
クロミフェンをのむと本当に頚管粘液が減ったり子宮内膜が薄くなったりするのか?
(要約)
「クロミフェンをのむとかなりの確率で頚管粘液が少なくなったり子宮内膜が薄くなったりする」というインターネット情報をみて心配になった人へ。
たいていの場合、心配無用です。
クロミフェン(販売名:クロミッド、セロフェン)という排卵誘発剤についてのお話です。クロミフェンは、アメリカで承認されたのが1967年ですから、かなり古い薬です。古いけれども、一般に多くみられるタイプの排卵障害に対して、最も多く使われている薬です。
はじめに
インターネットで調べると「クロミフェンをのむとかなりの確率で頚管粘液が少なくなったり子宮内膜が薄くなったりする」という情報を目にすることが多いと思います。時折、「できるだけクロミフェンをのみたくない」といわれる人がいますが、話を聞くとこのインターネット情報が原因です。
クロミフェンと頚管粘液の関連
確かにクロミフェンには頚管粘液を減少させる方向に働く作用があります。
しかし、
クロミフェンによって頚管粘液が減ったという自覚のある人が多いのも事実ですが、そもそも排卵日頃に頚管粘液が増えるということの自覚がない人が多いという事実があり、そういう人がたくさん妊娠しています。正常な月経周期で正常に排卵しているけれども頚管粘液の自覚がないという人でも、排卵前に検査をすると頚管粘液はちゃんと増えているものです。自覚がある人というのは、結構たくさん頚管粘液が出ている人だということになります。粘液がたくさん出ている方が妊娠しやすいような気がするでしょうが、必要最低限出ていれば妊娠します。
実際、クロミフェン投与周期に何度か経腟超音波検査をして排卵日の推定をする際に頚管粘液の出具合を見ますが(慣れればチラッとみただけでわかります)、ほとんどの人で排卵日前にちゃんと頚管粘液が増えていて、頚管粘液が増えてこない人はごく少数派です。
クロミフェンと頚管粘液の関係を扱った論文について
実は、論文によって結果が様々で、結論が出ていません。クロミフェン治療をしても粘液量は変わらないという結果もあれば、クロミフェンの服用量が増えるにつれて粘液量は減るという結果もあります。クロミフェンが頚管粘液を減らす方向に働く作用があるというのは事実なのですが、クロミフェンによってエストロゲンという女性ホルモンが増えるという作用もあるので、その作用によって相殺されて、結局さほど粘液が減らない人が多いというのも事実です。また、クロミフェンの作用が頚管に対して非常に強く出てしまって粘液が減るという人も少数ですがいらっしゃいます。
クロミフェンと子宮内膜
インターネット情報では、クロミフェンをのむと子宮内膜が薄くなると信じられているようですが、実際のデータでは、大多数の場合、クロミフェン服用周期の子宮内膜の厚さは自然に排卵している人と変わりません。クロミフェンと頚管粘液と同様の関係で、ほとんど心配いりません。ただし、もともと子宮内膜が薄い、あるいは極端にクロミフェンに反応して内膜が5~6mmくらいにしかならない人に対しては他の治療法に変えるべきでしょう。
結論
クロミフェンを使うと頚管粘液が減ったり子宮内膜が薄くなるといわれ続けていますが、そのことと妊娠率への悪影響を関連付ける証拠は、実はまだありません。クロミフェン使用後に頚管粘液が減りすぎたり子宮内膜が薄すぎる場合には医師が治療方針を変更します。

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