制限行為能力者の制度の本質的な理解のために
上の表について説明します。
制限行為能力者の制度の理解のカギは、保佐人と補助人という不思議な存在が何者かを知るところにあります。
この保佐人と補助人いう存在に、不思議さを感じる必要があります。
単に、成年後見人と保佐人と補助人の違いを覚えてもいいのですが、理解を伴わない暗記は、苦痛を伴うばかりでなく、効率も悪く、応用も効きません。
制限行為能力者の制度は、なぜややこしいのか?
それは、行政書士試験用のテキストが、制限行為能力者の制度について、大事な情報を欠落させたまま説明しているからです。
まず、制限行為能力者の制度の基本であるはずの「代理権」から見ていきましょう。
上の表の赤字の「代理権」の欄を見てください。
859条は、「後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する」とあります。
「代表する」というのは「代理する」というのと言葉は違いますが、実質的には同じことですね。
つまり859条は、成年後見人には「代理権があるよ」と言っているのです。
続いて876条の4-1、876条の9-1を書き出しておきました。
これを読んで、どういうことだ?と疑問を持たれた方は、私と同じ感性を持っておられると思います。
876条の4-1は、「保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる」としていますね。
これは逆から考えると、保佐人には、基本的に代理権はない!ということです。
つまり、保佐人は、代理人ではなかったのです。
同様に、876条9-1は、「補助人に代理権を付与する旨の審判をすることがきる」としてあって、
補助人も代理人ではないことが分かります。
未成年の親権者は代理人!成年後見人は代理人!
だからこの人たちが、未成年者や成年被後見人に代わって、ものごとを判断したり、取り消したり、追認したりするのはわかりますよね。
ただ、成年後見人に同意権がないのは、同意が無意味だからです。
ここまでは、まったく、謎もなにもない。
理解するのも、まったく簡単です。
しかし、保佐人と補助人は、何者でしょうか?
代理人でもないくせに、まるで代理人であるかのような顔をして、成年後見人の次に登場してくるわけです。
平成11年の改正前の民法では、保佐人には、追認権も取消権もなかったということです。
追認権は判例・学説で認められていたものの、取消権は明文の規定がなかったことから、保佐人にはその権能がなかったということです。
平成11年の改正というと、禁治産・準禁治産制度が、成年後見制度に生まれ変わった改正です。
つまり、この改正のときに、保佐人というものが生き残ったわけです。
(この部分は、すべて、あるテキストの受け売りです)
しかし、保佐人を、改正法のもとでどう位置付けるかという問題が起きた!
と、私は推測します。
法が改正された以上、保佐人の役割も、当然、生まれ変わらなくてはならなかった。
そこで、改正後は、保佐人を「同意をすることができる者」(表の120条④)としたわけです。
上に述べた部分が、行政書士試験用のテキストが、欠落させている、大事な情報の部分です。
つまり、保佐人と補助人は、「同意をすることができる者」という存在だったわけです。
13条1項「被保佐人が次に掲げる行為をするには、保佐人の同意を得なければならない。・・・」
17条1項「・・・被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。・・・」
「同意をすることができる者」!
平成11年改正で生まれたこの不思議な概念を理解しなければ、成年後見人制度は理解できません。
いや、この不思議な概念の存在を知っていれば、制限行為能力者制度は、簡単に理解できるのです。
「同意をすることができる者」は、
同時に、取消権を持ちます。
120条1項
「行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若
しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。」
上の条文の、「承継人若しくは」に続く、「同意をすることができる者」という部分に注目してください。
この120条のこの部分が、保佐人と補助人のことなのです。
うっかりすると、たぶん気づかずに読み飛ばしてしまうようなところに、制限行為能力者の制度の最大のキーワードが置かれていました。
さて、「同意をすることができる者」は、
追認権も持ちます。(20条4項、124条3項)
しかし、代理人ではないから、代理権を与えるときは、その旨の審判が必要になるわけです。
これで、成年後見人と保佐人・補助人の本質的な違いが理解できたと思います。
そして、ここまでくれば、制限行為能力者の制度については、努力しなくても一生忘れない理解に達したと思います。
