江戸川大学社会学部3年 駄賃場 桃子
今回は、住民流福祉総合研究所所長である木原孝久さんに「住民流助け合い起こし」~地域福祉に学ぶコミュニティデザインの原点~というテーマで講演をしていただいた。
今回は、住民流福祉総合研究所所長である木原孝久さんに「住民流助け合い起こし」~地域福祉に学ぶコミュニティデザインの原点~というテーマで講演をしていただいた。
■住民にとっての福祉
木原さんは、以前働いていた福祉や医療の仕事に違和感を抱いていた。それは、福祉という分野は専門家が行うものであり、またそれによって組織化が進み、それぞれの人が別の問題を抱えているにも関わらず、無理やりまとめようとする流れがあったためだ。また、何かあったら相談に来てもらおうとし、呼びかけをしてもそれに応じない住民にも疑問を感じていた。当初はそれを、住民の福祉に対する意識が低いためかと考えていた。そのような経験を重ねるうちに、一人の人間、住民として福祉を考えるようになった。
まず、制度が拾えきれない問題を誰が解決すべきか、ということを考えた。プロの手が入ると住民が手を引くという実態があった。担い手主導で進めることには、当事者のニーズとずれがあった。担い手のやりやすいようにしてしまうためだ。
■住民の支え合いマップから知る「自助」の大切さ
また木原さんは、住民の支え合いマップというものを作成している。これは、地図に載っている、関わっている家同士を線で結んだものだ。このマップを見ると、どの地域にも大・中・小の世話焼きさんがいることがわかるという。そして、ヘルパーが来ている家とは関わりがなくなることもわかるという。ヘルパーが来ているから大丈夫だという考え方が生まれるのである。しかし災害などが起こった場合、ヘルパーは来てくれない。また、ヘルパーはオムツやお風呂くらいしかせず、それ以外のことはしない。細かい面まではみてくれないのである。「公助」が「共助」を壊す。困ったら相談センターへ、活動したければボランティアセンターへという仕組みは、本人と行政の距離があまりにも遠い。また、相談センターに来る頃にはすでに深刻な問題になっていることが多い。木原さんは、この仕組みを本来の地域の仕組みとしての順序に戻すことが必要だという。それは、まず「自助」セルフヘルプ(自分で解決しようとする)、次に「共助」周りと助け合う、そして最後に「公助」行政の力を借りるというものだ。
■助けられ上手になる
このように木原さんは、まずは住民同士での助け合いが必要だと言っていた。そこで私たち参加者にも、「もし困ったことがあったら誰かに助けを求めることができるか。」という質問をしていた。皆さんあまりできないようであった。全国のアンケートでも、「できる」という人が3~5%だったという。わたしたちはつい、迷惑になるのではと遠慮することがある。しかし逆のアンケートをとってみると、「足元で困った人がいたら?」という質問に約9割の人が「頼まれなくても関わる」「頼まれたら関わる」と前向きであった。地域福祉には、助けられ上手と世話好きがポイントになる。自分ができないことは積極的に人にお願いする。例えば、ある、助けられ上手な人はそれぞれできないことを別の人にお願いする。するとゴミだしから雪かきまで人に頼むことが可能になる。またなぜこのような頼みごとがたくさんの人にできるのかというと、この人は昔お茶の先生をしていたので頼めるという。これが地域の仕組みなのだ。何かしてもらったら別の機会に何かしてあげてお礼をする。この繰り返しである。また、備え上手さんというのもいて、人貯金をするのだという。将来自分に介護が必要になったときのために、今のうちに民生委員に入って知り合いをつくり、自宅に招待してごちそうする。将来の介護の約束をするという。
■助け合い関係を把握することが福祉のコツ
また、要介護者の方を担い手にして奇跡が起きたこともある。サービスセンターの人が、ある老人の「毎日すまんなあというのに疲れたよ。」という愚痴を聞き、自分の子供を連れてきて子守をさせた。すると老人は喜んだのだ。恩返しの機会を与えることも重要なのである。
他にも、小さい子供を持つ母親たちが集まって子連れママの会というものをつくり、外出の際、子供を預けることのできる美容院はどこか、などの情報を教えあうだとか子供同士の預けあいなどを行っている。さらには、子供を連れて行きにくいコンサートを、自分達で作るということまでした。そこに他の仲間も呼んで、交流ができる。さらに、外出情報を自分達でつくった。
行政は、このような活動があっても対応できない問題があったらバックアップする存在であれば良い。そして、女性のパワーを前面に出すことが福祉のコツだという。
このような地域の中での助け合いは、どこにでも探せば必ずあるという。行政がまず福祉をおこなう上ですべきことは、この助け合いの関係を把握することだと思った。そして自分達もそのなかに入っていき、抱えきれていない問題を見つけて行政の力で解決する。なんでもかたちをつくり、その中に埋め込むというやり方では通用していないことがわかった。かたちをつくってしまっては、多様な問題を抱えきれなくなってしまう。また、助けてあげるばかりでは相手のプライドを傷つけてしまう。助け合いが必要だ。私の実家でも、「このまえお菓子をたくさん貰ったからこの野菜あげてきて。」ということがいつものようにあった。それが将来にも繋がる助け合いだったのだと思った。世界の中でも乗り遅れている福祉は今、もう形だけのもので解決しようとすることを考え直さなければならない。木原さんが言っていた通り、世話好きが多い女性の社会進出に最適な分野なのでは、と感じた。結婚、出産、子育てを終えた、人生経験を積んだ女性の再就職にも向いている。このように考えると、問題ばかりではなくむしろ明るい未来が見える分野なのではと感じた。
ありがとうございました。
木原さんは、以前働いていた福祉や医療の仕事に違和感を抱いてい
まず、制度が拾えきれない問題を誰が解決すべきか
■住民の支え合いマップから知る「自助」の大切さ
また木原さんは、住民の支え合いマップというものを作成している
■助けられ上手になる
このように木原さんは、まずは住民同士での助け合いが必要だと言
■助け合い関係を把握することが福祉のコツ
また、要介護者の方を担い手にして奇跡が起きたこともある
他にも、小さい子供を持つ母親たちが集まって子連れママの会とい
行政は、このような活動があっても対応できない問題があったらバ
このような地域の中での助け合いは、どこにでも探せば必ずあると
ありがとうございました。