概要

昨年8月、新作TRPGシステム「慈悲なきアイオニア」の公式サンプルシナリオ『リンの村の伝説』を遊びました。


オフセッション3人卓リプレイです。


初めてのシステムでしたが、比較的シンプルな判定システムと、濃厚なシナリオを楽しめました。


物語の途中で選択を迫られた時に、意見が割れたのが今となっては非常に印象深い体験を作ってくれました。


GMはボードゲームカフェの店長です。


以下、シナリオ感想です(ネタバレ注意!)

目次

01 『リンの村の伝説』について

02 プロローグ

03 ラウス王国へ

04 知らない天井

05 村の惨状

06 選択

07 最期の読書

次回


『リンの村の伝説』について

当日集まったプレイヤーは、3人でした。


サンプルシナリオは2人前提です。GMによっていくつか調整が行われました。


公式のサンプルキャラクターは4人です。以下の3人から決定する流れになりました。


・アドニス(25歳)→傭兵のエルフ(槍)

・ゾラ(20歳) →放浪者の犬の獣人(弓)

・ユーナ(18歳) →司祭の人間(回復役)


筆者を含む参加者3名は、上記のサンプルキャラクターから選択しました。


GMからTRPG経験の確認、「慈悲なきアイオニア」の世界観の説明を聞いた後、3人のプレイヤーでキャラクターを決定しました。


前衛で戦うのが好きな女性の参加者の方が、アドニスを選んだ後、筆者は司祭の女性の設定が気になったのでユーナに決めました。


一番の経験者の方は、最後に選択するよ、とのことで、ゾラを選択しました。


また、3人のうち2人は、キャラクター名を変更しました。


アドニス→トーシュ

ユーナ→セシリア


放浪者ゾラの名前は、そのままです。


また、トーシュとセシリアには「弱点」があります。


傭兵のトーシュは、幼い頃両親に烙印を焼き付けられた火傷の痕があります。


司祭であるセシリアは、人から好意を抱かれやすいが嘘がつけないようです。


ロールプレイ中、セシリアは常に本音で会話をします。


(筆者も割とそういう性格なのですが、徹底的にやってみると面白かったです)


プロローグ

ウルズ古王国を出発する隊商は、荷馬車に同乗する旅人を集めている。


運賃は金貨2枚。トーシュ(傭兵)、ゾラ(放浪者)、セシリア(司祭)の3名が名乗り出る。


トーシュは気前良く運賃を払った。商人は興奮した様子だ。


お金が大好きなゾラは値切り交渉を試みるが、失敗。


最後にセシリアが名乗り出ると「お嬢ちゃん、本当に大丈夫?」と言われる。


セシリア「私は教会のために、ラウス王国に行きたいんです」


商人は「教会も随分人使いが荒いね」と言いながら、運賃は、と聞いてきた。


「社交」「魅了」『美貌』を申告し、笑顔で(プレイヤーも笑顔!)交渉する。

※他のキャラクターを見ると普通は「説得」が交渉に有利なスキルとなっているが、この司祭の女の子は美貌で魅了することで交渉するらしい


筆者(そういえば、旅や戦い自体が目的の2人と違って、セシリアは旅に出ることに違和感がある設定だな…)

※ダイスロール結果は余裕で成功。10面ダイスを振るの、一体何年ぶりだろう…


商人「金貨1枚と銀貨5枚に値引きするよ」


…ただ、商人は鼻の下をのばしている。夜は気を付けた方がいいかも。


トーシュ(商人を睨みつける)


睨まれた商人はすぐに真面目な顔に戻ると、出発は2時間後だ、と言った。


3人は保存食を買い込み、セシリアの故郷の村を旅立った。


※セシリア(Cecilia)の由来について

ヨーロッパに広くみられる女性の名前。言語によって発音は異なる。また、カトリックの聖人の一人。キリスト教が国教化される前のローマ帝国で死刑判決を受け、夫と共に殉教したという伝承がある。 名門の娘で、音楽の守護聖人とされる。


ラウス王国へ

季節は極寒の冬。天気は猛吹雪となり、商人が大声で言っている。


商人「毛布があるから、使った方がいいよ」


全員が「観察」技能持ちである。


セシリアだけ「心理」を専門技能で持っていたが、GMに申告すると「樽に心はないと思うけどなぁ?」とのこと。


筆者(ダメ元だったけどまぁそうですよね)


暗闇の中、アドニス(傭兵)とゾラ(放浪者)は毛布を見つけられたが、セシリア(司祭)だけ見つけられなかった。


セシリア「私だけ見つけられなかった…」


落ち込んでいると、ゾラが声をかけてくれる。


ゾラ「私の毛布に一緒に入る?」

筆者(この2人は女性だから同性になるのか)


一方、トーシュはもう一度暗闇の中を探しに行き、セシリアの毛布も一緒に取ってきてくれた。


トーシュ「セシリアの分も探してきたぞ」

セシリア「ありがとう、トーシュは頼りになるね」


すると、ゾラがちょっと残念そうに話しかけてくる。


ゾラ「…ゾラのことも褒めないの?」


セシリア「それは…私、嘘を付けないので」

※キャラクターシートの弱点欄「嘘をつけない」を指差しながら)


みんな笑っていた。 しばらく進むと、荷馬車が急に止まる。どうやら、前の方で商人たちが何か話している様子だ。猛吹雪で、中から聞くことはできない。

※GMは、盗み聞きしますか?と提案


トーシュとセシリアは隠れて内容を聞き、ゾラは荷台に残ることに。


2人は隠れたまま、盗み聞きに成功する。


商人たちは、この場所に架かっていた橋が落ちていて引き返すのが妥当な判断だろう、と話していることが分かった。


トーシュ「…なんとかこのまま進みたいのだが」


突如、背後から閃光が走る。

※全員1D6のストレスを受ける。幸いにも、自身の出目は1で最小。


…背後から現れたのは、火を吐くドラゴンだった。トーシュ、セシリアの2人は回避に成功する。


鼻先を炎がかすめていく。一方、荷台に残ったゾラは背後からの襲撃を受けるも、飛び降りに成功。


直撃を受けた荷馬車が燃え上がる。


※戦闘開始。「慈愛なきアイオニア」は、荷重が少ない順に行動する。 魔法触媒のみで攻撃手段を持たないセシリアが最も荷重が小さい。まだ回復の必要はなく、GMに「観察」を実行しますか?と提案される。判定は残念ながら失敗。


セシリア(ドラゴンの首に何かが光っている…あれは何?)


ゾラ、トーシュの2人の攻撃はいずれも命中。


商人も腰が引けながら攻撃するが、反撃を受け丸焼きにされてしまった。

※1D10で判定。全ての目が1なら大失敗


血と肉の焼ける臭いを感じながら、ドラゴンの攻撃を躱そうとすると足を滑らせ崖下に落ちてしまう。


 実際の卓では:技能変更

GM「回避は重要」


トーシュのみ回避を修得していなかった(代わりに「防御」を修得)ため変更を推奨される。忘れさせるのは…


トーシュPL「社交性は捨ててきましたー!!」


…交渉事はセシリアの専任となった。


知らない天井

トーシュ(傭兵)は目を覚ますと、ベッドで寝かされていた。


武器は手元になく、傷には荒く包帯が巻かれていた。


トーシュ「…おい、みんな起きろ」

ゾラ「…はっ、知らない天井!」

セシリア「…ふぁー、いい夢見たー」


GM「肝っ玉が太いなあ笑」


目覚めると昼過ぎになっていた。


目を覚まして最初に見えたのは、見知らぬ木製の天井だった。


部屋の入口は垂れ幕で仕切られていて、隙間からは光が漏れている。


その向こうで、7歳くらいの少女が鍋で煮炊きしている。


セシリア(司祭)が声をかけると、少女は驚いたように振り返る。


アンマ「おはよう、起きたのね!」


けが大丈夫?昨日お兄ちゃんが手当してくれたみたいなんだけど、と彼女は早口に言う。


ここは、と聞くと、リンの村だよ、知ってる?小さな村だし知らないよね、とずっとおしゃべりしている。


誰かが運んできてくれたのかと尋ねると、お兄ちゃんだよ、3人一気に、とのこと。

※2人用シナリオのため、本来なら「2人一気に」となり、現実味がある


セシリア「ドラゴンを見なかった?」

アンマ「…うん」

筆者(あ、まずいこと聞いたかな?そういえば、自分は嘘をつけなかったような)

アンマ「…もしかして、お姉ちゃんは見たの?」

セシリア「…うん」


すると、アンマは黙りこくってしまった。 仕方ないので、歌って慰めてあげることに。


セシリア「じゃあ、お姉ちゃんが歌ってあげるね」

※ダイスロール(3D10)結果は…1,2,3の合計6で失敗!(ひどい)


だが、どういうわけか上手く歌えなかった。


アンマ「…あはは」


落ち込んでいると、ゾラ(放浪者)が「大丈夫、寝起きで声がガラガラだっただけだよ」と励ましてくれる。


セシリア「じゃあ…私はお兄ちゃんに会いたいかな」


アンマに、私達を連れてきたという兄について尋ねる。


アンマ「お兄ちゃんはね、スヴェインって言うんだよ!」

セシリア「スヴェインはどれくらい大きいの?」

アンマ「えーと、これくらい!(身振り手振りで)」

セシリア「じゃあもう大人かな?」


GM「セシリアが18なので、一緒か少し年下ですね」

筆者(なるほど...)


セシリア「なるほどね。...じゃあ、スヴェインに私は会いたいかな」


一瞬、間が空いた後、ゾラ(放浪者)PLから。


ゾラPL(...え、そういう流れなの?)

筆者(...えーっと、そういう流れじゃないですね)

※セシリアの人たらしな性格がロールプレイで再現できただろう


アンマは気に留めることはなく、続ける。


アンマ「あなたは豆は好き?お腹空いたでしょ、食べたい?」


ゾラ(どうしよう…)

トーシュ(世話になるばかりでは、な…)

セシリア「食べたい!」


2人は驚いてセシリアを見るが、すぐに彼女が嘘をつけない性格であることを思い出す。


即答したセシリアに驚きつつも、3人で食事を振舞われることになる。


アンマ「おいしい?」

セシリア「おいしい」

アンマ「やった!」

ゾラ「確かに、おいしいね」

トーシュ「…うまいな」

セシリア「ごちそうさま。ありがとう」


家を出ると、村の様子を目の当たりにする。


 セシリアの設定について

・孤児。村の教会に引き取られ、修道女となる

・シャーマ教(アイオニアで最も有力な一神教)の「大地の恵みは平等に分け与えられる」を理想とする

→(ロールプレイ方針)利他的で慈悲深く、理想主義

・シャーマ教は、偶像崇拝的な側面を持つ

・司祭の死後、遺言により教会を引き継ぐ

・若い女性が司祭となることに対する反感も、彼女の信仰心の前に聞こえなくなる

・最近、正式にシャーマ教の司祭となった

→(追加設定)冒険に出た理由について

①隣国の宗教関係者へ挨拶回り

②セシリアを妬ましく思う者が、彼女に死の危険を与えるべく①を理由に危険な冬に冒険に出ることを勧めた

・信仰こそが幸福への道であると信じて疑わない

・村に根付いた信仰を守ることが天命であると信じている

・教会で育ち、世界の広さを知らない

・幼馴染は、彼女の妄信がいつか試練を与えると危惧している

→この冒険でセシリアは命の危機に瀕することになる

→冒険を通して現実の世界を理解し、幼馴染みの予言が正しかったこと、自身が愛されていたことを知る


村の惨状

アンマから、まず村長に会ってほしいと言われる。


村には黒焦げになった家も多く、ドラゴンによる被害を想起させる。


また、皆が慌ただしく準備をしている様子が分かる。


アンマ「あれが村長だよ」


指差した先には、40歳代ほどの男性が立っていた。


セシリア「初めまして。私は司祭のセシリアです。この度は私達を救出して頂き、ありがとうございました」


セシリアが名乗ると、村長は救出?ああ、スヴェインのことかと理解した様子だった。


セシリア「村の皆さんは、何を?」

村長「あぁ…逃げる準備だ。ドラゴンのことは知っているか?出発は明朝だ」

セシリア「はい。昨晩、私達も戦いました。崖下に落ち、気絶していたところスヴェインさんに助けられました」

村長「ほぅ…ドラゴンと戦ったのか」


村長は少し驚いた様子だ。それは災難だったな、と付け加える。


トーシュ「戦おうとは考えないのか?」


彼は苦虫を嚙み潰したような顔で言う。


村長「…戦ったさ。戦って、負けたんだ。人が敵うような相手ではないんだ」


一同、黙り込む。


村長「君達、明朝の旅に同行してくれないか。旅慣れた人達が同行してくれるほど、心強いことはない。食料には余裕があり、君達に渡す分もある。明朝までによく考えておいてほしい」 


…アンマが、セシリアの袖を引っ張っている。


アンマ「お兄ちゃんに会ってほしいの」


 セシリアについて(ハンドアウト情報)

信心深く、故郷の人々の幸せを願っている

利他的で慈悲深く、理想主義

社交的で魅力的な女性

嘘をつけない、人の悪意を知らない

美しい容姿や仕草、愛嬌を持っている

→聖職者の行動指針としてモーセの十戒を参考に、その他、丁寧な言葉遣いをする


選択

アンマに言われた通りに墓場に来ると、そこには祈りを捧げている少年の姿があった。


セシリアと同じくらいの歳の少年は、がっしりとした体つきをしている。


アンマ「お兄ちゃん!」


少年はこちらを振り返る。


スヴェイン「スヴェインだ。怪我は大丈夫か?親父に教わった通りにしたんだが」


セシリア「助けて頂き、ありがとうございました。怪我なら大丈夫です。あなたが助けてくれたのですね。

私たちの武器や魔法触媒が見当たらないのですが、心当たりはありませんか?」


スヴェイン「昨晩は見張り番だったんだ。もしかしたら、まだ谷底にあるかもしれないな」


彼は続ける。


スヴェイン「村の様子は見てきたか?親父もその時に死んでしまった。…勇敢に戦ったんだけど。

…頼みがある。ドラゴンを殺しに行きたい。明朝までに」


一同、驚く。なぜ?とゾラが聞くと、


スヴェイン「村長の話を聞いたか?俺は村長の案に反対している。妹は山下りに耐えられない」


トーシュ「いいぞ。最初からそうするつもりだった」


スヴェインは驚いた様子をしている。


スヴェイン「…いいのか?頼んでおいてなんだが、死ぬかもしれないんだぞ?」


死ぬかもしれない、という言葉を聞いて、セシリアは昨晩の光景がフラッシュバックしてくる。


セシリア(足がすくんでいる)

ゾラ「策があるのかい?」


スヴェインは竜のねぐらの位置を把握していることを話し、雪の上に昨晩落ちた場所とねぐらの場所を簡単に説明してくれた。


セシリア「ドラゴンの生態について、何かご存知ですか?」


俺はよく知らないが…そういえば、と彼は思い出したように言う。


スヴェイン「ノーリ爺さんの家に本がたくさんあるから、何か分かるかもな。爺さんは先代の村長だよ」


スヴェインの情報をもとに、3人で相談する。


トーシュ「武器を回収するには、分岐の先に進む必要がありそうだな」

セシリア「お爺さんの家に行って、本から何か分かるはずよ」

ゾラ「いい案がある。その時が来たら話すよ」


まずは、スヴェインと一緒にお爺さんの家に行って、本を探すことに。


 セシリアの技能について

※ロールプレイの参考に

 

・「観察」+「心理」

→心理は一度も使わなかったが、社交性の高い人物であることが読み取れる

 

・「社交」+「魅了」

→「観察」「社交」「魅了」は使用頻度高め。自覚の有無はともかく、相応の人たらし

 

・「技巧」「歌唱」

→シャーマ教関係と思われる(聖歌を歌うため)

 

・「知識」「宗教」「歴史」

→歴史は一度も使わなかったが、後のロールプレイで重要な意味合いがあった

→「宗教」はスヴェインの父の墓の前で祈りを捧げた時に使用

※今回のセッションでは概ねフレーバー要素


最期の読書

スヴェイン「村の子どもたちは、爺さんに読み書きを習うんだよ」


外れにある家の前に辿り着く。ノックすると、中から声が聞こえてくる。


ノーリ「放っておいてくれんか。最期の読書の邪魔をせんでくれ」


スヴェインとアンマが呼びかける。


ノーリ「なんじゃお前さんか…こちらは知らん顔じゃな、どちらさん?」


セシリア「私は司祭のセシリアで、私達は旅人です。ドラゴンについてご存じか、そのような本があれば教えて欲しいのです」

ノーリ「わしは知らんな。本を…なぜじゃ?」

トーシュ「…倒したいんだ、明日の朝までに」


彼は目を合わせずに返事する。


ノーリ「ドラゴンを?やめておけ。あれはまさにこの世の地獄じゃった。口から火を吹いてな」


家に上げてもらうには、うまく取り入る必要があるだろう。彼女は笑顔で言う。

※難易度10の社交判定


セシリア「中に入れて欲しいんです」


※セシリアは「社交」「魅了」『美貌』を申告。PLも笑顔で!

※ダイスロール(3D10)は余裕で成功


無邪気に笑っているアンマと、全てを知った上で屈託のない笑みを浮かべているセシリア。


ノーリ「話くらいは聞いてやろうかの」


そう言って彼の家に入れてくれる。本棚には、羊皮紙でできた本が置かれている。

※観察判定→全員成功


寒冷なこの地域の習わしとして、来客にエールが振舞われる。

本を読ませてほしいと頼むと、特別じゃぞ、と50年かけて集めた話を聞かされながら、セシリア達は2冊の本を見つけることができた。


『動物と魔物の生態学』

『人心の導き方 - 親から国家指導者まで』


後者はセシリアが読むことに。ノーリの蔵書は、実用書が多いようだ。


 セシリアの特技について

『美貌』

・社交判定等でボーナスを得る

・NPCが当該の人物に対して下心を抱いている場合、+3点ほどのボーナス修正を得る

・今回のセッションでは2回使用

・NPCは男性が多い


次回