■旧約聖書時代(紀元前600年頃~イエスキリストの誕生まで)

 

ダニエル書についての壮大な教理のあと,時系列で言ってしまえば,その後の「イエスキリストの誕生」という大転換点までは,特に大きな教えはエホバの証人教理の中には見られない印象です。もっとも,神話のような旧約聖書の話(ユダヤ教の世界の話)がどのように「新約聖書」(キリスト教の世界の話)につながり,融合し,そして「現代」に急に飛ぶのか,引き続き時系列で書いてみたいと思います。

 

17 イスラエル人の解放と中途半端な神殿の回復(紀元前537年以降)

 

①ダニエルとネブカドネザルに与えられた「銀の胸・腕の像」と「口に3本の骨を持つ熊」の預言のとおり,メディア・ペルシャ王国がバビロンに代わって台頭し始めた。

エホバはメディア・ペルシャの「キュロス王」を用いてイスラエル人たちをバビロンから解放することにし,紀元前539年,キュロス王の軍隊が突然にバビロンを夜襲してバビロンの当時の「ベルシャザル王」(ネブカドネザル王の子)を殺し,共同王だった「ナボニドス王」は降伏した。

その後,寛大なキュロス王は,紀元前537年にイスラエル人を解放したばかりか,「自分たちの神殿を再建する事」すら許可した。

 

②イスラエル人はもとの「約束の地」にもどり,かなり苦労したが,エホバに動かされたペルシャの別の王,「アルタクセルクセス王」の助けなどがあって,かなりの期間をかけて,「エホバの神殿」を再建した。

この当時に活躍した預言者としては,ハガイ・ゼカリヤ・エズラなどがいる。

神殿の城壁を再建するのに大きな役割を果たしたのは,預言者ネヘミヤだった。

 

③ネヘミヤは,神殿こそは再建したものの,「王」と「王国」の復活まではできなかった。

その後,イスラエル人たちは,ダニエルの予言通り現れていったメディア・ペルシャ,ギリシャ帝国の支配を受け(新約聖書がギリシャ語で書かれるようになったのはそのため),やがてローマ帝国に支配されるようになった。

この約450年間の間,イスラエル人は,「自分たちの王となる人物」,つまり「メシア」の出現を待ち望むようになった。

そうして,やがて「王」となるために,後に神によって天から派遣され地上に化肉して生まれることになるのが「ロゴス」であり,ロゴスは地上で生まれるときには「イエス」と名付けられ,成人後は,さらに「イエス・キリスト」となってゆく。(但し,イエス・キリストが「王」となった方法は,イスラエル人が長年期待しつづけたような方法ではなく,彼らの理解を超越するはるかに壮大なレベルだった。)

 

18 旧約聖書の最後(ネヘミヤ記:紀元前443年頃)からイエスキリストまでの期間

 

※旧約聖書のうち,紀元前443年頃に最後に書かれたと考えられるネヘミヤ記(そしてエズラ記・マラキ書)以降,イエスキリストの誕生まで,聖書は何も語らず,この期間についてのエホバの証人教理も当然に目立ったものはありません。もっとも,「旧約聖書が」「新約聖書」にどうつながっていくかについての,エホバの証人の教理のまとめを書いておこうと思います。

 

【旧約聖書の存在意義】
 

①旧約聖書で首尾一貫書かれているテーマは,「エホバの主権」の立証である。

エデンの園で悪魔サタン,アダムとエバに挑戦された以上,「自らが正しいことを証明する」のがエホバの至上命題であり続けた。

(そして現在もそれは変わらない。だから彼らはエホバの証人という名称を用いるし,古代の忠実な預言者も皆エホバの証人だった。)

②そして,そのエホバの主権の正しさの最大の証明方法は,エホバがエデンの園で最初に悪魔サタンに述べた,「お前(悪魔)は彼(女の胤・メシア)のかかとを砕き,彼はお前の頭を砕くだろう」という予言だった。つまり,遠い将来に,悪魔サタンが1度はメシアの命を奪うが,その後,復活したメシアが今度はサタンを完全に滅ぼし去るという予言が聖書全巻のテーマであり,この予言の成就によって,最終的な「エホバの主権の正しさ」が立証されることになっていた。

③そうしたわけで,人類には必ず「メシア」が必要となるので,「メシア」がどのように到来するかについての歴史の系譜が書かれているのが「旧約聖書」である。
そして,旧約聖書の中には,このメインテーマであるメシアの系譜についてのストーリーの他に,「エホバに忠実である人間をエホバがどのように扱うか」についての教訓が含まれていて,それは今でも適用される。
さらには,「メシアが最終的にいつ悪魔サタンを完全に滅ぼすのか」,その「定められた時がいつなのか」についての預言的な重要なヒントがちりばめられている。

④このような形で,旧約聖書は今でも神の霊感を受けた書物として全人生をかけて研究し,従わなければならない聖なる書物だし,その後の「イエスキリスト」の役割を理解するのに絶対不可欠な土台である。

⑤メシアたるイエスキリストが,「エホバの主権の正しさ」を証明する最大の手段であるが,「地上にいる不完全な人間たち」がエホバの教えに忠実であれば,それもそれでエホバの正しさを証明するので,古代の「エホバの証人」たちについての記録から教訓を得て,現代の個々のエホバの証人達もまた,不完全なりに,今の生活の中でエホバの教えに忠実に従わなければならない。

 

次回以降,イエスキリストが現れることでどのような大転換起きるのか,それが現代のわれわれにどう関係するのか,という部分の教理について書こうと思います。