【SEHUN】
リビングからベランダに出るガラス戸の細くあいた隙間から、春の夜の風が吹き込んでカーテンを揺らす。吸い寄せられるように近づけば、あなたは月のない夜空を見上げて立っていた。僕がガラリと戸を引く音にも反応せずじっと空を見てるだけ。
日ごろ賑やかなあなたは、ときどきこんな風に気配を消して、1人でしんとしてることがある。そんな時は本当になんていうか、気配がなくなってしまうから、あれ、ジョンデは?なんて言って、スホヒョンが探し回ることもしばしば。見つかってみると案外近くにいたりする。
どうやってああいう風にすっかり気配を消してしんとしてられるんだかわからないけど、とにかくそうやって静かにしてるときのあなたには、ひょん、そっち行ってもいい?なんて聞いても無駄なので、黙って傍に行って、黙って背中を包み込む。
背後から、あなたの首すじに顔を埋める。暫くして、あなたは首を傾けて僕の頭に頬ずりした。なんにも言わないけど、それがあなたの合図。
首だけ捻って振り向くように僕を見上げるあなたの唇に僕の唇をあわせて、ついばむみたいに口づける。ベランダの手すりに置いたあなたの手を僕の手で覆う、あなたが緩く指を開くから、強く指を絡めて、あなたの唇を喰む。
少し苦しげな姿勢で身を捩り、僕の唇に応えるあなたの首すじに人差し指を滑らせる。唇をあわせたままでも、あなたの口角が少し持ち上がるのがわかった。そのまま緩くあいた唇に僕の舌を滑り込ませてあなたのそれに絡める。
唇は離さずあなたの肩に手をかけて、僕のほうを向かせる。抱き寄せようとあなたの腰に添えた僕の手を、後ろ手に回したあなたの手がやんわりと、でもきっぱりとほどいて、ひときわ深い交わりのあと、あなたはそっと唇を離す。
「…ダメ?」…我慢できずに聞いた僕に向って、あなたはそれは綺麗に微笑んでみせ、それからまたくるりと身を翻して、さっきと同じように暗い夜空を見上げた。月なんか見えないのに。
わざとらしく耳元でため息をつくけどあなたは動かないから、僕は仕方なくまた背中からあなたを包んで、首すじに顔を埋めた。寝室の開けた窓から、イーシンヒョンのピアノが聴こえる。あなたは手すりにかけた手の指先で軽くリズムをとっている。僕はあなたの合図を待っている。月なんか見えないベランダで。
~FIN~
※twitterでつぶやいていたものを少し整えました。レイチェン前提のフンチェン。フンチェン書くとどうしてもおてふん生殺しみたいになっちゃって少しかわいそうなんですが、でもめげない子なのです。
