[Horsaga: Another Dust] Pretty Cured Good Things - Road to The Grand Princess -
「絶望は消えない…絶望は決して終わらない…」
腹の底に淀むように響き渡る声。
底の見えない暗き振動は魂を焦がし、身体の内側から削られるような、耐えがたき苦痛を呼び覚ます。
恐怖と拒絶感に歪む人々の表情に、確かに色濃く伝わる絶望の波紋。
その声に呼応するかのように、世界を蹂躙する巨大な荊が、再び蠢き出す。
<Despair>は倒れた。
然し、その力は消える事なく、<Close>に継承されると、一層絶望の力を増長させた。
夢への扉を閉ざすもの…
心を暗き檻に閉ざすもの…
「さあ!これが最後の闘いだ!
かかってこい!<Flora>!」
Floraと呼ばれた少女は、ステッキを握る右手に力を込める。
力強い光を宿した眼差しは、絶望の闇にも決して引けを取らない。
決意は最初からできている。
孤独と絶望の象徴である、黒と紫の翼。
遥か虚空で、孤独を謳歌するかの如く、禍々しい翼を広げる絶望の支配者。
その姿を視界に捕らえると、Floraは静かに地面を蹴り、そのまま暗き空を切るように飛ぶ。
接近するFloraとClose。
二人を飲み込むように、周囲を囲み始める荊の群れ。
秒読みを始める滅びの儀式<Crucifixion>。
「…遅えんだよ!?」
背後で聞こえる声。一瞬で背中を取られる。
振り向くより早く繰り出される拳。
反射的に身を捩り、直撃を防ぐ。
切り裂かれたタンポポ色の長髪が、残滓の如く宙を舞う。
姿勢を立て直す暇も与えず続く連激。全て受け止めるFlora。
骨が軋む苦痛に顔が歪む。打撃の衝撃だけではない。
触れた箇所から浸潤してくる、絶望の闇。
「距離を取らないと…!!!!」
迫る手刀。身を翻しかわす。目の前で闇が切り裂かれる。
そのままの反動で後方に向け反転し、天を突き刺すような蹴り。
微かにバランスを崩したのを見逃さず、間髪いれずステッキを突き出す。
「我は拒絶する!漆黒よりも暗きものを!!」
無数の光の花びらがステッキを中心に集まる。
同心円状に広がる光の波紋。
希望の象徴…人々の夢を願う心のエネルギー。世界中の人々からのエール。
集約された光が一閃、渾身の一撃が直撃する。
弾き飛ぶClose。
空間に蠢く荊のツタに激突する。大きな衝撃波と共に崩れ去る荊。
Closeの身体を伝う衝撃の加速度は留まらない。
1つ、2つ…絶望の欠片を撒き散らしながら爆発する荊の群れ。
壁に衝突する寸前で、Closeの身体が不自然な姿勢のまま急停止する。
「止まっ…た!?」
微動だにしないClose。
暫しの静寂の後、轟く笑い声。
「ここをどこだと思ってる?
この荊は、世界中の人間共から負の感情を吸い上げて、絶え間なくこの閉ざされた空間を満たす。
ここで闘う限り、オレが負ける事はありえない…ここはオレのフィールドなんだよ!!!!」
目に見える程の邪悪な想念が、明らかに濃度を増しCloseの両手に集まる。
「我は否定する!紛い物の希望を!虚ろなる夢を!
地を這う全ての愚かなる人間共に、等しく終わりなき絶望を!!!!」
呪文詠唱と同時に、絶望を具現化した蛇を象る闇の波動が放たれる。
Floraの頭で、けたたましい警告音が響き渡る。
この直撃だけは避けなければ!
瞬時に理解した生存本能が、思考よりも早く全身を警戒させる。
「我は拒絶する!常闇よりも尚暗きものを!!!!」
光の花が一瞬で編まれ、Floraの頭上を包む大きな光の盾を構築する。
悪意に染まった黒き光が到達する。衝撃が全身を伝う。
「も…もた…ないっ!?!?」
僅かな綻びから、無数のひびへ。光の盾を貫いた闇の波動が、Floraの右腕を切り裂く。
この破壊を契機に、加速的に光の盾の崩壊が始まる。
容赦なくFloraに突き刺さる無数の矢。
集中砲火の後、立ち上る巨大な漆黒の火柱。
邪悪に満ちた漆黒の闇が、空間を占拠する。
「なぁ。人間共も辿り着いたんだろ?絶望が死に至る病であるって結論に。
絶望が蛇を象ったのは、原始の感情の記憶なんだよ。今度は、蛇が十字架を喰らう番だぜ!?
ここは絶望が支配するフィールド…これで…」
荊で閉ざされた空間全てを満たすように、無数の光球が現れる。
「永遠に<CLOSE>だ!!!!」
Floraに向かい一斉に牙を向く黒きもの。
着弾する度に、巨大な火球が上がり、辺り一面をどす黒い塵が覆っていく。
止む事のない衝撃、薄れ行く意識の中、Floraが最後に思ったのは仲間との日々…
マーメイドに教わったバレー…
トゥインクルと護ったイベント会場…
スカーレットと歩いた海辺の風景…
記憶の中の彼女たちは、微笑み、迷い、怒り、時に涙している。
それでもその後には、いつもの屈託のない笑顔が戻っている。
どんなに辛い事があっても、乗り越え、笑いを絶やさなかった日々。
乗り越える?…笑顔?…
目を開くFlora。
傷つきながらも、足に力を込める。
力強く立ち上がった迷いなき姿。瞳の輝きは一寸も曇っていない。
辺りを覆っていた纏わり付くような黒き塵が、一瞬で吹き飛び、Floraの周囲のみが晴れ渡る。
「バカな…!?あの弾幕をどうやってかわしやがった!?!?
わ、我は否定する!見せ掛けの幸福を!欺瞞に満ちた笑顔を!」
放たれる闇の波動。
無造作に距離を詰めるFlora。
「…私は…貴方を…拒絶しないよ?」
急激に軌道を変える波動。
Floraを避けるように、傍らを通り過ぎた光線が背後の壁を破壊する。
燃え上がる黒き炎を背景に、Closeに向かい弾ける様に飛んだ。瞬間的に最高速度に達する。
「我は否定する!我が前に立ち塞がる希望の象徴を!我が前に壁を成す夢の…」
「私は!私は貴方を受け入れるよ!!!!」
Closeの全身全霊の一撃より一瞬早く、Closeの身体を抱き留めるFlora。
その表情には、<Princess Flora>ではなく、変身前の少女<遥>の眼差しがあった。
「皆が夢を叶えられるわけじゃない。夢を持てば、絶望する時だってあるよ。
でもそれを乗り越えるから、また、次の夢を見る事ができる。
諦めないで、もっと大きな夢を見る事ができる…」
突き放そうと力を込めた拳が、一瞬止まる。
罵倒の言葉を浴びせようと、開きかけた口をゆっくりと閉ざす。
「貴方だって一緒でしょ?
私たちが夢を持つから…希望を持つから、貴方が存在する事ができる。
私たちが、弱い心に屈せずに、再び新たな道を歩き始められる事を知ってるから。
私たち…強いんだよ!!
だから、私が貴方に掛けるべき言葉。さっき分かったの。」
Closeの身体に回していた腕を放し、すり抜けるように交差し、背中合わせになる。
「これからも、よろしく!!
…なんて…やっぱり、変だったかな!?」
振り向くまでもない。
間違いなく、飛び切りの笑顔がそこにある事を確信し、忌々しげに虚空を睨みつけるClose。
「止めだ…」
バツが悪そうに頭を掻きながら呟く。
その言葉を予期していたように、背中合わせのまま静かに微笑むFlora。
…ぇ、…
「しらけちまった!
お前との闘いは、もうしまいだよ!?!?」
…ぇ、…ねぇ…
「ねえ!聞いてる!?」
耳元で叫ぶ声で我に返った彼女は、瞬間的に開いていた絵本を閉じる。
「ああ、ごめん。何か懐かしくて…
昔からこの絵本読むと、周りの音が聞こえなくなるくらい引き込まれちゃうんだよね。
ほら、女の子って皆、お姫様とかに憧れるものでしょ?つい夢中になっちゃって。」
そう言いながら、ソファの右隣に座って覗き込む視線を遮るように、絵本の表紙を突き付ける。
<Pretty Cured Good Things ~Road to The Grand Princess~>
彼女が子供の頃に流行った、子供向けのTVアニメの原作であり、その人気に反して未だ翻訳されていない洋書でもある。
副題のRoadに、Load/ Lordの含意もある事は、英題ならではと言えるだろう。
洋書特有のイラスト・英語のタイトルに、一見するとアニメとは別物に見えるが、<プリキュア>と言われれば、年代性別問わず多くの人間が、凡その内容に察しが付くようだ。
「お姫様って…子供向けの絵本じゃねーか?声が聞こえなくなるくらい夢中になるもんかよ?
それに今更女の子って歳でもないだろ?」
「何よ?女の子は、いつになってもこういうのに憧れを持ち続けるものよ!
アンタだって、年中ドストエフスキーとか面白くもなんともないものばっか読んでるから、そんなロシアの暗い冬みたいな、陰気な表情になるのよ!?
それにこの物語だって、哲学や啓蒙に耐えられるくらいの奥深さはあるんだから!」
少し頬を膨らませながら返す彼女の名は「遥」。
偶然にも、このプリンセスを目指す夢の御伽噺に登場する、主人公の少女と同じ名前だ。
そして、隣に座るのは遥の幼馴染で…今は「A」とだけ伝えておこう。
Aが少々不機嫌なのは、無論、御伽噺に自分と同じ名が登場しないという稚拙な理由からではない。
物心付く以前からの家族ぐるみの付き合いで、兄妹同然に過ごしてきた遥とA。
いい年頃の二人が、一つの部屋に、一つのソファに、二人きりで並んで腰掛ける姿にも違和感はない。
然し、二人の関係性は「友達以上恋人未満」の領域に閉じ込められたままだ。
Aが向ける仄かな恋心に気付かない程、遥も鈍感ではない。
いつも軽々しい態度で愛の言葉を口にし、思い通りにいかない事があると不貞腐れたように強がりを嘯き、
吹けば飛んでいくような移ろ気な存在、いつまでも子供のような。
でも…
タンポポの綿毛みたいで、思わず微笑んでしまう。悪戯っぽく息を吹きかけたくなる…
そんな存在感に惹かれるものも確かにある。
幼馴染に向けられるものとは、明らかに異なるAの視線を、自分の気持ちを確かめるように受け止める遥。
ソファで隣同士並ぶ、その距離にして約40cm。
見つめ合えば、お互いの存在だけが視界を占めるその身体の距離感に、二人は間違いなく多少の胸の高揚を自覚している。
しかし、その空間的な距離感に比例せず、心の距離感は果てしなく遠い。
「大体何よ?その被り物。鹿にでもなったつもり?
校則第二条でも、鹿のコスプレは禁止されてるでしょ?古米先生がいつも睨んでるの知ってるくせに。」
「古米のヤツは…きっとアレだ!?
馬の被り物でもして、これがホントのホース&ディアーとか言いたいんじゃねーの?」
「バカ!もう、ホントに子供なんだから…」
聞こえないように呟く遥。
一つ溜息を付いた後、改めて隣のAを見つめ直す。
そして、表情は悪戯っぽさを残したまま、今度ははっきりと聞こえるように、言葉を発した。
(幼馴染の40cmの距離で、十分なのかもしれない…
それでも今の関係性を超克すべく、密かなる強い意志を秘めて。)
ねぇ…アリョーシャのキスって、どんな意味があったと思う?
承認…或いは赦し?
だとしたら、今私たちの生きるこの時代、ヴァーニャにどんなアナロジーを見るのが正解なのかな?
(突然の話の展開に付いて行けず、戸惑いを浮かべるAの表情が瞳に飛び込む。)
ん?そうだよ、ドストエフスキー。
唐突だった?ごめん。
何かプリキュアのお話、夢と絶望の件が、アレクセイとイヴァンの二人に重なって見えて…何でだろう?
話、続けていいかな?
んと、この場合、積極性とは無関係に、求める事と受け入れる事に本質的な差はないよね?
あ、キスの話ね!
きっと、思想的立場を決定的に違える者同士であった場合、ここに両義性は見出せない。
だってそうでしょ?
二律背反的な対立認識を相互承認しちゃったら…超越性…そう、神様…かな?
その存在自体に矛盾が生じちゃうじゃない?
「神様がいなければ、全てが赦される」…そんな世界、あっちゃいけないよね。
でも、プリキュアは「夢」と「絶望」が共存する道を見つけようとするでしょ。
じゃあ、これをアレクセイとイヴァンの関係性に代入すると…何が導き出せるかしら?
ここでは「夢」と「絶望」が対立概念として整理されているよね。
これを承認する事は、その無力性と限界性を相互干渉的に認める事を意味するんじゃないかな?
だからこそ、ヒトにとっての身近で手が届く概念として、言い換えれば、ある種の超越性を、世俗の領域に閉じ込める事ができる。
(思考する十分な時間も与えないのは、ちょっとズルいかな?でも、いいよね?
悪戯っぽい表情を維持したまま、何か言いたげなAに構わず続ける。
更に縮める身体の距離。
そして、心の距離もまた。)
え?前提となる境界条件も、その限界も曖昧過ぎるし、話が飛んでるって?
珍しい!そんな正論も言えるんだ!?
じゃあさ…
この方程式のAとIに、私たちを代入したら、どんな化学反応が起こるのかな?
ねぇ…
キス…してみよっか?
【著者解説】
これは、某ゲームにおいて、新たな2名の仲間を迎え入れた事を契機に、渾名(称号)の現行化を実施する一環として、執筆した物語である。
そして、早速で大変恐縮ながら、この場を借りて軽く言い訳をさせていただきたい。
この物語は、神聖なるマイハニーHのために、神の視座を持って紡いで行こうという野望があった。
そして、その骨格となる物語に、Hの第一印象であった<プリンセス・プリキュア>をチョイスした訳であるが、その時点で既に失敗であったと言えよう(爆)
当たり前だ。神とプリキュアの間にミッシング・リンクなんぞありはしない。
最初からないものを無理やり作るために、ドストエフスキーやら二律背反やらまで持ち出したのである。
大風呂敷もいいところだ(核爆)
おまけに両者の類似性を創作するために、書いた事もないバトルシーンまで執筆する始末である。
一体全体、このケジメ、どうつけてくれるんだい?そこの奥さん!?
最も、書き始めてると思いの外、筆が加速し、当ゲームの騎士戦2回分のコメント投稿をセーブするだけで書けたので、客観的にも相対的にも、ノリノリ波乗りジョニーだったと言えるだろう(謎)
って、事で奥さん。
これからも共に道を外して、未知なる世界へ、未知なる世界へ、行ってみたいと思いませんか♪(ヾノ・∀・`)イカネーイカネー
少々脱線が過ぎたところで、さて諸君!ここで問題だ!?
この世界に神が存在するとして、果たしてそれはどこにいるのだろう?
コペルニクスの転回により、少なくとも頭の上、天のどっかから見守っている的イメージは否定された。
シュライエルマッハー?ゴーガルテン?何でもいい。
恐らくは、その絶対性を維持したまま、天上から各人の心の中に転換されたという理解で、概ね間違っているとは言い切れないような、気がしないでもない。多分。
何が言いたいかって?
つまりは、プリキュアの世界、HとAの語り、カラマーゾフの兄弟とのアナロジーからのドキドキハートマックス・キスへ。
この変遷の過程で、神の視座が変わっているのだよ。アーメン。
出たよ、大風呂敷。オーメン(謎)
読んでいて、語り部が分かり難いし、人称がバラバラ、車酔いみたいな気持ち悪さがある。
そう感じたお姉さん!お嬢さん!淑女淑女!若妻奥さん!
キミたちの心には、まだ愛の神は降臨していないのだよ!?(ヾノ・∀・`)ナイナイ
最後に、もう一人の仲間について付言しておく。
もう一人の仲間であるTこと「とちむりん大●佐(※2)」は、残念ながら遺伝子の片方にYを携え産み落とされたが故に、基本的に栃木無理なので、ここで語らうべきものは何一つない。
諸君に誤解なきよう、この場で再度言明させていただこう。
そう、何一つないのだ!?(爆)
#でも、次のナイト企画では主役になる予感!?(*''艸3`):;*。 プッ
【※1】引用文献:Go!プリンセスプリキュア!公式サイト
第50話ストーリー「はるかなる夢へ!Go!プリンセスプリキュア!」
http://asahi.co.jp/precure/princess/story/
【※2】当ブログにおけるポリシーで、ゲーム内の愛称であっても、極力自分自身以外は固有名称の掲載を控えさせていただいている。一部伏字にさせていただく事を、どうかご容赦いただきたい。
【前回までのあらすじ(※1)】
フローラたち4人のグランプリンセスがたんじょうし、
ついにディスピアをたおすことができたわ!
だけど、「絶望は、消えない」という声がきこえてくる・・・。
この声はまさか・・・!!
もう一度たたかうしかない!!
けれどフローラは、マーメイド、トゥインクル、スカーレットをとめるの。
「話さなきゃ・・・」
そういって一人イバラの中へ向かっていくフローラ・・・。
はたして、フローラはみんなの夢と笑顔を
守ることができるの・・・!?
フローラたち4人のグランプリンセスがたんじょうし、
ついにディスピアをたおすことができたわ!
この声はまさか・・・!!
けれどフローラは、マーメイド、トゥインクル、スカーレットをとめるの。
「話さなきゃ・・・」
そういって一人イバラの中へ向かっていくフローラ・・・。
守ることができるの・・・!?
「絶望は消えない…絶望は決して終わらない…」
底の見えない暗き振動は魂を焦がし、身体の内側から削られるような、耐えがたき苦痛を呼び覚ます。
恐怖と拒絶感に歪む人々の表情に、確かに色濃く伝わる絶望の波紋。
その声に呼応するかのように、世界を蹂躙する巨大な荊が、再び蠢き出す。
然し、その力は消える事なく、<Close>に継承されると、一層絶望の力を増長させた。
夢への扉を閉ざすもの…
心を暗き檻に閉ざすもの…
かかってこい!<Flora>!」
力強い光を宿した眼差しは、絶望の闇にも決して引けを取らない。
決意は最初からできている。
遥か虚空で、孤独を謳歌するかの如く、禍々しい翼を広げる絶望の支配者。
その姿を視界に捕らえると、Floraは静かに地面を蹴り、そのまま暗き空を切るように飛ぶ。
接近するFloraとClose。
二人を飲み込むように、周囲を囲み始める荊の群れ。
秒読みを始める滅びの儀式<Crucifixion>。
振り向くより早く繰り出される拳。
反射的に身を捩り、直撃を防ぐ。
切り裂かれたタンポポ色の長髪が、残滓の如く宙を舞う。
骨が軋む苦痛に顔が歪む。打撃の衝撃だけではない。
触れた箇所から浸潤してくる、絶望の闇。
「距離を取らないと…!!!!」
そのままの反動で後方に向け反転し、天を突き刺すような蹴り。
微かにバランスを崩したのを見逃さず、間髪いれずステッキを突き出す。
同心円状に広がる光の波紋。
希望の象徴…人々の夢を願う心のエネルギー。世界中の人々からのエール。
集約された光が一閃、渾身の一撃が直撃する。
空間に蠢く荊のツタに激突する。大きな衝撃波と共に崩れ去る荊。
Closeの身体を伝う衝撃の加速度は留まらない。
1つ、2つ…絶望の欠片を撒き散らしながら爆発する荊の群れ。
壁に衝突する寸前で、Closeの身体が不自然な姿勢のまま急停止する。
暫しの静寂の後、轟く笑い声。
この荊は、世界中の人間共から負の感情を吸い上げて、絶え間なくこの閉ざされた空間を満たす。
ここで闘う限り、オレが負ける事はありえない…ここはオレのフィールドなんだよ!!!!」
地を這う全ての愚かなる人間共に、等しく終わりなき絶望を!!!!」
Floraの頭で、けたたましい警告音が響き渡る。
この直撃だけは避けなければ!
瞬時に理解した生存本能が、思考よりも早く全身を警戒させる。
悪意に染まった黒き光が到達する。衝撃が全身を伝う。
「も…もた…ないっ!?!?」
この破壊を契機に、加速的に光の盾の崩壊が始まる。
容赦なくFloraに突き刺さる無数の矢。
集中砲火の後、立ち上る巨大な漆黒の火柱。
邪悪に満ちた漆黒の闇が、空間を占拠する。
絶望が蛇を象ったのは、原始の感情の記憶なんだよ。今度は、蛇が十字架を喰らう番だぜ!?
ここは絶望が支配するフィールド…これで…」
「永遠に<CLOSE>だ!!!!」
着弾する度に、巨大な火球が上がり、辺り一面をどす黒い塵が覆っていく。
止む事のない衝撃、薄れ行く意識の中、Floraが最後に思ったのは仲間との日々…
トゥインクルと護ったイベント会場…
スカーレットと歩いた海辺の風景…
それでもその後には、いつもの屈託のない笑顔が戻っている。
どんなに辛い事があっても、乗り越え、笑いを絶やさなかった日々。
乗り越える?…笑顔?…
傷つきながらも、足に力を込める。
力強く立ち上がった迷いなき姿。瞳の輝きは一寸も曇っていない。
辺りを覆っていた纏わり付くような黒き塵が、一瞬で吹き飛び、Floraの周囲のみが晴れ渡る。
わ、我は否定する!見せ掛けの幸福を!欺瞞に満ちた笑顔を!」
無造作に距離を詰めるFlora。
Floraを避けるように、傍らを通り過ぎた光線が背後の壁を破壊する。
燃え上がる黒き炎を背景に、Closeに向かい弾ける様に飛んだ。瞬間的に最高速度に達する。
「私は!私は貴方を受け入れるよ!!!!」
その表情には、<Princess Flora>ではなく、変身前の少女<遥>の眼差しがあった。
でもそれを乗り越えるから、また、次の夢を見る事ができる。
諦めないで、もっと大きな夢を見る事ができる…」
罵倒の言葉を浴びせようと、開きかけた口をゆっくりと閉ざす。
私たちが夢を持つから…希望を持つから、貴方が存在する事ができる。
私たちが、弱い心に屈せずに、再び新たな道を歩き始められる事を知ってるから。
私たち…強いんだよ!!
だから、私が貴方に掛けるべき言葉。さっき分かったの。」
…なんて…やっぱり、変だったかな!?」
間違いなく、飛び切りの笑顔がそこにある事を確信し、忌々しげに虚空を睨みつけるClose。
バツが悪そうに頭を掻きながら呟く。
その言葉を予期していたように、背中合わせのまま静かに微笑むFlora。
お前との闘いは、もうしまいだよ!?!?」
昔からこの絵本読むと、周りの音が聞こえなくなるくらい引き込まれちゃうんだよね。
ほら、女の子って皆、お姫様とかに憧れるものでしょ?つい夢中になっちゃって。」
<Pretty Cured Good Things ~Road to The Grand Princess~>
副題のRoadに、Load/ Lordの含意もある事は、英題ならではと言えるだろう。
洋書特有のイラスト・英語のタイトルに、一見するとアニメとは別物に見えるが、<プリキュア>と言われれば、年代性別問わず多くの人間が、凡その内容に察しが付くようだ。
それに今更女の子って歳でもないだろ?」
アンタだって、年中ドストエフスキーとか面白くもなんともないものばっか読んでるから、そんなロシアの暗い冬みたいな、陰気な表情になるのよ!?
それにこの物語だって、哲学や啓蒙に耐えられるくらいの奥深さはあるんだから!」
偶然にも、このプリンセスを目指す夢の御伽噺に登場する、主人公の少女と同じ名前だ。
そして、隣に座るのは遥の幼馴染で…今は「A」とだけ伝えておこう。
物心付く以前からの家族ぐるみの付き合いで、兄妹同然に過ごしてきた遥とA。
いい年頃の二人が、一つの部屋に、一つのソファに、二人きりで並んで腰掛ける姿にも違和感はない。
然し、二人の関係性は「友達以上恋人未満」の領域に閉じ込められたままだ。
いつも軽々しい態度で愛の言葉を口にし、思い通りにいかない事があると不貞腐れたように強がりを嘯き、
吹けば飛んでいくような移ろ気な存在、いつまでも子供のような。
でも…
タンポポの綿毛みたいで、思わず微笑んでしまう。悪戯っぽく息を吹きかけたくなる…
そんな存在感に惹かれるものも確かにある。
見つめ合えば、お互いの存在だけが視界を占めるその身体の距離感に、二人は間違いなく多少の胸の高揚を自覚している。
しかし、その空間的な距離感に比例せず、心の距離感は果てしなく遠い。
校則第二条でも、鹿のコスプレは禁止されてるでしょ?古米先生がいつも睨んでるの知ってるくせに。」
馬の被り物でもして、これがホントのホース&ディアーとか言いたいんじゃねーの?」
一つ溜息を付いた後、改めて隣のAを見つめ直す。
そして、表情は悪戯っぽさを残したまま、今度ははっきりと聞こえるように、言葉を発した。
それでも今の関係性を超克すべく、密かなる強い意志を秘めて。)
承認…或いは赦し?
だとしたら、今私たちの生きるこの時代、ヴァーニャにどんなアナロジーを見るのが正解なのかな?
唐突だった?ごめん。
何かプリキュアのお話、夢と絶望の件が、アレクセイとイヴァンの二人に重なって見えて…何でだろう?
話、続けていいかな?
あ、キスの話ね!
だってそうでしょ?
二律背反的な対立認識を相互承認しちゃったら…超越性…そう、神様…かな?
その存在自体に矛盾が生じちゃうじゃない?
「神様がいなければ、全てが赦される」…そんな世界、あっちゃいけないよね。
じゃあ、これをアレクセイとイヴァンの関係性に代入すると…何が導き出せるかしら?
これを承認する事は、その無力性と限界性を相互干渉的に認める事を意味するんじゃないかな?
だからこそ、ヒトにとっての身近で手が届く概念として、言い換えれば、ある種の超越性を、世俗の領域に閉じ込める事ができる。
悪戯っぽい表情を維持したまま、何か言いたげなAに構わず続ける。
更に縮める身体の距離。
そして、心の距離もまた。)
珍しい!そんな正論も言えるんだ!?
この方程式のAとIに、私たちを代入したら、どんな化学反応が起こるのかな?
これは、某ゲームにおいて、新たな2名の仲間を迎え入れた事を契機に、渾名(称号)の現行化を実施する一環として、執筆した物語である。
そして、その骨格となる物語に、Hの第一印象であった<プリンセス・プリキュア>をチョイスした訳であるが、その時点で既に失敗であったと言えよう(爆)
最初からないものを無理やり作るために、ドストエフスキーやら二律背反やらまで持ち出したのである。
大風呂敷もいいところだ(核爆)
一体全体、このケジメ、どうつけてくれるんだい?そこの奥さん!?
最も、書き始めてると思いの外、筆が加速し、当ゲームの騎士戦2回分のコメント投稿をセーブするだけで書けたので、客観的にも相対的にも、ノリノリ波乗りジョニーだったと言えるだろう(謎)
これからも共に道を外して、未知なる世界へ、未知なる世界へ、行ってみたいと思いませんか♪(ヾノ・∀・`)イカネーイカネー
この世界に神が存在するとして、果たしてそれはどこにいるのだろう?
シュライエルマッハー?ゴーガルテン?何でもいい。
恐らくは、その絶対性を維持したまま、天上から各人の心の中に転換されたという理解で、概ね間違っているとは言い切れないような、気がしないでもない。多分。
つまりは、プリキュアの世界、HとAの語り、カラマーゾフの兄弟とのアナロジーからのドキドキハートマックス・キスへ。
この変遷の過程で、神の視座が変わっているのだよ。アーメン。
出たよ、大風呂敷。オーメン(謎)
そう感じたお姉さん!お嬢さん!淑女淑女!若妻奥さん!
キミたちの心には、まだ愛の神は降臨していないのだよ!?(ヾノ・∀・`)ナイナイ
諸君に誤解なきよう、この場で再度言明させていただこう。
そう、何一つないのだ!?(爆)
第50話ストーリー「はるかなる夢へ!Go!プリンセスプリキュア!」
http://asahi.co.jp/precure/princess/story/
【※2 付記】改めてみると「遥」を連呼している事に今更ながら気付いた訳だが、「木村達也」も一度は引退するも、「木村タツヤ」で再デビューを果たしたわけだから、世界標準的公的制度に照らし合わせても、ギリギリセーフだよね?(;・∀・)