日大アメフト部の元監督は、大学内でも絶大な権力を持っています。単なる体育会系クラブの一監督だったわけではありません。日大の理事は34人いますが、常務理事は5名だけです。その中でも人事担当として人事権を掌握する常務理事であることから、理事長に次ぐ日大経営部門のナンバー2といわれています。一般企業に例えるなら、副社長あるいは専務取締役といったポジションです。

 ご存知のとおり、日大は我が国でも最大規模の学校法人であり、教職員の数は7000人を超えています。これだけ大きな組織において、人事権を握る「常務理事」という立場にあるわけですから、大学側(の職員)が、元監督の「擁護」に走るのは当然のことです。日大広報部が加害選手の指摘を無視して、元監督を「擁護」するようなコメントを連発したことも、上司に対する「忖度」としては当然のことでしょう。まさに自分たちの「生殺与奪」の権限を握っている「常務理事」をないがしろには出来ないからです。昨日の日大学長の記者会見もピリっとしませんでしたが、事情は同じです。ここでも「大人たちの都合」が渦巻いているわけです。

 話は少し脱線しますが、私が過去に、ある自治体首長の収賄事件の弁護人を務めたときのエピソードです。当初、自治体職員の供述は首長を「擁護」する方向性のものばかりで占められていました。ところが、首長が逮捕されて「辞職」を余儀なくされると、途端に手のひらを返したように、元首長に不利な供述が職員からいっぱい出てきました。警察は、取り調べの過程で懸命かつ執拗に首長本人に対して「辞職」を迫っておりましたが、それはこのような「展開」を見据えてのことだったのです。組織というものは、トップが君臨している限りは懸命に擁護しようとするけれども、いったんトップがその地位を失ってしまうと、あとは冷たいものなんだなぁ…と痛感したことを覚えています。

 そんなわけで、元監督が日大の常務理事の地位にとどまる限り、日大は組織をあげて「擁護」する姿勢を崩せないことが予測されます。逆に言うと、元監督は自分の「地位」と「名誉」を守るために、意地でも常務理事を辞さないのではないかと思われます。この際、世間体なんぞはどうでも良いのです。元監督が常務理事の職にとどまる限り、日大関係者は元監督をなんとかして「擁護」ぜざるを得ません。ただ、日大関係者でも労組などからは疑問の声があがっていますし、学生の保護者で構成される「父母の会」なども動き始めています。当のクラブに所属する現役学生たちも「反撃の狼煙」を上げようとしています。それでも常務理事を「辞めたら終わり」です。大学関係者の多くは「とっとと辞めて欲しい」と思っているでしょうけれども。

 ところで、刑事事件においては、「すでに社会的制裁を十分に受けた」として情状弁護のポイントとするため、あえて重要な職を辞させることがあります。しかし、上記のとおり、本件では、これを行うメリットとデメリットを比較すると、現段階では、職を辞さない方が断然有利だと考えられます。少なくとも弁護人からは、「辞めては駄目!」と進言されるでしょう。組織をあげて(事実関係を多少捻じ曲げてでも)、「警察・検察」と闘ってもらわなければならないのですから。もうホントに「大人たちの都合」がはびこる嫌な世界なんですよぉ。

 最悪の場合は、元監督を刑事責任から逃れさせるために、元コーチが全部「罪をかぶる」という方向性で事件を決着させようとするでしょう。実際に具体的な「指示」をしたのが元コーチであって、元監督と加害選手との直接的な「接点」が少なかったことを「逆手」に取る方法です。組長の責任を回避する手段として「若頭」が黙って全部の「罪」を背負う…嗚呼、美しきかな「任侠」の世界!! まったく反社会勢力と同じ構図ですね。

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 今回の「日大アメフト事件」の本質的な問題点は何処にあるのでしょう。私は、スポーツ界に根強くはびこる「勝利至上主義」が重要なポイントの一つだと思います。「勝星」を上げることで、実際に競技する選手たちはもとより、所属チーム、指導者(監督・コーチ)、さらにはチームを擁する学校・企業等のステータスがアップします。もちろん、スポーツ競技において勝利を目指すことは当然のことであり、全力を尽くして闘うこともまた必要なことだと思います。

 しかし、何が何でも、また、どのような手段を使ってでも、絶対に「勝利」にこだわるという「姿勢」は如何なものでしょうか。「勝利至上主義」から派生するのが、行き過ぎた指導や長時間に及ぶ過酷な練習、そして暴力や体罰の横行…といった諸々の「弊害」であることを私たちは経験的に熟知しています。

 そして、このような「勝利至上主義」に凝り固まった指導者(監督・コーチ)たちは、結局のところ、競技者である選手たちのことを考え、選手たちを尊重するためではなく、みずからの「指導力」を誇示し、指導者としての自分を「高く売る」ために行動する…というのがお定まりです。もちろん、常に競技者である選手たちのことを考え、選手たちを尊重する立派な指導者もたくさんおられます。しかし、そのような指導者は、決して「勝利至上主義」に溺れたりしません。選手を育て上げ、人間として成長させることに重きを置く指導者にとっては、「勝星」のみにこだわる理由など何処にもないからです。

 さて、「日大アメフト部」で指導者の立場にあった方々は如何でしょうか。加害選手の会見内容に信憑性があると考えれば、本当に「最低の」指導者と言わねばなりません。勝利のためには相手チームの選手を潰す(負傷させる)ことも厭わない。加害選手を練習・試合のメンバーから外したり、全日本代表選手を辞退するよう迫るなどして、極度の「焦り」の感情を植え付け、「鉄砲玉」として相手チームに「殴り込み」をかける役割を「志願」させる。そのうえで、「やれなかった…では済まないぞ」とのダメ押し。私は、太平洋戦争の「特攻隊」の隊員のことに思いを馳せました。特攻隊員は全員が「志願」して敵の艦船等に突っ込んでいます。しかし、その「志願」の実態は決して「自由意思」に基づくものとは言えません。「志願しない=命が惜しい=非国民」という恐ろしい「屁理屈」が堂々とまかり通っていたのが、あのまがまがしい「時代」なのです。しかし、この平成の世の、平和な日本においても「特攻」に志願させる「地獄のようなクラブ」が存在したわけです。

 今回の「特攻」で、加害選手が命を失ったわけではありませんし、被害選手の命まで奪ったわけでもありません。しかし、被害選手の「選手生命」を奪う可能性は十分にありましたし、みずからの「選手生命」はもはや存在し得ない状況です。そのうえ、実名も顔もさらけだしての記者会見を行いました。自身の人生において将来予想され得る、たくさんのリスクを全部その身に受ける覚悟で実行したとしか思えません。まさに二度目の「特攻」です。

 現在のところ、日本大学は、加害選手に対してまったく指導や援助の手を差し伸べていません。もはや「見殺し」状態です。そして元監督・コーチの会見は、加害選手の「告白」とは内容的に大きく乖離するもので、事実関係が大きく捻じ曲げられているとしか感じられません。太平洋戦争で部下に「特攻」を命じた上官のうち、心ある人たちは終戦の前後にみずから命を絶っています。しかし、まるで何も無かったかのように「頬かむり」をして生き延びた人々も多いと聞きます。元監督・コーチは、学生である加害選手に二度の「特攻」を余儀なくさせておきながら、「大人たちの都合」により、このまま「頬かむり」をしようとしているのでしょう。あ~、情けない!!

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 もう日本中が怒りを通り越して、呆れかえっていることでしょう。昨日の日大アメフト部の元監督・コーチの記者会見です。通常、記者会見は、世間を納得させ、過熱する報道を冷まし、社会的なバッシングを避ける目的で行われます。その意味では、今回の記者会見はまったくもって「逆効果」です。あんな不自然な説明を誰も信じるはずありませんし、誰ひとり納得させられる内容ではありませんでした。

 しかし、それでも彼らにとっては、あのような記者会見をするしかなかったのです。それは、彼らが「警察・検察」の方向しか見ていないからです。世間がどう言おうが、マスコミが如何に騒ごうが、ともかく「刑事事件」からの逃げ切りを図りたかっただけなのです。そこが彼らの「ディフェンス・ライン(防御線)」となっています。ここを守り切るためには、世間もマスコミも敵に回さざるを得ないという「切羽詰まった状況」がここにあります。

 この事件は、「やくざの出入り」とまったく同じ構造です。組長(監督)が若頭(コーチ)を通じて末端の組員(加害選手)に「あいつ(被害選手)を痛めつけて来い」と命じて、それが現に実行されたにもかかわらず、あとになって「そんなことは命じていない」と否認し、「オレの言ったことを間違って理解した」と弁解し、「オレたちは予想だにしなかった」と驚いて見せているだけのことです。まさに「大人たちの都合」による「茶番」なのです。

 そもそも「言った」「言わない」の論争は「水掛け論」になることが多く、近年流行りの「音声データ」(隠し録り)でもない限り、なかなか立証できません。ですから、傷害罪の共同正犯ないしは教唆犯として罪を問われる可能性から逃げ切るためには「知らぬ・存ぜぬ」で押し通すしか方法がないのです。選手との直接的な接触が少なかった元監督は「そんなことは言っていない」という方向性で逃げ、選手に直接指示したコーチは「そうは言ったが趣旨・意味が違う」という方向性で逃げようとしています。

 それにしても、加害者(実行犯)である選手自身が、実名も顔もさらけだして、つまりは自分にとって将来予想され得る様々なリスクをもすべて甘受する覚悟で、極めて具体的に一連の事実関係を明らかにしたことと対比するならば、色々なモノを守りたい「大人たちの都合」に基づく今回の記者会見は本当に腹立たしい限りです。

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 大相撲・初場所の4日目(2018/1/17)、横綱・白鵬は、平幕・嘉風に2場所連続で金星を進呈する結果となった。これで2敗目。白鵬にとって嘉風とは「因縁の対決」である。先場所(九州場所)では立ち合いの張り手を嘉風にかわされ、「待った」を掛けたと主張したが認められなかった。行事の軍配に物言いをつけて土俵に戻ろうとしない白鵬に、NHKの実況アナが「こんなことはみたことがない」「あってはならない」と絶叫していたことも記憶に新しい。

 この日の対戦で、やはり白鵬は「張り差し」と「カチあげ(エルボー)」については「封印」していた。懐に飛び込んできた嘉風を「のど輪」で押しとどめたが、これを外して前に出てくるとみた白鵬は「引き技」に転じたものの、逆に嘉風にはたき込まれるという結末になった。前日の北勝富士に続き「2日連続の金星配給」は白鵬にとって初の屈辱となる。

 白鵬は、初場所初日の稽古の際に右足親指を痛めたが、これに加え嘉風との対戦で左足親指も負傷した。これにより残念ながら初場所5日目(1/18)からの休場が決まってしまった。白鵬が「張り差し」と「カチあげ」を封印したら「勝率」がかなり下がるだろうと予測して、この「あぶないシリーズ」を立ち上げたのだが、ここまでの「惨状」を招くことは想定外であった。今場所の「白鵬ウォッチ」はこれまで。早くも「千穐楽」となってしまった。

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 大相撲・初場所の3日目、横綱・白鵬は東前頭筆頭の北勝富士に痛い1敗を喫した。4場所連続で金星を獲得している北勝富士の方を褒めるべきかもしれないが、白鵬には少なからず立ち合いに「迷い」が感じられた。軍配が返り「待ったなし」の声が掛かって、北勝富士が両手をつき仕切りの態勢が整っているのに、白鵬は片手をついた状態で北勝富士の「つっかけ」を招いてしまう。

 やはり、立ち合いでの「張り差し」と「かち上げ」を封印した影響は大きいのであろうか。TVの生中継の解説者から、立ち合いの直前に「白鵬の『かち上げ』は、(正しい技ではなく)『ヒジ打ち』になっている点が問題で、その点を間違えてはいけない」という趣旨の説明があった。池坊議長が声高におっしゃる「ルールなんだから許されるべき」という「援護射撃」に対するアンチ・テーゼなんだろう…と、私には感じられた。

 いずれにせよ「大記録」を打ち立てた大横綱・白鵬である。今後も大横綱として相撲界に君臨し続けたいのであれば、姑息な(この言葉は「卑怯な」という意味ではなく「一時しのぎの」というのが正しい意味である)手段で目先の勝利にこだわるのではなく、正々堂々と「横綱相撲の真骨頂」を見せてもらいたいと思う。

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