1999年アカデミー賞受賞作『アメリカンビューティー』。まず私は、この作品の内容。『アメリカンビューティー』という題名なのに、内容はアメリカに住むある平凡な家族の崩壊が描かれている。私はこのギャップにやられてしまった。 父親の娘の同級生に対する恋、見栄っ張りな母親、隣人との疑惑、思春期の娘の複雑な心境、映画の冒頭の「僕は殺される」の意味、物語が進むにつれ、より絡み合う疑惑がとんでもないラストを生み出してしまう。こんなにも爽快で、驚かされた映画は他にないかもしれない。



また、ケヴィン・スペイシー演じるダメな父親が素晴らしい。娘の同級生の何気ない一言で急に筋トレを始めたり。彼の頭の中の妄想。会社をリストラされ、麻薬に走る父親。細部にいたるまで、追求されている。この作品とはうってかわって、「ビヨンド the シー 夢見るように歌えば」では、彼は華やかで明るい往年の歌手ボビー・ダーリンを演じている。この作品で彼の演技の表現の幅を実感することができた。


もう一つ、この映画で印象に残ったのは、ケヴィン・スペイシー演じるレスターの隣に引っ越して来た、彼の娘と同級生のリッキーが、スーパーの白いビニール袋が風にあおられて飛んでいる映像を眺め、「これが最も美しい」と言うシーン。一見、何のことなのかさっぱりわからない。この映画は冒頭のシーンもそうだが、様々な謎を残したまま物語が進行する。そして、結末を通して、冒頭の「僕は殺される」、このビニール袋の映像、「アメリカンビューティー」というタイトル、物語の謎が色んな意味を持ち始める。



 アメリカの美しさという題名だが、崩壊が描かれていること。この映画の主要人物が全て白人アメリカ人だということ。あのビニール袋を白人に置き換えると。もしかすると、白人アメリカ社会への強烈な皮肉が映画に込められているのではないか。インターネットでも、多くの意見があげられている。本当のことはわからない。しかし、その謎こそが、今もなお語り継がれる、アカデミー賞を受賞するほどの、この作品の本当の魅力であろう。