1 エホバの証人の教理に関心を持つ人,その「教理」の内容を知り理解している人は,世の中に一体どれくらいいるのでしょうか。

 

私は,彼らの教理は,1つの宗教の教理としては,ある意味「見事」というべき程に体系化されており,全体や相互のつながりをよく理解すれば,とても合理的で説得力があるもの,何より「人を強く魅了するものである」と感じます。

また,66巻に分かれ約1600年もの期間に分断されながら40人の別々の人間が書いた「聖書全巻」について,これほどまでに大量な情報を隅々まで検討したうえで,これまた「見事なほど」に,統一的な解釈を貫いています。

なにより,彼らの教理の最大の特徴として,「精神世界」だけにとどまらず,なぜ「現実の世界」で聖書の教えを実践しそれを貫徹しなければならないかについて非常に力強い理論的根拠を人に与え,「現実世界で信仰の道」を歩み続けるように強い動機づけを与える教えです。

 

簡単に言えば,「彼らの信仰のプロセス」を彼らの内部的視点で理解すれば,「死に至ったとしてもエホバの証人教理は絶対に捨てない」という強烈な信仰を抱くに至るのも理解できる,人を魅了する教えであると感じます。

 

2 ところが不思議なことに,「エホバの証人の教理」について最初から最後まで統一的に説明したり紹介したりする本は存在しないように思います。

私は,大学に入って以降,特に慶應義塾大学大学院の専門職博士課程在籍中,エホバの証人について大学図書館などで相当に調べましたが,そのような「エホバの証人教理」をわかりやすく解説する本には出合いませんでした。

 

そして,これもまた不思議なことに,エホバの証人の内部においてさえも,最初から最後まで彼らの教理を1つのストーリーとして説明する本や,全ての教えが集約された「教典」のようなものは存在しないようです。

(興味深いことに,あれほどまでに信仰に篤いエホバの証人信者であっても,個々の信者に突然,「何を信じているのか,どうして信じているのか」と尋ねても,最初から最後まですぐに説明できる信者は驚くほど少ない,もしくはほとんどいないように感じます。)

 

3 「エホバの証人」という宗教団体を社会的に考えるには,「エホバの証人が何を信じているのか」を理解することが全ての大前提になるため,まずは「エホバの証人の教理」について簡単にまとめてみたいと思っています。

 

繰り返しになりますが,キリスト教系の神話や予言についての話が好きな人,都市伝説などが好きな人は,単なる読み物として読んでいただいても面白いのではないかと思っています。

 

文責 弁護士田中広太郎