石田秀輝さんは、「ネイチャー・テクノロジー」を提唱している。「ネイチャー・テクノロジー」とは、その自然のすごさを科学の目で観察し、学び、テクノロジーとしてリ・デザインすることで、低環境負荷の新しいものづくりや暮らし方を目指すものである。

また、自然共生型のテクノロジーを求めている。このままでは2030年には色々な資源やエネルギーに制約が起こると予想され、気候の温暖化も危険と呼ばれる領域に入る。そういった環境制約があるなかで、人が豊かに暮らせる方法を考えている。そしてテクノロジーを実用化していくには「環境に負荷がかからないことが必須条件」だという。石田さんは、その負荷のかからない方法をリ・デザインと呼んでいる。自然をそのまま模倣すると大きな負荷がかかることが多いが、メカニズムをとらえることで余計なエネルギーをかけなくてもすむ。また、生活者の精神欲を満足させるところまで持っていくのがテクノロジーだと考えている。さらに、企業は環境という言葉で縮こまるのではなく、『モノからコトへの変換』を試みるべきだという。たとえば、エアコンは部屋の中の空気質を変える機能を持っている。ならばエアコンという装置ではなくて、空気質を変える材料を作ればいい、ということだ。

ネイチャー・テクノロジーは、暮らし方とテクノロジーがセットになっていることが特徴である。暮らし方の価値観の変化の研究だという。地球に負荷をかけずにしかも我慢しないで、どうやって楽しく暮らせるか、新しいライフスタイルの創造をしている。

石田さんのお話は、これからの生活が不安になった。例えば、このままだと2030年には石油が無くなってしまうのに代替資源はまだ確立されておらず、間に合わないということや、私たちが生きている間にも鉄やマンガンなどが無くなり、車やビル、携帯電話も使えなくなるということだ。また海洋大循環が停止し、映画の「デイ・アフター・トゥモロー」のようになるかもしれないとも話していた。しかしだからといって私たちは、携帯電話やエアコンがない生活はできない。いくら素晴らしい循環型の社会だったとしても江戸時代の生活はできない。人間には生活価値の不可逆性というものがあるらしい。一度得た快適性を手放せないということだ。そこで石田さんが研究しているのが、地球と人のことを考えた「あたらしいものつくり、くらしかた」である。物質欲から精神欲へ欲の質の変化を図るには、豊かな心へ向かうことだという。

また石田さんは、日本人はもっと日本の文化を素晴らしいと感じるべきだと言っていた。日本人は欧米に憧れてばかりいる。<粋>という言葉を使っていた。<粋>には、敗者をつくらない、みんなと同じことをやりながら目立たないようにぜいたくをする、という意味がある。日本人にしかない特別な性格だという。

 今回の研究会で、いかに自分が環境について危機感を持っていないかに気づかされた。もうすぐ今までと同じような生活ができなくなるかもしれないのに、どうせ直接自分には何も起こらないだろうと思っている。しかし、パニックを防ぐために研究をしている人がいることを実感した。しかも、これまでの生活を制約するのではなく、なるべく同じように、同じとまではいかなくても楽しく暮らせるように研究していることに驚いた。私はつい、あれもこれもできなくなるとばかり考えていた。これからは、贅沢な生活ができなくなるというのではなく、新しいライフスタイルを受け入れるための心の準備や知識が私たちにも必要なのだと思う。たくさんの装置や騒音に囲まれて便利に暮らすよりも、少しくらい手間がかかっても、愛着の持てる部屋で土や木に囲まれて暮らすのもいいかな、と感じた。おおげさかもしれないが、地球にいいことをしていると感じて暮らせることが、心が豊かな生活なのではないかと思う。

江戸川大学社会学部ライフデザイン学科2年 駄賃場 桃子