あやうく見逃してしまうところでした。先週4月13日(土)の神戸新聞朝刊に「住民票,11月から旧姓併記可能 女性活躍推進の一環,就職時など便利」と題する共同通信の配信が掲載されていました。全文をそのまま以下に引用します。
「総務省は12日,住民票やマイナンバーカードの運用を見直し,11月5日から旧姓を併記できるようにすると発表した。政府が進める女性活躍推進の一環。公的に証明されることで,就職や銀行口座の開設などの際に旧姓を使用しやすくなるという。希望者は11月5日以降,居住する市区町村に届け出る。旧姓を確認できる戸籍謄本などの提出が必要。氏名とは別の欄に旧姓が表示された住民票の交付が受けられるようになる。マイナンバーカードでは,姓と名の間にかっこ書きで記載。政府は2016年に決定した「女性活躍加速のための重点方針」で,働きたい女性が不便さを感じないよう,旧姓の使用を拡大すると明記。具体策として住民票などでの旧姓併記を挙げていた。(共同)」
いや~。ようやくですね。私がブログでこの問題を取り上げたのが,4月11日(木)でしたから,グッドタイミングではありますが,たったこれだけのことを実行するのに,政府が約3年間を費やしたことにはちょっと呆れてしまいます。
しかも,神戸新聞は共同通信の配信をそのまま掲載しただけで,特に独自取材はしていないようです。他紙においても,特に大きく取り上げた報道には接していません。マスコミにはあまり興味のあるニュースではないのでしょうかね。
外国人の住民票等で通称使用を認めてきた経緯から,住民票への旧姓登録の実施は技術的・手続的に極めて簡便です。政府が本気になれば,1か月で実施可能なレベルのことに,これだけの歳月が掛かったということは,「選択的夫婦別姓制度」の導入は,もう何十年も先のことになるのではないか…と気が遠くなってしまいます。もともと「選択的夫婦別姓制度」には根強い反対があります。嫌な人は別姓を選択せず,これまでどおりで良いのだから,所詮は「他人の人生における選択」に横から介入しているに過ぎないのですが…。また,その導入のためには,婚姻による改姓を前提に維持されてきた「戸籍制度」に大きな改変を加えなければいけないという手続的・技術的なネックがあります。
ただ,婚姻により改姓を余儀なくされたパートナー(その96%は女性)も,今回の改革で旧姓使用が公的に認められ,それを証するID(身分証明書)となるマイナンバーカードやパスポートに,戸籍姓と旧姓が併記されるようになれば,社会的活躍の場(勤務先など)での自己同一性(アイデンティティ)の確保に支障が生じなくなります。
そして,このような戸籍姓と旧姓の連続性を公的に証明し,担保する制度ができることで,通称としての旧姓使用の拡大がさらに促進されることになるものと予測されます。そうすると,将来,旧姓使用の場面が今まで以上に拡大し,戸籍姓の果たす役割が減少することになって行けば,そもそも「婚姻改姓」とは何だったのか…などと,改めて問われる契機になるのではないかと思われます。