江戸川大学社会学部2年 神田太郎
はじめに
今回は、ドイツ暮らしが10年以上という環境ジャーナリストの池田さんをゲストに、「森の恵みを活用するための仕組み-ドイツの林業、木材産業から学ぶこと」というテーマで話をお聞きした。
ドイツの林業と森の作り方
ドイツは南部に森が多く、森の国と言われている。しかし、ドイツと日本の面積はほぼ同じであり、森林率で比較すればドイツが30%に対し日本は68%と日本の森林の方が多くあることが分かる。日本の場合山に森林が集中しているため、森が多いようには感じない。
ドイツの森林は半分が私有林で、日本の所有平均と比較すると日本の平均4haに対しドイツの平均は10ha。なぜ私有林が多いにも関わらずドイツでは林業が進んでいるのだろうか。
ドイツでは産業革命時からすでに森を育てることを行ってきた。木というのは、太陽の光、水、土があれば成長するものであり、毎年成長する分だけ使っていれば蓄積に変化が起きることはないという結果が出ているため成長した分は切ることが国で義務付けられているのだという。ドイツではさらに林業に使う道「林道」つくりを1960年代から積極的に整備を行い、運搬作業距離の短縮、コスト削減、搬出で森を傷めないことなども考え行っている。ドイツの林道は、公道とは違い一般車は入ることが出来ない。また山の形状に合ったゆったりとうねるようなライン取りをすることにより、沢山の木に対して作業を行うことが出来る。作業には主に機械を使うことが多く、森林・土壌へのダメージの軽減として大きく幅の広いタイヤを使う、タイヤの空気圧を低減する、道だけしか走らない、走る回数を減らすなど森を機械から守る活動も行っている。
ドイツでの林業という職業は、昔は肉体労働という位置づけだったため、身分の低い人が行う仕事とされていた。しかし今では、防具を付けチェーンソーで大木を倒すことが出来るかっこいい仕事とされている。
森林間でのネットワーク
ドイツの林業の多くは個人が独立したものが多いが、公務員として森林官という役職もある。省 森林担当部局からなる森林行政組織には区画担当森林官という業務があり、区画内に自宅兼事務所を設置することや、区画内の森や所有者を把握することなどを条件に区画(村単位)との一生の付き合いが出来る役職である。給料は税金で支払われる森林官は、林業をサポートする役割であり、森林の監視や公有林の林業経営、木材を産業の圧力から保護することを行う。
森林所有者は、林業協同体という共同組織に入り、製材工場(主に中・大規模)と大枠契約を結ぶことや、原木の一括販売、素材生産業者との調整などを行う。さらにここに区画森林官が現場の調整を行い、森林署が管理会計業務を行い、林業が成り立っている。
木材の行方と使い道
ドイツの製材工場は大規模な工場では主に外国を対象とし、中・小規模工場では地域重視の商業となっている。工場の位置では、大規模工場はドイツ内各地に点々としているのに対し、中・小規模工場は森林の多い南部に集中している。
ドイツの家は主に石レンガ造りであるが、屋根や天井、窓枠やドアなどは木造建築が使われており、縦の構造は石大工、横・斜めの構造は木大工と家づくりしても役割分担される。
ドイツでは1999年を境に、新築よりもリフォームをする家が増えている。ドイツには日本のような大手住宅産業はなく、多くても1年に1000棟の家が建つ程度。住宅産業の小規模化も進んでいる。ドイツで行われるリフォームは主に断熱施工である。ドイツの家庭エネルギー消費の8割は暖房であり、日本の4倍の値の消費量は一家庭月々3~4万円程度もかかる。断熱施工を行うと200~800万円程度のお金が掛かるようだが、5~10年でもとが取れる計算になる。こういった対策により1982年から断熱施工を義務規制し、2001年までに約1/3まで電気の使用量を抑えることが出来ている。
まとめと感想
ドイツの林業は、ドイツ国内での年間売り上げ26兆円(GDP5%)ということや山間地域での経済効果という部分でも国全体の大事な役割と言えるであろう。日本の林業は見習うことが多くあるように思えた。世界が目指す地球環境の安定には森林との共生が必要とされている中でドイツの林業は最先端と言えるのではないだろうか。
日本とドイツの林業が目指す方向は同じと言えるかもしれないが、生活環境・環境教育での大きな違いがあるのだと池田さんは言っていた。ドイツは中世の名残があり住居は都市に固まって作られるため、都市の外には森が広がり、木が身近なものになっている。
また、ドイツの子どもは木を切ることは良いことと教えられる。しっかりとした環境教育を学ぶことにより、木を減らすのではなく共生していけるということを子どもたちが知ることができるのである。対して、日本の都市では木を見ることも少なく、森で遊ぶには山に行かなくてはならない。日本は森林が多いにも関わらず森林は遠い存在なのである。
日本では家を商品と考えているため買う人を消費者というが、ドイツでは建て主と言い家を建てる人の資産として扱う。こういった意識の違いも家を建てることに影響を与えているのではないだろうか。
土地によって生える木々は違うものである。なぜならばそこで暮らしていくという環境が影響し合わなければ枯れていくからである。国産の木を使うということは生活以上に環境を良くしていくといことにつながるのではないか。
1つの家族が1つの家を長く使う。長く同じ場所で生活をしていけば月日が自然と付加価値を付けそれが財産になる。表面では見ることのできない温かみのある財産を得ることが何よりも人間らしい感覚なのではないかと思った。