法令の効力(属地主義と属人主義) | 法令・文書担当のブログ

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これまで国や地方公共団体で、法令の審査・立案を担当した経験を基に、地方公共団体における条例審査・立案担当者の参考となる情報を掲載していきます。
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よろしくお願いします。

最近、ニュースばっかり取り上げて、法令に関することを書かなかったので、今日は、法令に関するものを取り上げます。

 

具体的には、「法令の効力」についてです。

 

属地主義とは

 

法令の効力は、どのような範囲で及ぶのでしょうか?

 

まず基本は、「属地主義」と呼ばれるもので、法律であれば国内、条例であればその自治体内にある人やもの全てに当該地域の法令が適用されるというものです(もちろん、条文の中に例外等を定めた場合は別です)。

 

国の法律は正に主権の及ぶ範囲に適用されるということで、領土・領海・領空の全てが対象になっているのは当然だと思います。一方、条例が属地主義を採用していることの条文上の明確な根拠(=いちいちそれぞれの条文で規定しなくても、自治体内の全ての人やものに適用される根拠)はありませんが、最高裁の判例(昭和29年11月24日)で「原則としてその効力は当然属地的に生ずるものと解すべきである」とされています

 

(罰則とかは、こういう効力が大切なのに、そこを解釈に任せるのは、罪刑法定主義としてどうなんだろうとか思いますよね・・・。結構、法令の審査担当の人とか、罰則付きの法律・条例では、構成要件が曖昧とか細かいこと言うけど、一番曖昧なのは刑法だよね、といつも思っています。刑法とは、あれだけ曖昧な条文で、よくやっているなぁと思いませんか?そのくせ、最近できた、「電磁的記録」とかの定義はなんとなく細かいですよね。まぁ、話が脱線していますが・・・)

 

 

属人主義

 

この「属地主義」と対比される概念として「属人主義」があります。

 

これは、人に着目した法令の効力の判断であり、国であれば日本国籍を有する者、自治体であればその住民を対象とするという考え方です。

 

職員の服務に関するような規定については、当然属人主義が採用されます。A県の出先のような形で、たとえば東京や海外に職員が配置されているところがあるかと思いますが、そういう場合でもA県の職員であれば、当然にA県の服務に関する条例に従う必要があります。もっと簡単な例では、県外出張なども、当然県外になるとA県の職員としての守るべき条例の適用が除外されることはないということです。

 

「属人主義」については、このように服務や施設(A県が有する県外の施設についても、広い意味でも属人主義のようなイメージですね)について設置される例が多いですが、より積極的に属人主義を採用している例としてあるのが、刑法です。

 

刑法をちょっと見てみましょう。

 

刑法(各号省略)(国民の国外犯)
第三条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。

(国民以外の者の国外犯)
第三条の二 この法律は、日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した日本国民以外の者に適用する。
 

(条約による国外犯)

第四条の二 第二条から前条までに規定するもののほか、この法律は、日本国外において、第二編の罪であって条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされているものを犯したすべての者に適用する。

 

刑法第3条では「この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。」とし、日本国民であれば海外で犯しても日本国刑法の適用を受ける犯罪を列挙しています。

 

また、第3条の2では「この法律は、日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した日本国民以外の者に適用する。」とし、日本人が海外で被害者になった際の加害者に対して日本国刑法を適用することを定めています。

 

なお、前者(日本人が加害者)を「積極的属人主義」、後者(日本人が被害者)を「消極的属人主義」といいます。

 

さらに、刑法第4条の2では、属地主義・属人主義とは異なる概念として「世界主義」が採用されています。これは、条約で犯罪とされているものであれば、「国外で日本人以外が犯した犯罪も、日本で処罰する」という考え方です。直接日本や日本人への法益侵害がなくても、本来どこでも処罰されるべきものについては、処罰するという考え方が採用されています。

 

 

次回の予告

簡単に、法令の効力について説明しましたが、次回(以降)、この効力が特に条例の規定にどういう影響を及ぼすか考えてみます。