「いや、マジであいつさ…」
口を開いた途端ギロリと睨まれた。
怖いな、こいつ。
「あんたどこまで馬鹿なの?」
「は?まだ何も言ってねぇだろ!」
「私、人の情事の顛末聞く趣味なんかないからね?
ましてや紫織ちゃんの話なんて絶対に聞かないから。一言でも何か言ったら臣でも容赦しないよ?手出すよ?」
「…」
こんなおっかない女だったのか…
流石、TAKAHIROさんとやり合って来ただけあるわ。
「男って武勇伝みたいに自分のそういう話するみたいだけど女はそうじゃないのよ?まぁ好きな人もいるだろうけど私は違うから。今後も一切話さないで下さい。」
ピシャリと言い切られた。
「…はい。」
「まさかとは思うけどメンバーとかに話したりもしないでよ?」
「…流石にそれはわかってる。俺も気まずい…」
「なら良かった。私以外に誰か知ってる?」
「あー、NAOTOさんにはバレた。」
「そ。なおちゃんなら大丈夫か。」
「てかさ、お前何で知ってんの?まさか紫織?」
NAOTOさんが知ってるのはまだ納得出来る。
けど流石にこの早さでかなの耳に入ってるのはどうも腑に落ちない。
「今朝三代目のスタッフチームに用があったのよ。そしたら何かバタバタしてたからどうしたのかな?って聞いたら紫織ちゃん休みって言うから。心配になって連絡したのよ…」
呆れた目で俺を見ている。
「背中押した側としたら心配じゃない?もしかしてまた何かあったかと…そしたらまさかこんなとんでもない馬鹿の仕業だったとは…」
「お前いい加減俺も怒るぞ?馬鹿馬鹿言い過ぎな?」
「それ以外にどう言うのよ?トラウマ抱えてた子にそこまでするなんて。下手したらパワハラだからね?」
「え?あいつ何か言ってた?」
かなの言葉に一気に不安になる。
「何も言ってないわよ。こっちも聞かないし。言ったでしょ?そんな悪趣味じゃないんだって!体調悪いの?って聞いたら、ちょっと起き上がれないだけですって言っただけよ。それだけ聞いたら充分だわ。」
まあ、今朝あれだけやれば普通の体力じゃ保たないだろう。
我ながらトレーニングの賜物だとは思う。
「思い出し笑いしてんじゃないわよ。」
溜め息混じりに呆れた顔で続ける。
「あの子が受け入れたんだからもう今更何も言わないけどさ…ちゃんと考えてあげてよ?貴方ちょっと暴走気味の所あるんだから。立場も年齢も彼女の方が下なんだから拒み難いんだからね?」
「…気を付けます。」
「じゃあもう帰って下さい。」
追い出されるように部屋を出た。
そっか、帰ったらあいついるんだよな。
俺もサッサと仕事終わらせて帰るか。
緩みそうになる顔を意識して引き締めタイミング良く来たエレベーターに乗った。