漆黒の闇の中の唯一点を無心に見つめ続けている。
特別何が見えるでもなく
そうする事で何かが浮かび上がる訳でもない。
視界の全てがこの闇に変りどれくらいの時間が経ったのだろうか。
眼に映る物に変化は無く先程と何も変わる事は無いが
今は"ある一つ"の事を考えている。
蛍光灯は完全に消してはいない。
この部屋は全くの闇ではなく
橙色の灯りが染め上げ部屋の様子を影のように映し出す筈だ。
今僕が見ているこの闇は一体 ??
何か光を完全に遮る物を被った覚えは無い。
瞼を固く閉ざしている訳でもない。
これは夢なんだ。
そう,漆黒の夢,何も無い夢,無限の夢。
頬に温もりを感じる。
長い時間待ち望んだ暖かい温もりだ。
心地良い抱擁の中浮力で浮かぶ様に軽やかに身体を起こす。
貴方の笑顔があった。
何処か幻想的で神秘的で懐旧的な貴方の笑顔が。
瞬時にこの太陽の様に眩い笑顔で照らして貰う為に
暗闇を彷徨っていたんだと本能的に悟る。
少し胸が痛んだ。
貴方の笑顔は優しさと共に切なさも運んで来るんだね。
胸の前で少し強く枕を抱き締める。
胸の空白が僅かでも満たせる気がしたから。
【22歳 1月3日のキミへ】
ヒトはコンプレックス(感情複合体)的存在だ。意識の上でも、無意識においても。
感情のパレットは、いとも容易く塗り替えられる。
自分自身でも、まだ見ぬ色彩を添える事のできる他の誰かの手によっても。