3月1日(木)
Law Firm Tour: Goodsill Anderson Quinn & Stifel LLP
1.概要3月1日、ホノルル市内にあるGoodsill法律事務所を見学した。事務所の紹介及び案内を担当したのはアラン藤本弁護士と沖真平弁護士である。Goodsill法律事務所は1878年に創立した、ハワイ州で活動する弁護士5318人中63人の弁護士が在籍する比較的規模の大きい法律事務所であり、ハワイ州の政府や行政機関、企業、投資家などの依頼だけでなく、日本の企業からの依頼を受けている。事務所には藤本弁護士、沖弁護士を含め日本人弁護士が多数在籍しており、日本語の細かなニュアンスや文化を理解していることが大きな強みとなっている。

(Goodsill法律事務所のエントランスでの記念撮影)
日本のような単一国家ではなく、連邦制をとっているアメリカでは州ごとに法律が異なるため、司法試験をその州ごとに行う。そのため、ハワイ州で弁護士資格を取得したとしても、その資格はハワイ州でしか効果を持たず、その他の州で弁護士として働く事はできない。しかし州を跨いで訴訟を起こすような場合など、複数の州法を知っていなければならない場合もあるため、アメリカの弁護士には多くの知識が求められる。そのため勉強の時間も必要だが、仕事時間も多忙で、Goodsillでは年間1800時間の請求ノルマ(クライアントに対する時間請求ノルマ)がある。年間1800時間を達成するためには実際には更に長い時間働かなくてはいけないため、夜中まで働くことも少なくないという。
3.疑問点
アメリカの弁護士費用は時間制(タイムチャージ)もしくは成功報酬によって決められるが、アメリカの弁護士の成功報酬の相場は33%~50%と、日本の弁護士報酬の相場と比べて極めて高額である。それでは依頼者のメリットが減ってしまい訴訟控えをしてしまうのではないか、と疑問に思った。後でわかったことだが、アメリカでは裁判で認められた請求額の最大50%が弁護士の報酬となる反面、敗訴になった場合は着手金等の報酬を一切支払わないという、いわゆる完全成功報酬制で契約が結ばれることが多い。勝訴した場合のメリットが少ない反面、敗訴した場合のデメリットも軽減されるため、経済的にゆとりのない人でも訴訟に踏み切ることが出来るのである。勝訴しなければ一銭の報酬も受け取れないという制度は、アメリカの実力主義の精神の体現ともいえるだろう。

アメリカで弁護士として働く難しさがわかった。しかし弁護士の年収は相応に高く(Goodsillではアソシエイトの初任給で$88,000)、訴訟大国といわれるアメリカにおいて求められる人材であるため、やりがいも大きいと思う。日本人でもLLM(Master of Laws)等を活用することによりアメリカで弁護士の資格を取ることは可能なため、将来の選択肢の一つとして検討したいと思った。
(文責:法科大学院1年次・仲座誠)