〇予告

ウルシラ地方のハールーン魔術研究王国から依頼が届いた。

この国の研究機関でクーデターが画策されているという。大陸屈指の実力者である君たちに、計画の阻止を依頼したい。


○PL人数

3~4


※3人の場合、下記の裁定を適用する

サンプルキャラクター(ティファニー)を加えて、4人で冒険を始める


○作成レギュレーション

冒険者レベル14-15(→ルールブックⅢ72頁)


○書籍

ルールブックⅠ~Ⅲ

エピックトレジャリー

モンストラスロア


※2025年7月に開催されたオフセッションTRPG卓シナリオです


以下、シナリオ本編です(ネタバレ注意!)

〇目次

1 プロローグ

2 空の旅

3 内部告発者

4 大書庫

5 奈落の魔域

6 エピローグ


○判定一覧

●スカウト、レンジャー+器用度B

解除判定(レンジャー:自然環境)


●スカウト+敏捷度B

先制判定


●スカウト、レンジャー+知力B

危険感知判定

探索判定(レンジャー:自然環境)


●スカウト、セージ+知力B

宝物鑑定判定(スカウト:売却価格)


●セージ、アルケミスト+知力B

文献判定


●セージ、バード、アルケミスト+知力B

見識判定


●セージ、ライダー+知力B

魔物知識判定(ライダー:知名度のみ)


●冒険者レベル+敏捷度B

水泳判定


1 プロローグ


多くの冒険者が集う街、港湾都市ハーヴェス。

季節は夏。街は、バカンスを楽しみにやってきた旅行客で賑わいを見せています。

あなたは、この都市を拠点に活動している大陸トップクラスの実力者です。目下、受注している依頼はなく、冒険者ギルドの待合室でのんびりと過ごしています。

時刻は午前中。あなたの知り合いの女性がやってきました。


ティファニー「お久しぶりです。マスターから神殿に連絡があって、至急、私に来てほしいとのことでした。あなたを見かけたら一緒に連れてきて欲しいとのことです。一緒に来てくれますか?」



彼女はティファニー(人間/♀/20歳)です。非番だったのか、今日は神官の装束ではなく私服です。その胸にかかっているのは、五芒星をかたどった導きの星神ハルーラの聖印です。ティファニーは王国の神殿で先日、大司祭となった聖職者です。


○GM向け記載事項

ティファニーのキャラクターデータを開示します。

https://yutorize.2-d.jp/ytsheet/sw2.5/?id=25UlcB


ティファニーに付いて行くと、受付の女性が奥の部屋へと案内します。


ティファニー「あいにく、マスターは〈通話のピアス〉でハールーン魔術研究王国(→Ⅲ295頁)の冒険者ギルドと通話中のようです。後ほどマスターから同様の説明があると思いますが、お聞きした話を代わりにさせて頂きますね。


依頼人は、ウルシラ地方(→Ⅲ290頁)のハールーン魔術研究王国です。先日、王国の研究機関から内部告発がありました。当局は現在、内部告発者を保護しています。依頼はその件についてです。


実態こそ伏せられていますが、ハールーン魔術研究王国は魔術師ギルド本部があります。2年前まで、理事長はアウローラ(エルフ/♀/35)さんという魔導師の方でしたが、今から5年前、弟子の方とご結婚されました。出産を機に里帰りを決め、代表を退任されました。


マスターは、アウローラさんと面識があるそうです。真語魔法と操霊魔法を習得したウィザードで、アーティファクトを求めて行われた遺跡探索ではアンデッドの軍勢を引き連れて進軍し、彼女の魔法で行く手を阻む魔物を焼き払ったと言われています。


その、アウローラさんの印象をマスターに聞いたところ、いたずら好きなクソガキとのことですが…少なくとも、大陸屈指の実力者であることは間違いないでしょう。アウローラさんは〈始まりの剣〉を求めて別の大陸に行ったこともあるそうですよ。


〈始まりの剣〉って、とても素敵な響きですよね。いつか触れてみたいなぁ!…ごめんなさい、話が逸れました。私たちを指名する理由について、ですね。


国家からの依頼なので『金に糸目はつけない』とのことです。つまり、できるだけ実力の高い冒険者が望ましいという話です。私はハーヴェスに来て5年になりますが、こんな依頼は初めてです。


報酬は1人あたり25000Gです。達成条件は黒幕の解明および撃破です。拘束対象の正体は判明していませんが、研究施設内で変身能力を持つ魔物が目撃されたことが事件の発端となりました。


達成期限は定められていませんが、内部告発によると黒幕は配下の軍勢を率いてハールーン魔術研究王国を実力行使で乗っ取るつもりです。これは国家の安全保障に関わる事態です。ウルシラ地方は、かつて魔神の手に落ちたザムサスカ地方(→Ⅲ296頁)と隣接していて、軍事的に重要な砦の役割を果たしています。


時は一刻を争うため、魔航船で向かうことになります。出発は夕方です。料金は依頼主の負担です。内部告発者と現地で接触した後に、調査を開始することになります。告発者が保護されている場所はマスターから聞きました」


依頼を承諾すると、ティファニーが嬉しそうに言います。


ティファニー「実は…ディガッド山脈の麓にある故郷の村を出てハーヴェスにやってきたときから、あなたと一緒に冒険するのが夢だったんです。私、とても嬉しいです」


2 空の旅


マスターから改めて依頼について説明を受けると、支度を済ませて発着場へ向かいます。夕日が海に沈む中、ウルシラ地方行きの魔航船はゆっくりと浮上します。


隣でティファニーが子どものように目を輝かせながら外の光景を眺めています。


ティファニー「わあ!街がこんなに小さいです。私、こんなに高く飛んだのは初めてです!」


やがて夕日は沈み、夜となります。乗務員と話していたティファニーが戻ってきました。


ティファニー「この船は大量の魔晶石のほかに、乗務員のマナも利用して動力に変換しているみたいです。そこで、私たちに協力の依頼が来ています」


○GM向け記載事項

精神抵抗力判定を行います。その達成値と同じ値だけ、自身のMPを消費して動力に変換することができます。自動成功は+5ルールに従います。

ただし、消費できるMPの上限はキャラクターのMP最大値です。グラスランナーのキャラクターは判定に参加できません。謝礼は以下の通りです。

20以上:魔晶石(5点)

30以上:上記に加えて、魔香水


やがて朝日が水平線から昇る頃になると、ハールーン魔術研究王国が見えてきました。


ティファニー「あの棟が、確か“知識の棟”ですね。魔術師ギルド本部の高位の魔術師がいます」


やがて船は降下し、発着場に着陸しました。ティファニーの案内で、内部告発者を保護している場所へ向かいます。


3 内部告発者


朝焼けの中、あなた達は街の中心を目指します。依頼を受けてやってきた冒険者であることを告げ、奥へ案内されます。


ティファニーはドアを3回ノックし、部屋の中に入ります。そこには、髭を生やしている小柄な男性がいました。


クリス「私は研究員で、元冒険者のクリスだ。よろしく頼む」


彼はクリス(レプラカーン/♂/38歳)です。ローブを身にまとい、頭にはとんがり帽子を身に着けています。その手に〈ラル=ヴェイネのマナリング〉がはめられています。彼はレベル11のウィザードです。


内部告発者である彼は、積極的に情報提供してくれるでしょう。


クリス「単刀直入に告発内容から話すとしよう。研究機関で国家転覆を目論む会話、および人族ではない何者かの潜伏を確認したため、当局に相談することに決めた。


時系列を追って話そう。動物が大の苦手な研究所の女性職員から研究棟にコウモリが出るので調べてほしいと話があったんだ。


俺は特に気にすることもなかったから、コウモリの存在には気付いていなかった。そこで、夜間に猫の使い魔を忍ばせ、目標が現れるのを待っていた。


1時間ほど待つと、コウモリが2体現れた。なるほど、これを退治すればいいのか、と思ったその矢先だった。なんと、そのコウモリが人間の姿に変化したのだ!


残念ながら、その顔は確認できなかった。会話を盗み聞きすると「理想」「クーデター」「合図」「正四面体」「夏季休暇」といった言葉が聞こえてきた。


しばらくすると、再びコウモリの姿に化けて飛び去ってしまった。ここまでが、使い魔の話だ。


変身能力を持つ蛮族や魔神は存在するというが、ここは〈守りの剣〉の影響下だ。となれば、候補は限られてくる。


だが、こう見えて私は実戦で学ぶ主義だ。…つまり、恥ずかしいのだが、この魔物が何なのか見当がつかない。もし知っていたら、教えてほしい」


クリスの話を聞いて、思い当たる節があるかもしれません。では、魔物知識判定をどうぞ。


ムルシエラゴ(→ML90頁)

知名度19、弱点値22


ムルシエラゴラティーゴ(→ML96頁)

知名度23、弱点値26


彼は、その後の行動について話します。


クリス「仮に同僚が人に化ける魔物だったなら、誰を信用すればいいのかという話になる。私以外の研究者がみんな、魔物だったとしたら?


もっとも、相談してきた彼女は魔物ではなさそうだが。翌日から一週間、研究機関は夏季休暇に入る予定だ。朝を待つことなく、私は当局に直行したというわけだ。調査に協力しながら、そのまま朝を迎えると、当局は国内外から屈指の実力者を集めることに決めたらしい。


この研究機関は、私と同じか、それ以上の実力を持つ魔術師が多数、在籍している。…そんな連中と渡り合えるのは、指折り数えるほどしかいないだろう。実際、君たちも他に頼む冒険者がいないからと言われて、バカンスに呼び出されたんじゃないのか?


とりあえず、大書庫を捜索してみてはどうだろうか。いわゆる図書館だが、例外的に夏季休暇期間も利用することができる。もっとも、大書庫はあまり使われていないみたいだが」


また、クリスは前任の理事長について教えてくれます。


クリス「俺が研究機関にやってきたのは7年前のことだ。妻子に心配をかけるからと、冒険者を引退して研究者に転身することになった。…まぁ、座学は苦手なんだが、な。


当時の理事長は、アウローラというエルフの女性の魔導師だった。かなりの実力者だが、遺跡探索にアンデッドの大群を連れていくという噂が流れていた。一体、どんな女が出てくるのかと思っていたよ。


理事長の部屋の扉を開けると、そこには耳の萎れたエルフの魔法使いがいた。あまりにもしょんぼりしているようだったから、元気がないのかと尋ねると、扉の上に氷水の入ったバケツを仕掛けて弟子に冷や水を浴びせたら、本気で説教されて反省中だった。


まったく、本当にこのクソガキが理事長なのかと驚いたよ。その後、アウローラや彼女の弟子たちと共に遺跡探索に行く機会があった。その時は、アンデッドはいなかったな。


彼女の悪癖として、探索中にボタンを見つけると、必ず押してしまうというものがあったな。非力なエルフの女性を取り押さえるのは簡単だが、彼女は悪知恵を身につけてしまった。ボタンを押す前に【ブリンク】を行使するんだよ。


だから、取り押さえようとしてもそれは幻影だった、というわけだ。その遺跡探索では彼女がボタンを押すと石の隠し扉が開いたかと思えば、魔法生物の大群が襲いかかってきた。まったく、あのときは死を覚悟したぜ。ま、隠し部屋にはお宝が眠っていたんだがな。


アンデッドの噂について尋ねると、今は弟子が嫌がるから極力やらないようにしているけど、以前はそうしていたとのこと。なぜ?と聞くと、冒険者を雇うよりも安上りじゃない!と言っていた。


なるほど、と思ったぜ。徹底した目的合理性だ。事実、研究費は無限じゃない。


座学が苦手な俺にとって、知らないことはアウローラに聞くとだいたい分かったから、それは助かるって話だ。本当に…楽しかったよ。一緒にいて飽きない奴だった。2年前、出産のために彼女は故郷に帰ることになった」


さらに、クリスは新しい理事長について教えてくれます。


クリス「新しい理事長は、エルザ(人間/♀/24歳)という。アウローラと同じウィザードだ。


妖精魔法や森羅魔法は素養が大事というが、真語魔法は訓練によって身に着けるものだ。それが理由かどうかは知らないが、ここでは真語魔法や操霊魔法が主な研究対象となっている。


彼女は6歳の頃、初めて【ライト】が使えるようになったらしい。父親が魔術師だったから、それは本当に喜ばれたそうだ。それで、魔術の道を究めることにしたという。彼女が今までの生涯で魔法の訓練に費やした時間は、優に1万時間を超えるだろう。


ただ、アウローラと明確に違う点があるとすれば、アンデッドの研究にはまるで興味を示さないことだな。1年ほど前から、その傾向が強くなった。


1年前、彼女は単身で遺跡探索に向かった。そして、彼女は酷く負傷して戻ってきた。


人型の魔物と交戦し、傷を負って敗走したという。彼女が実力者であることは認めるが、パーティを組まないなら、せめてアンデッドを連れていけばと言ったら『アンデッドは絶対にダメ』とのこと。…生理的に受け付けないんだろうな。


その後、彼女は魔動機や魔法生物を戦力として活用する方法を研究するようになった。蛮族や魔神を戦力にしようと研究しているという噂もあるが、真実かどうかは分からない。それから、彼女のコネで8人の研究者をこの1年で迎え入れることになった。皆、魔法使いとして実力があるだけでなく、専門の分類の魔物に関する知識も一流だ。


単身で遺跡探索に行くような研究者だ。性格は一匹狼といったところで、そのような人脈に恵まれていると知って私は驚いた。蛮族、動物、植物、魔法生物、魔動機、幻獣、妖精、魔神。あらゆる分類の魔物のスペシャリストが、それぞれ集められた。


人族であれば当然の話なのだが、彼女は穢れを嫌っているようだ。だからか、穢れを持たない戦力を好んでいるのだろう。実際、アンデッドが専門の研究者は集められていない」


クリスに別れを告げると、皆さんは研究施設を目指します。


 大書庫


大書庫にやってきました。夏期休暇中も開放されていますが、職員は不在で、魔動機の案内に従って中に入ります。本棚が立ち並んでいます。では、文献判定(目標値20)をどうぞ。


○GM向け記載事項

PLから下記と同様の提案があった場合は、判定に自動成功するものとします。


成功:検索システムの履歴から、以下の本が最近まで借りられていた本を調べれば何か分かるのではと思いました。その結果、以下の書籍(魔法文明語)が借りられていたことが分かりました。

・「魔法生物大全」

・「市街戦の歴史と戦略」

・「バックドラフトに関して」


書庫の奥に、丈夫そうな扉があります。探索(目標値10、レンジャー不可)を行うなら、本来、施錠されているはずが、なぜか施錠されていないことに気付きます。開けることができます。


では、危険感知判定(目標値30)をどうぞ。ただし、書籍「バックドラフトに関して」を読んでいる場合は、達成値に+4のボーナス修正を得ます。


全員が判定に失敗したなら、燃えさかる炎の直撃を受けます。


成功:扉を開けると、急激な爆発が起こりましたが、間一髪で避けることができました。

失敗:全員「20+威力50」の魔法ダメージ(生命抵抗力27、抵抗:半減)をどうぞ。


○GM向け記載事項

「剣の加護/炎身」や同等の効果を持つキャラクターは、ダメージを受けません。


スプリンクラーが作動し、火はすぐに消し止められます。中を探索することが可能です。


ティファニー「他のものは燃えてしまいましたが、頑丈そうな金庫が残っていますね」


金庫に対して探索判定(目標値12、レンジャー不可)を行えば、危険はなく、魔法の鍵(目標値20)で施錠されていると分かります。


○GM向け記載事項

解除判定は、成功するまで何度でも再挑戦できます。所要時間は一律10分です。


中には、以下のアイテムがあります。


・正四面体のシンボル

・金貨(400G相当)


見識判定(目標値26)に成功すれば、ヴァンパイアテトラへドロン(→ML98頁)から戦利品として得られる〈美しい正四面体〉と同じアイテムであることが分かります。


ヴァンパイアテトラへドロン(→ML98頁)

知名度19、弱点値26


※見識判定に成功したら、ティファニーが言います

ティファニー「ヴァンパイアテトラへドロンの配下が研究機関に潜伏しているのでしょうか」


見識判定に失敗すれば、宝物鑑定判定(目標値19)を行います。宝物鑑定判定に成功すれば、6000Gで売却できることが分かります。


○GM向け記載事項

宝物鑑定判定に失敗したら、鑑定料を支払うことで売却が可能です。鑑定料は、売却価格の2分の1です。なお、シナリオ終了時に売却する場合は、鑑定料は不要です。

このシナリオで登場する敵対的なキャラクターはすべて〈美しい正四面体〉を1個ずつ所有しているものとして扱います。


○次回


○サンプルキャラクター


人間の神官(ティファニー)

https://yutorize.2-d.jp/ytsheet/sw2.5/?id=25UlcB


エルフの魔導師

https://yutorize.2-d.jp/ytsheet/sw2.5/?id=x77T2V


エルフの妖精使い

https://yutorize.2-d.jp/ytsheet/sw2.5/?id=UEZ90A


リカントの拳闘士

https://yutorize.2-d.jp/ytsheet/sw2.5/?id=Abb2XB