世界的にも有名な五十嵐氏の話を聞くことができることに感動を覚えつつ、しかし私はその日まで五十嵐氏のことを詳しくは知らなかったので、新鮮な思いで拝聴していた。私が大学で専攻している分野は、主に地域再生というテーマで勉強をすすめているために、デザイナーの方がローカルデザインについてどのような考えを持っているのかに非常に興味を持っていた。専攻する分野に属する研究職の先生方と討論してその話を伺うことは多々あるが、やはり同じ専門分野の話なので、こういった機会はとても貴重だった。
私が特に興味を持った話は、土地の開発についてのところだった。人間が土地に縛られてすぎているために、その土地は人口や文化の流動化が図られることがなく、いつまでたっても変化しない。そういった土地に縛られている人々が動けば日本が変わる。ということだったが、なるほどと思うと同時に、若干の違和感を覚えた。確かに、無意味にその土地に固執し、異質なものを拒み、いつまでも閉鎖的なままでは土地の開発は進まない。しかしそれは五十嵐氏のように引っ越しを繰り返している人ならではの考え方なのではないかと思ってしまうのだ。とても特徴的で斬新な考え方だとは思うのだが、地域が持つ特有の力を少なからず否定してしまうのではないか。五十嵐氏は、「文化を継承する人や土地を守る人も必要だが」という前置きをしてこのことを言ったのであり、私の懸念はそういった五十嵐氏の配慮を無視してのことだと受け取られても仕方のないことかもしれない。実際私自身もそれを踏まえて考えた結果、よく分からなくなってしまっている状態なのではっきりとは言うことができないのが現状だ。ただ強く感じるのが、流動性を求めていては土地に愛着を持つことができなくなり、ハード面では再開発が可能かもしれないが、ソフト面、つまり住民の意識というものがそれほど強くない、地域力の弱い再開発になってしまうのではないだろうかという不安要素である。
五十嵐氏から受け取ったメッセージに対しての感想としては、まるで的外れなことを言ってしまっているのかもしれないが、地域活性化や地域再生といったテーマで普段ものごとを考えているためにこういった疑問点を抱いてしまった。しかし五十嵐氏の持つ柔軟な発想には本心から感銘を受けることができたし、それはやはり五十嵐氏が歩んできた人生の重みがかかっているのだと思う。私のような若輩者が差し出がましい感想を持ってしまったかもしれないが、新しい視点から事象を見ることができたということに深く感謝し、これからの勉強に活かしたいと強く感じた。
山梨大学工学部循環システム工学科 吉澤幸子