マトリックスって知ってる?

分析技法の話じゃなくって、映画の話。
そうそう、ウォシャウスキー兄弟の。「マトリックスが見ている」「白ウサギについて行け」ってやつね。

ねぇ、私たちが認識してるこの世界も、もしかしたらマトリックスに見せられてるだけの虚構かも、って思った事ない?
まぁ、マトリックスじゃなくても、モデルは何でもいいんだけど。

仮にこの世界に、真理みたいなものがあるとするじゃない。
でもこれって、その世界認識モデルに拠らず、そして、その真理を肯定するか否定するかを問わず、真理に到達した事を証明する事ができない世界観なんだよね。

仮にマトリックスに見せられた世界だって証明できたとしても、もしかしたら、そのマトリックスAによる世界が、実は、別のマトリックスBによって創られた虚構世界であるかもしれないでしょ?
Bの世界を証明しても、その瞬間、次はCの世界が現れる。
マトリックスを否定した場合も、また同じ帰結に。

1つ先を証明したら、次の証明の必要性が出現する。別の表現をするなら、1つの世界を証明した瞬間、次の世界が出現する。
終わる事のない、永久的な証明の連鎖。
何一つ真理を証明できない、悲しき世界。


じゃあ、そんな世界の中で、仮に、私たちの間に「愛の真理」があるとしたら、どうしたらそれを証明できるかな?
仮だよ、仮の話。そんな顔しないで!
それより早く、私に証明のアプローチを聴かせてよ。ふふ。

………

そう!正解!

証明が不可能であれば、議論の舞台を操作してあげればいい。
真理の存在有無を証明するのではなく、今、私たちが確かに手にできるこの世界観の中で、どうしてそれが生まれたのか、或いは必要とされたのか、その“起源”を追究すればいい。

例え、私が見つめている貴方が、虚構の存在であったとしても、今、私が貴方を認識しているという事実は、間違いなく確かなもの。
言い換えるならば、私の内在世界で起こる出来事は、全て現実。
それが、マトリックスに創られたものかどうかに関わらず。

だから、真理があるとするならば、それは曖昧な虚空に闇雲に手を伸ばす行為ではなく、真理を自分の世界に引き降ろす…う~ん、ちょっと違うか。
還…元?そう!還元!
私の認識可能な世界に、還元する操作になるんだよね。


それじゃあ、もう1問!

私は、貴方を、心から愛しています。
そして、貴方も、私と同じように。
そう、断言できるのはどうしてでしょう?

ふふふ。私、この世界が本物でも虚構でも構わないの。
だって手を伸ばせば、確かに貴方に触れる事ができるんだから。

ねぇ、貴方の瞳には、私の姿、どんな風に映ってる?