【SIDE LUHAN】
不意にジョンデがもたれかかってきたので、慌てて身体を受け止めた。音楽番組のリハーサル中、近頃メンバーの間でちょっと流行っている遊びに夢中になっていた僕は、ジョンデの様子の変化に気づいていなかったんだけど、観覧にきていた女の子たちは、薄暗い照明の中でも目ざとく見つけて「ジョンデヤー」と韓国語風に黄色い声で口々に叫ぶ。
「ルハニヒョン、ごめんなさい。」
ジョンデが小さな声でつぶやく。肩のあたりにかかるジョンデの息が熱かった。ああ、そうだ、今日の朝もジョンデは起きてくるなり頭が痛いと繰り返して、ほとんど朝食もとらず中国に向かう飛行機に乗ったのだった。飛行機の中でも頭が痛くて眠れないというので、ミンソクが手持ちのアスピリンを飲ませてやった。それでようやくうとうとしたようだったが、顔色はひどく悪く、時折小さく咳き込んでいたっけ。
「早く終わらせてホテルに帰ろう。がんばれる?」
女の子たちを心配させないように適当に手をふって、ジョンデの耳元でそう言うと、声は出さずに数回小さく頷いた。頭をなでてやると、少しだるそうに身体を起こして、いつも通り少し困ったように眉を寄せて微笑んだ。
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なるべく早くステージも終わらせたかったのだけど、カメラマンが大ボケで、結局二曲を2回ずつパフォーマンスすることになった。ジョンデが懸命にいつも通りに歌おうとしているのは見てとれたけれど、実際立っているのも辛そうな様子なので気が気ではなくて、なるべく短く挨拶を終えて舞台裏に引っ込むことばかり考えていた。
いつもは最後までステージに残り、ひらひらと手を振ってファンサービスをしているジョンデが、お辞儀をした後ほとんど急ぎ足のようにしてふらふらと舞台裏のほうへ向かう。気になりながらもきゃあきゃあうるさい女の子たちにひとしきり手を振ってやり、ウーファンと一緒に楽屋に向かった。
ジョンデはテレビ局のスタッフに支えられて楽屋に入るところだったけど、何故だかマネヒョンの姿がない。ミンソクがスタッフに代わってジョンデを支えようとし、イシンが解熱剤はないかとメイクスタッフに尋ねているところだった。タオは心配そうに、少し遠巻きにしてバタバタと動き回るスタッフたちを見ている。
「なんでマネヒョンいないの。」
思わず振り返りウーファンに言いかけたが、温厚なウーファンが珍しくチッと舌打ちするところだったので、途中で言葉を飲み込んだ。
中国での営業は、韓国での活動時に比べて同行スタッフの人数も少なく、付き添いのマネヒョンが通訳をつれて打ち合わせにいってしまえば、韓国人メンバーの話は僕ら中国人メンバーが通訳してやるしかない。ここ数日、ジョンデの体調がよくないのはわかっていたのになんだっていうんだ。
「頭痛薬だけど、熱にも効くはずだって。とにかくこれ飲んで、マネヒョンが来たら一度病院にいこう。」
イシンが上半身をぱたりと倒してソファに身体をうずめているジョンデに説明していた。
「病院、いいです。早く帰りたい。」
ジョンデが首を振り、メイクスタッフと喋っていて聞き取れなかったらしいイシンが、なに、と聞き返したけれどジョンデはもう口を開くのも億劫そうで、目を閉じてしまった。
「早く帰りたいって。」
ミンソクが通訳してやり、イシンがああ、と頷く。ウーファンがスタッフにマネヒョンの居場所を聞いている間に、スタッフからひざ掛けを借りてジョンデを包んでやった。
「謝謝(ありがと)。」
半分だけ目をあけたジョンデが中国語で言った。パーフェクトな発音だよ、と褒めてやると、口角を少しだけ持ち上げて微笑った。
…to be continued
(長くなったので分割)