しばらく間があいてしまいました。

 

その間に世の中は様変わりしてしまいましたね・・

早く「当たり前の日常」に戻ることを祈るばかりです。

 

 

さて、空いてしまったその間にハーグ条約を取り巻く状況

も大きく変化しておりますので今回は少しその点についてご紹介したいと思います。

 

初めに今回のトピックスはこちら↓

 

1、ハーグ条約実施から6年

2、子の返還拒否できる場合

3、どのように考えるか

4、裁判所の傾向

 

 

1、ハーグ条約実施から6年

ハーグ条約が日本でも実施されるようになって、6年が経ちました。ハーグ条約実施法に基づいて裁判所に子の返還を申し立てる、いわゆるハーグ案件について多くの判例が、集積されてきました。

裁判になった事案の中で、争点として最も多いのは、やはり子供の返還拒否事由が認められるかどうかです。

 

2、子の返還拒否できる場合

わかりやすくするために、アメリカ人の夫と共にアメリカに住んでいた日本人女性が、夫の承諾をえずに子供と共に日本に帰国してしまい、夫からの返還要求に応じない場合を想定して下さい。

 

夫は妻に対して日本の家庭裁判所に子の返還の申立をしますが、妻が子の返還を拒否しうる場合として、

 

(1)子を連れ去るにあたって、夫は同意していた。

(2)夫の返還申立は連れ去りから1年を経過しており、今や子は新たな環境に適応している。

(3)子を米国に返還すると、子が父親から暴力を受けたりして重大な危険に遭うおそれがある。

(4)子自身が返還されることを拒んでいる。

 

等の事由があると、夫の返還申立を却下されることになります。

 

これまでのハーグ案件に関する判例のほとんどは、返還拒否事由があるか否か、

 

例えば、

(4)の子供自身が、父親の居るアメリカ(ハーグ条約では、この場合のアメリカ国を「常居所地国」といいます)に帰国することを拒絶する意思を示している場合に、返還拒否事由として認められるかが問題になります。

 

3、どのように考えるか

その場合、次の二つの観点から検討されます。

 

ⅰ)ひとつは、子が自分の意見を述べるに十分な年齢や成熟度に達しているかどうか。

ⅱ)子は常居所地国への帰国に拒否しているのではなく、あくまでも母親と日本で一緒に住み続けることを望んでおり、単にそれができなくなるとの不安を述べているにすぎないのではないか。

 

ⅰ)につきましては、子の意見を考慮することが適当とされる年齢や成熟度には個人差があって、一概には言えませんが、10歳未満の子についてはその意見が考慮されることは少く、10歳以上の子については、考慮される例が多いようです。

 

ⅱ)につきましては、子は父と母とのどちらと一緒に暮らしたいのかという問題と混同したりする上に、母親の影響や働きかけ(プレッシャー)を受けて、自分の意思を正しく表明できないこと等が考えられます。

そのために常居所地国への返還を拒否する意見表明とは評価されず、(4)に該当しないとして、返還拒否事由が認められないことになるのです。

 

4、裁判所の傾向

尚、近時、大阪高裁で子の利益を確保するために、子の意思を尊重するという観点を強調して、「子が返還を拒み、かつその意見を考慮に入れることが適当である年齢及び成熟度に達している」と認定した上で、返還拒否事由があると認めた決定が下されたことを御紹介しておきます(大阪高裁平成28年8月29日決定)。