
今回は、知っているかどうかが命に関わる情報です。全ての妊婦さんが知っておくべき情報です。
胎盤早期剥離とは
正確には、「常位胎盤早期剥離」といいます。とても怖ろしい病気です。正常ならば胎盤は赤ちゃんが産まれた後に剥がれます。この病気では、赤ちゃんが産まれる前に胎盤が剥がれてしまうために、早急に治療をしないと赤ちゃんが死んでしまいます。さらに、治療が遅れるとお母さんも死んでしまいます。
母子ともに危険を伴う典型的な症状がある場合には、赤ちゃんを救うための「タイムリミットは3時間」です。つまり、症状が出てから3時間以内に赤ちゃんを胎外に出してあげる必要があります。2~3時間以内の緊急帝王切開で赤ちゃんを救命できても脳性麻痺になる可能性があります。ですから、一刻も早く治療を開始すべきです。
胎盤早期剥離の典型的な症状
1. 持続的な腹痛がある。
子宮全体の痛みが止まらないときはすぐに救急車を呼んで下さい。陣痛でも胃腸炎の痛みでも、30秒から1~2分痛みが続いた後に、しばらくの間、痛くない間隔があります。子宮全体(あるいは子宮の一部)がずっと痛いときには迷わず産婦人科を受診して下さい。
2. 吐き気がしたり、みぞおちや右の上腹部に痛みがある。
3. 胎動が1時間以上感じられない。
4. 立ち上がるとふらふらする。
5. 背中に下痢をしたような不快な痛みが続く。
6. 性器出血がある。
1と2が一番怖い症状です。3の症状は痛みがあるときにはわかりにくいでしょうが、胎盤早期剥離の前兆である場合があります。4は子宮の中に多量に出血した場合の貧血症状です。妊娠中によくある立ちくらみと似た症状ですが、意味合いが違います。5は以前に胎盤早期剥離の集計をしたときに感じた見逃しやすい症状としてあげておきました。6の出血は、むしろたくさんあった方が経過がよいことがあります。胎盤の中ほどや辺縁で胎盤が剥がれて出血した場合、血液が子宮と羊膜(胎児を包んでいる袋)の間を伝って流れ出た場合の方が胎盤剥離の進行が軽くなります。
どんな人が胎盤早期剥離を起こすのか?
誰にでも起こる可能性があります。妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)、もともと高血圧を合併している人、胎盤早期剥離を起こした経験がある人など、リスクの高い人がいますが、実際には妊娠中何ともなかった人に起こることの方が多いです。
胎盤早期剥離の実際
説明の正確さよりも、怖さを伝えることを優先して上のように説明しました。典型的な早期剥離は上の説明のように本当に怖い病気です。しかし、胎盤早期剥離の中には胎盤のふちのほんの一部が剥がれる軽いタイプから、いきなり全体が剥がれてしまうようなタイプまで幅があります。早産でごく軽度の胎盤早期剥離が疑われるケースで経過観察が可能なタイプもまれにあります。また、赤ちゃんが普通に産まれた後で実は胎盤が少し剥がれていたということがわかるタイプもあります。ですから、胎盤早期剥離をどのように定義するかによって、この病気の頻度が違ってきます。報告者によって頻度が少しずつ違いますが、1000の分娩に対して大体5例前後起こります。
切迫早産で入院した後に起こる胎盤早期剥離
切迫早産の徴候があって入院し、しばらく治療をしていたら、胎盤早期剥離が起こる、つまり、「切迫早産徴候が胎盤早期剥離の前兆である」という例が実は非常に多いです。
交通事故による胎盤早期剥離
ハンドルが直接子宮にぶつかるとか、事故の衝撃で間接的に子宮に強い力が加わった場合に胎盤早期剥離が起こることがあります。子宮に加わる力が強いと早い時期(受傷直後や数時間以内)に胎盤が剥離します。注意すべきなのは、軽い外傷でも数日以上たってから胎盤早期剥離の症状が出てくる場合があるということです。事故後数日は胎動や下腹部痛の有無に気をつけることが大切です。
最後にもう一度
胎盤早期剥離の治療は、時間との戦いです。早ければ早いほどよい。

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診察時間:午前 ● 9:00~12:30、午後 ● 14:30~18:30(水曜土曜は午後休診)
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住所:福井市手寄1丁目7-23 駅東さくらビル4F [MAP]
