嫌なことを知らせる音はいつもと違う響き方をする



こう思うのは後付けでしかないのだろうけど、確かにあの瞬間に何かしら胸がザワついたのは間違いない


何故か不快に感じる音をけたたましく鳴らすそれを手にし、発信者を確認する



「お久しぶりです、お元気ですか?」

『あ!かなちゃん!今どこ?家?』



珍しい
挨拶も返さず、挙げ句焦っているのか息も荒い



「どうされました?(笑) 自宅ではないですけど…」

『…そっか、あー、マジかぁ…』



この先は聞きたくない
嫌な予感しかしない




『…TAKAHIROがいなくなったんだ…』



あの時
最後に会ったあの夜に感じた違和感




『昨日の夜から連絡取れなくて…今朝、早目に家に行ったらどこにもいなくてさ』




あの日どんな会話してたっけ




『久しぶりに部屋に入ったんだけど、びっくりする位荒れてて…』



あの日はちゃんと食べてた?
もうそんな事すら覚えていない




『携帯もソファーに放り投げられてたし、車も置いてあるし…』




意図の読み取れない会話
別れる間際もお互いの顔は見てなかった




『あちこち思い付くトコとか交友関係とか全部聞いてみたんだけど…』

「HIROさんには?」

『まだ連絡してない。かなちゃんなら何かわかるかと思って先に連絡してみたんだ…』

「仕事の方は?大丈夫なんですか?」

『今日のは何とか体調不良でリスケしてもらった』

「…取り敢えず今からそっち行きますね?」

『ごめん、よろしくお願いします』



まただ…

また同じ事を繰り返した



どうして私はいつも彼のSOSに気付かない

守ると決めたはずなのに