熱が下がったジョンデは、昨日のぶんを取り返すかのように朝ごはんの粥もよく食べた。
「タオの肉も食べる?」
と言うタオに対しては(あれはあれで心配しているのだ)、目を細めて首をふっていたけれど、昨日みたいにいかにも無理した感じの笑顔ではなくなっていたので、安心する。
まだ半分目がさめきっていない感じで、ぼーっとザーツァイをつついているイシンのひじを突くと、もの問いたげにこちらを見上げた。
「夕べ、何してたの。」
「何って…寝てたけど…。」
もごもごと答えるイシンはやっぱりズレている。
「そうじゃなくて、ジョンデのとこ。」
「ああ。熱がまだ高かったからスポーツドリンク飲ませて、眠れるように手を繋いで子守唄歌ってあげたんだけど、結局僕も一緒に寝ちゃったみたい。あんま覚えてないや。どうやって部屋に戻ったんだろうねぇ。」
横で聞いていたミンソクが吹き出して、タオに野菜も食べるよう説得していた隣のテーブルのウーファンが、何事かという目をしてこちらを見る。
「僕、何時ごろに部屋に戻った?」
笑いをこらえているミンソクにはまるで頓着せず、イシンが聞いてくるので、
「1時すぎぐらいだと思うよ。」
と答えたら、ああ、だから今朝も眠いんだねぇ、とまたうすらぼんやりしたことをつぶやいた。ミンソクがクツクツと笑いをこらえながら箸で付け合せの野菜をつついている。
「お前たち、30分には出るから早く食べてしまいなさい。」
マネヒョンに言われて、僕は慌てて飲みかけのジュースを飲み干した。
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忙しいスケジュールを消化し、韓国へ戻る飛行機の中でふと後ろの座席を振り返ると、イヤフォンを片方ずつわけあって耳に挿したまま、イシンとジョンデが眠り込んでいた。
「…にしてもよく寝るな。」
後方のトイレから戻ってきたウーファンが、席に身体を埋めながら半ば独り言のように言う。
イシンの胸のあたりにジョンデの頭があって、イシンはいかにも寝違えそうな向きに首を傾けてすうすうと寝息をたてている。肘掛の上に上向きに置かれたイシンの右手にジョンデの左手がのっていて、それはまるで、祈る人の手のようだった。
「平和だね。」
僕が言おうとしていた言葉を、そのままミンソクが口にした。
「うん。」
なんだか嬉しくて僕は頷く。
もう一度、座席の隙間から後ろの席の様子を伺うと、眠っているイシンの手がぴくり、と動いて、ジョンデの手を握り直した。僕も少しだけ眠っておこうと身体をずらすと、ひざ掛け毛布の下で、ミンソクの手が僕の手に重なった。
「…ミンソガ。」
「なに。」
「なんでもない。おやすみ。」
「おやすみ。」
…the end.