日々治療をしていると同じ病気を同じ様に治療していても治る人と治らない人がいます。
これはおそらく医者、鍼灸師、整体師など人を癒す仕事をしているもの全てが考え続けている問題なのでしょう。
私は慢性前立腺炎や線維筋痛症などの難病の患者さんを診る事が多いのですが、そんな難しい病気でなくてもやはり治る人と治らない人がいるのです。
どんな名医も100パーセント病気を治せるなんてことはありえない、『それは何故なんだ?』『何が違うんだ?』と試行錯誤を繰り返しての毎日。そんな中で少し気づいた事があります。
それは人が治るには「忘れること」が重要だという事です。
当院に来る患者さんはみんな最初は「病気を治してください」「辛いんです、なんとかしてください」と言って来院されます。しかし、治る患者さんは帰りには世間話をして帰ります。逆に治らない患者さんは治療している間ずーっとあれが辛いこれが辛いと自分の病気の事を言い続けています。
これはその症状の強さに関係しているのではありません。症状が強く辛い状態でも世間話をする人はするし、逆に「辛い、どうしよう、どうにかして」と自分の病気のことに思考のほとんどががとらわれている方がいます。そしてこの両者にはその後の経過に大きな違いがある様な気がします。
前者は治りやすいし、後者は治りずらいのです。
われわれ鍼灸師は気をコントロールして治療します。気の弱いところに気を補い、気の多すぎるところの気をとったりしてバランスをとるのです。そうすることで身体の本来ある自然治癒力を最大限に活かす事ができるのです。
しかしあまりにも自分の病気のことに思考をとらわれすぎると、せっかく良くなったバランスをまた自ら偏らせてしまうのです。
仕事が忙しかったり、子供や孫ができて忙しかったという人の中には「忙しくてその間は病気を忘れていた」という方がいます。そういった方達は病気の治りが早くなります。
また笑う事が体にいいという研究はたくさん行われていますが、「笑う」ということはその間だけでも病気のことを忘れられているためではないでしょうか。
最近私は、患者さんに病気についていかに忘れてもらうかということを一つのテーマに治療しています。
鍼灸指圧 Sweep