治療方針について悩んでいる間にも、私にはやらなければならないことが山積みであった。

仕事以外にも、家の片づけや、衣替え、猫の食事や猫砂の大量注文などなど・・。

そして、一番重要だったのは、「遺言状」の作成である。


元夫とは離婚後の養育費等一切もらっていないし、絶縁状態。

あちらも大変らしいが、もう一切関わりを持ちたくない。

ガンになったことで、やはり一番考えるのは、娘の事。

これといった財産もないけれど、わずかな貯金や、生命保険、住んでいるマンション等、娘に残してあげられるものは、全て残してあげたい。

それには、元夫の存在が何よりも脅威であった。

親権は私がとっているし、娘にも、もう4.5年は会っていないし、連絡もない。

最後は迷惑のかけられ放題であった。

でも、私に万が一の事があれば、娘が未成年者でいるうちは親権者となってしまう。

そうすると、娘には、何も残してあげられなくなる可能性が大である。

まずは、未成年者後見人を選択する必要があり、遺言状を作成した。

本当は、公正証書として残しておこうと思ったが、色々やることがあり、身体もガン細胞のおかげで疲れやすく、時間がなかったので、直筆で書いて、署名押印して、会社に保管してもらうこととした。

この時、相談にのってもらったのが、友人であもある税理士のFくん。

その昔、付き合っていた年下のボーイフレンドの友達で、仕事も含め、色々相談にのってもらい今も付き合いが続いているから、不思議なものだ。

おまけに新事務所開所時の仕事も頂いて、感謝すべき友人。ありがとう。


あとは、各保険会社に電話をして、保健の請求書も用意しておいた。

それから数年前に家のリフォームを少しした際に、銀行で借り入れした分がいくらかあり、それは、定期を解約して、返済しておいた。


何かあっては困るけど、何かあったときに、娘や両親には、なるべく迷惑がかからないように。

そして、元夫が、介入しないように。


遺言状に、万が一、私が死亡した際の、告別式等には、元夫が参列することを拒否する事項も、付け加えた。


あとは、自分の身体の事を最優先に考えよう・・・。





U先生のセカンドオピニオンを受けてから本当に迷っていた。

放射線によるピンポイント照射、これは、乳がんの治療のガイドラインにはあてはまらない。

乳がん治療のガイドラインは、世界共通であり、切る=手術した上で、放射線プラス化学療法を行うものである。

U先生にアポイントを取る前に、ガン専門の総合病院のセカンドオピニオン外来も予約を入れていたので、とりあえず、迷っている段階でもあり、行ってみることとした。


診察前にDVD等、資料を提出していたが、呼ばれて診察室に入ると、年配の男性医師と若い女医さんがいて、

私の資料、特に画像は見てないようだとわかる。

全くの、問診と、私の質問に答えるのみである。

こんなことは、自分で調べればわかるさ位のものだった。

案の定、放射線のみでガンは治せない、そんなことは、ガイドラインにはないという回答であった。

予想していたとはいえ、かなりがっかりだった。

セカンドオピニオンの通常の料金相場は、保険対象外なので2万から3万である。

安くないけど、患者は、より多くの治療法を模索しているし、自分の治療法が確かであるか納得したい。

ここに来たことで、何の解決策にもつながらなかった・・・。


さて、もしU先生のところに行くとすると、保険対象外で費用がかかる。

生命保険についても親友Tが調べてくれた。

私の加入している保険でも調べたが、CMで毎日見る、「先進医療」については、要注意。

先進医療を受けられるのは、厚生労働省の指定の病名と指定の病院でしか該当しないのだ。

それを検索していくと、U先生の治療も先進医療には当たらず、乳がんなど、手術で切れるものは、今、注目される重粒子線治療の対象外となるのである。


私もガン保険にも加入していたが、自分がガンになってみないとわからなかった事が沢山あり、今の私の加入している保険では、上皮内がんは、保険の対象外となっていた。

つまり早期発見されるガンは、対象外。これおかしいでしょ。

保険証券の説明書きの小さな文字でしか書いていないから、ガンにならなければ確認しなかった。

私の場合は、浸潤ガンだろうということなので、保険の対象にはなるけど、今回の事で、保険についても勉強した。


保険で費用が出せないとなると、やはり難しい・・。

でも、調べれば調べるほど、やはり放射線の効果は大きいので、あきらめられない。

きっと、何年か後には、手術なしで、放射線治療がガイドラインのひとつになる時代が来ると思う。


ガン治療も、日本を支える大きなビジネスであり、そこには製薬会社、外科医、病院、保険会社など、色々と絡み合っているだろうから、ひとつのラインを外れた治療は、そう簡単には受け入れ難い社会であることも確かなんだよね・・。








セカンドオピニオンをどこで受けるか決めていなかった。

乳がん手術の件数の多さで調べて、一つ候補があった。

教授には、検査の結果をメールし、教授のお知り合いの、大学病院は紹介できると言ってもらえた。


以前、出版でお世話になった、出版社の編集者の方が、乳がんの本を担当なさっていた事を思い出し、メールをしてみたところ、すぐにお電話を頂いた。

長年、乳がん患者に携わり、乳がんの本も多く出されている。

その中でも、最新の技術を誇る、1人の放射線の先生をご紹介頂いた。

今、先生は、鹿児島にいらっしゃり、手術ではなく、放射線でがん細胞を滅亡させている。

乳がんの症例も100件以上あり、再発はないという。

月に数回、東京にいらっしゃるので、セカンドオピニオンを受けてはどうか?ということであった。

早速、連絡をして下さり、都内でお会いする事となった。

その前に、出版社のAさんが、先生の本を送って下さった。

手術先行で考えていた私は、放射線だけでガンが消滅する内容にびっくりした。

色々、症例をネットで調べても、手術プラス放射線となっており、放射線だけでガンを死滅させるのは、先生のところだけであった。


私の場合、ガンの位置と大きさから、今は、右胸全摘という方向になっている。(自分の希望でもある。)

でも、そうでない選択もあるということか・・・。


セカンドオピニオン当日、親友のTも一緒に聞いてくれた。

病院から届いた資料には、画像、PETデータ全てがDVDになっていて、先生からのご丁寧な紹介状もついていた。

それを、先に、鹿児島に送り、先生に診ていただいていたので、話は早かった。

U先生 「PET画像でも、かなりはっきり写っていますね。でも、放射線で消滅するでしょう。

     聞いていると思いますが、そのためには、鹿児島に3週間来ていただく必要があります。

     費用は、保険適用ではないので、250万くらいです。

     これまでに150件ほど、乳がんの症例があり、まだ1人も再発していません。

     考えて頂き、もしこちらにかかるようならば、連絡を下さい。

     あなたの場合、浸潤ガンでも、非浸潤に近いガンでしょう。再発は99パーセントないと思いますし、もし他の病院で抗がん剤をやるようならばよく効くと思いますよ。」

     

目からうろこのような、先生のお話を聞き、親友Tと共に、鹿児島に行こうか・・・と話しをした。

痛くない、抗がん剤もない、胸をとらなくても良い。

そして、先生は、とても素敵でかっこよかったし。


調べていくにつれ、放射線照射のガンへの有効性が確認されるようになった。

選択肢として、迷いが生じる日々となった。

2010年4月23日 色々なこと。

娘には、とりあえず、手術することは伝え、このまま放っておくと悪くなるからと説明した。

TVでも、ガンの事は毎日のように目にする昨今、きちんと説明すればわかるだろうけど、私にまだその覚悟が出来ていないし、不安にはさせたくなかった。

とりあえず、納得した様子で、ママが入院中はおばあちゃんの家に居る事とした。


母にも泣かれたけど、孫の為にも、自分が頑張らないといけないといけないと思ってくれたようだ。

本当は、私が面倒をみなければならない年なのに、申し訳ない・・・。


仕事はしばらく休まないといけないので、引継ぎと、その資料つくりを早急にしなければならなかった。

これまで、本当に休みなく、ほぼ24時間体制で働いてきた。

元来、1人でコツコツとすることが好きな私が、営業や、現場に出ての作業は、並大抵の事ではなかった。

なんで、こんなにがむしゃらに、働いてきたのだろうとも思える程・・・。

きっと、こんな事でもないと休むことなどしなかっただろう。

神様から、少しゆっくりしなさいとのお告げだろうと、そう思った。


病気について、私は怖くて、知る事も調べる事も、避けてきた。

親友のTが色々調べてくれていた。

セカンドオピニオンを取る為に、少し勉強する必要があると思った。

PCに向かい、ネットで色々と調べた。

同じ病気の方々のブログが、一番参考になり、励みにもなった。


私は、大丈夫・・と前向きに考える反面、やはり不安も大きく、自分ががん患者であることが確定したことで、少しの体調の不調に敏感になった。


娘と買い物をしていた時に、動悸と息切れで、動けなくなったこと。

台所で突然めまいがして、過呼吸になり、娘が実家の両親に電話し、救急車を呼んだこと。

死が近くにある気がしていた事も確かだった。


手術までの1ヶ月、やる事は山ほどあった。

少しずつ、とりかかるとしよう・・・。


2010年4月22日

検査の結果がわかる日。

この日も、親友のTが運転しついてきてくれた。

1人で重い気持ちを抱えながら行くのとは違い、心強かった。


待合室で、2人ともとても緊張していた。

名前を呼ばれ、Tと一緒に診察室へ。

一緒に、話を聞くことを伝え、もし結果が悪いようならば、親友Tに先に話して欲しいと伝えた。

先生 「悪い結果というのは、どの程度なのかわかりませんが・・・どうしますか?」

私  「では、一緒に聞きます。」

先生 「まず、先日、PETの時に、お電話して1週間伸ばしていただき、不安にしてしまいすみません。どうしても部分的に細胞をとっているため、診断に時間がかかりましたが、結果から言うと、悪性です。」

私  「そうですか。わかりました。」

先生 「ただ、PET検査の結果では、他に転移はありませんでした。

   専門的に言うと、T2.N0.M0 リンパへの転移も今のところ見られません。

   グレードは2Aです。

   病理の先生によれば、癌の顔つきは悪くなさそうだとのことです。

   今後の方針ですが、手術先行で行います。

   手術方法ですが、大きさが小さければ、凍結させて癌を死滅させる方法もありますが、大きさが3センチと

   かなり大きいこと、そして乳頭の上の、ど真ん中。温存でもかなりの部分を切除することになります。」

私  「先生、胸はもう要らないので、全部とって下さい。悪いものは全部、とっちゃって下さい。」

先生 「わかりました。また手術前に、方法についてはまた説明します。手術の日程ですが、一番早くて、5月の終わり。1ヶ月後ですね。それでも、うちの病院では早い方で、他の病院では、2ヶ月待ちというところがあります。

他の病院で手術をすることも可能ですが、今日、こちらの予約を取っていきますか?」

私 「はい。お願いします。」

先生 「では、5月28日が手術、その二日前に入院となります。

    また今後の治療は、組織をとって検査したときに、ホルモンレセプターが二つともプラスと出ていますので、ホルモン剤は、絶対に効きます。抗がん剤の有無は、手術の病理結果によりますので、また相談していきましょう。入院、日程の詳しい説明は、看護士がします。それから、詳しい検査の結果を差し上げます。

あと、何か聞きたい事はありますか?」   

私 「聞きたい事はないのですが、念のため、セカンドオピニオンをとりたいと考えていますが、資料の提示はしていただけますか?」

先生 「わかりました。画像データもありますので、資料は、後日、郵送でお送りする形になりますが、いいですか?また、セカンドオピニオンの結果、病院を変えるようならば、またおっしゃって下さい。」


しっかりとメモをとりながら、話を聞いてくれた親友T。

診察室を出ると、2人とも顔を合せて笑ってしまった。

あまりにも、淡々と説明をしていき、治療方針の選択をする先生に、落ち込んでいる暇もなかったねと話した。

そして、看護士さんより、色々な説明を聞き、入院する際に、個室か相部屋かの希望を聞かれた。

この病院の個室は、ホテルのようだと知っていた。

癌保険もおりるから、自分にお金を使おうと、個室にした。

タワー棟に向かい、入院の予約もした。


会計は2405円。

それから、セカンドオピニオンの為の診断書作成代が、10770円。


とにかく、転移がなかったのが幸い。前向きに考えよう。

一緒に闘うよ、とTに励まされ、心が温かくなった。


娘には、手術の事は話しても、癌である事はまだ言う事はやめよう。

中学に入学して間もないし、不安にさせたくなかったから。


父と会社に電話をし、今後の日程を話した。