生活の中で、地域との交流の場というのはまずない、だから私は地域の中に生きているというのを考えず、家族単位、個人単位でものを見てしまいがちだ。しかし、自分の生活となっている基盤はどこにあるのだろうか。自分の暮らしている町である。そして、これを作っているのは県であり国でもあり、自分たち住民である。私はさまざまな人に支えられて、今を生きているのだということを、単純に知識として受け入れるだけで、本当にここに人が生きて、生活し働き、その糧が生きる場を与えてくれていることへの自覚がなかった。理解していなかった。だからこそ、これからは、まず「見て・聞く」ことから始めようと思う。身近なことから、人と人のつながりを見ることから、そこで私には何ができるのか考えたい。地域・町とは人の関係性の集まりである。ならば町の人の関係の中から、できることは見つかるはずなのである。

こうした意味で、まちづくりとは人と人の関係性の発見から始まり、自分が地域で生かされているという意味を教えてくれるものであるのかもしれない。