何冊か本を読んだのだが

この本『彼女は頭が悪いから』(姫野カオルコ)は

読み終えた後、何とも言えず後味が悪かった。

 

何も事前情報がないまま

表紙の絵に惹かれて読み始めた本。

Wikipediaによると

2016年に起きた東大生による集団強制わいせつ・暴行事件に着想をえた作品。

出版は2018年で

個人的には息子の大学受験の年だ。

 

 

 

 

若い頃、ロンドンのギルドホールでこの絵を見た。

暗い絵画が続く中、少しほっとして

ゆっくりと観た記憶がある。

『Woodman's daughter』がタイトル。

この二人の身なりから、なんとなく置かれた立場が推測できる。

 

この絵を描いたのは、ジョン・エヴァレット・ミレイ。

かの有名なハムレットの恋人『オフィーリア』を描いた画家で

テートギャラリーでその名を知り

ギルドホールまで足を伸ばした。

 

『オフィーリア』と同じように、この絵の女の子も

最後には精神を病み自ら死を選択してしまう、

ということを後から知ってショックを受けた。

 

だからこの本を手に取ったとき

エンディングが見えていて

それを前提に読み進めていたので

被害者の女子大生が

死を選んでいないことに心からほっとした。

 

悪逆無道極まりないストーリー・事件。

 

ただ彼らを罵倒し非難しながらも

小さいけれどくすぶっている黒い部分が

私の内にはあった。

 

誰かを見下したり蔑んだりする気持ちが

否定しようとも私の中にも存在する。

 

あからさまに態度に出したり

もちろん口に出したりはしないが

優劣や偏見で人やものを判断してしまうことが確実にある。

残念ながら。

 

 

だから読後私に何かを言う資格があるのか、

と自分を含めとても厭な気分になった。

 

東大生たちがやった物理的な行為に対して非難はできても

彼らの考え方を徹底的に非難できる資格はない。

非常に考えさせられる本だった。

 

そして今再びこの絵を観る。

この少女の笑顔がとても悲しい。

 

優劣、貧富、格差・・・

多様性の時代と言われながら

多種多様の人々がお互いを尊重し合い

共存していくのはまだまだ先のように思われる。

 

現在大学生の息子にぜひとも読ませたい作品。

そして何を思ったか感じたか、訊いてみたい。

話してみたい。

 

 

自戒を込めて。

 

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