
避妊法のQ&Aを公開しました。10数年前に掲示板で何度も受けた質問です。若い女性の避妊に対する意識は今でも変わらないのではないでしょうか?
避妊というのは非常に大切な問題で、特に妊娠が命に関わる国々では避妊教育や近代的な避妊法を提供することは女性の健康面からみても最重要事項の一つです。
通常、先進国の女性は近代的な避妊法についての教育を受けて、近代的で効果的な避妊法を選択しています。ですから、効果が高い低用量ピルや新しい避妊法を使用している人の割合が高いです。それに対して日本は特殊で、低用量ピルを使用する人の割合が非常に低く、効果の面でかなり劣るとされるコンドームに頼る割合が非常に高いという特長があります。
世界の避妊法(2011年、国連データより)
世界で最も一般的な避妊法は、実は女性の不妊手術で、全避妊法の30%を占めます。次いで子宮内避妊器具(IUD)による避妊が23%です。ピルが14%、コンドーム12%、日本ではなじみのない注射法が6%もあり、日本の低用量ピルの使用率よりも高いという点が注目されます。
避妊法の効果比較
日本でコンドームの使用率が高いのは、日本人が器用で理想的な使用法を行うことができる人の割合が高いためかも知れません。以下、各避妊法の効果を高いとされる順に羅列しますが、ピルの効果が意外と低いのは、世界的には正しくピルを服用していない人の割合が高いためです(のみ忘れが多いなど)。理想的な使用法ならば、ピル使用中の妊娠数は子宮内避妊器具と同等(0.1~0.5)とされています。
避妊法、効果の高い順
(数字は典型的使い方で避妊した女性100人に対する最初の1年間の妊娠数)
典型的使い方というのは、要するに理想的でない、一般的な使い方ということです。
1. 皮下埋没法 0.05
2. 男性の不妊手術(精管結紮) 0.15
3. 女性の不妊手術 0.5
4. 銅付加子宮内避妊具 0.8
5. レボノルゲストレル(黄体ホルモン)放出子宮内避妊具 0.2
6. 注射法-3カ月 6
7. 腟リング 9
8. パッチ剤 9
9. ピル(経口避妊薬) 9
10. ペッサリー 12
11. 男性用コンドーム 18
12. 女性用コンドーム 21
13. スポンジ 12-24
14. 腟外射精法 22
15. 自然法(オギノ式、基礎体温法など) 24
16. 殺精子剤 28
17. 避妊法を使用しない 85
人権問題としての避妊
実は、今、2012年の世界人口白書をみながらこの文章を書いています。「途上世界には出産可能年齢の女性が 15億 2000万人いる。そのうち 8 億6700 万人は避妊法を必要としているが、現在、近代的避妊法を使っているのは、6 億 4500 万人だけで、残る 2億 2200 万人の女性は避妊のニーズが満たされていない」と記載されています。
世界各国の、妊産婦死亡率(出生10万対)・5歳未満児の死亡率(出生1000対)、近代的な避妊の実行率・満たされない避妊ニーズの割合となどが並んで一覧表になっています。その中のごくごく一部を抜粋します。母体や子供の死亡率と避妊法に相関関係があります。
妊産婦死亡率 5歳未満児死亡率 近代的避妊法 満たされないニーズ
シエラレオネ 890 157 6 28
日本 5 3 44
スゥエーデン 4 3 65
イギリス 12 6 84
アメリカ 21 8 73 7
フランス 8 4 75 2
ドイツ 7 4 66
世界全体 210 60 57 12
先進工業地域 26 7.7 62
サハラ以南 500 122.6 20 25
世界的には、近代的な避妊をしたくてもできないということが、人権問題として捉えられています。サハラ以南のアフリカの状況を改善することが重要なのですが、日本の近代的避妊法の割合が世界平均よりも低いことにも注目して下さい。このデータでは、日本の避妊ニーズは満たされていることになっています。「低用量ピルを買いたいけれども高いから」という経済的な理由でピルを服用しない人の割合が結構高いのではないかと思うのですが。10年くらい前、他院からの紹介でアメリカの女性がピルを取りにこられたときのことです。つたない英語で問診などをして時間を費やした後、日本での低用量ピルの値段(当院は1シート2900円)を告げた途端の一言、「Oh, my God!」。確かに日本のピルは非常に高いです。その女性には世間話をしただけということにして、そのまま帰って頂きました。

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