7月1日に東京都墨田区の「すみだトリフォニーホール」で開催された
岩崎宏美&岩崎良美 meets 新日本フィルハーモニー交響楽団
の公演に行って参りました。
お二人の共演コンサートは滅多になく、2008年に開催された「プレシャス・ナイト」くらいでしょうか。
良美さんが岩崎さんコンサートのゲストに来て数曲歌ったり、岩崎さんが体調不良の時に代役をこなしたりはあったようですが。
「プレシャス・ナイト」の時は音楽から離れていて、開催は数年過ぎてから知りました。
行きたかった!と思っても当面開催されそうにありません。
「プレシャス・ナイト」はブルーレイが発売されておおよそのふんいきはつかめましたが画質があまりよくなくて、その面でも心残りでした。
近年のお二人の活動の様子から見ても、もう再共演コンサートは無理でしょうね、と半ばあきらめていました。
が、良美さんが岩崎さんの事務所に移ったこともあり、今年から二人での活動を増やしていきたいと話しているとアメブロやSNSで見かけました。
一方私はこのところ旅にお金をつぎ込んで、音楽に割く時間もお金も絞っていたので、ぼんやりと読み過ごしていました。
7月1日にすみだトリフォニーホールで共演コンサートがあるらしいと気づいても、もう売り切れでしょうと思うのみでした。
地方公演(宝くじまちの音楽会)もいくつか案内されていましたが安価ゆえか全て売り切れ。
駄目もとでトリフォニーホールのHPを見てみたらわずかに残席があるではありませんか。
もちろん3階の最後列近くですが、生で聴けるだけで十分と、即申し込みました。
16時開演も年寄りに優しく、嬉しいポイントです。
蒸し暑い日が続くようになったこともあり、前の夜は寝付くまで時間がかかりました。
当日は朝雨が降っていて雨靴を用意しましたが、出かける頃には止み、薄日で蒸し暑くなる中会場へ向かいました。
前半は通常の岩崎さんバンドチームで演奏、後半は新日本フィルハーモニー交響楽団が演奏する本格的コンサートで、指揮は「プレシャス・ナイト」と同じく藤野浩一さんです。
チケットの半券と引き換えにいただいたパンフレットには演奏曲目が掲載されています。
これを見て、ネタバレがどうこうと神経をとがらせるのはポピュラー音楽の流儀だと、改めて気づきました。
クラシックのコンサートでは演奏曲目を明記した上でチケットを売る形式がほとんどです。
この後に予定されている地方公演でオーケストラ演奏はなく、セットリストは変更されるでしょうが、念のため具体的な曲名は定番曲など最小限にとどめましょう。地方公演鑑賞のご予定のある方は以下読み飛ばしてください。
オープニングは中島みゆきさんの曲。アメブロの縁で紹介していただいた曲ですが、生で聴くと新鮮です。
続いて大滝詠一さんの曲。久しぶりにしっかりしたハーモニーの歌を聴いた思いです。
ここで挨拶とお話。子供の頃は学校に通うのに錦糸町から新宿まで国電を使っていたといいます。朝は駅まで母が送ってくれて、帰りは駅から都電。ある日買い食いしすぎて都電の15円がなくなってしまい交番で借りたそう。岩崎さんが幼少の頃は都電の時代でしたが、良美さんが入学する頃に地下鉄東西線ができたので、良美さんは地下鉄を使っていたのではないかと何となく想像していただけに意外でした。良美さんは今でも路線バスをよく使うそうです。220円と聞いた岩崎さんは大げさに驚いていました。
良美さんも前夜はよく眠れなかったとお話されていて、少し安心しました。
続いて北山修さん・加藤和彦さんの作品。オリジナルはハワイ出身のデュオ、日本語ネイティブの発音ではありません。その後たくさんのカバーが出ましたがほとんどがソロ歌唱でどこか物足りないと感じていただけに、美しい日本語が使われているこの曲はお二人の持ち歌にしてもいいくらいです。私にとっても思い出深い曲で、幾度か目頭を押さえました。
次は良美さんが有名なフレンチポップを歌い、1部最後は岩崎さんのヒットメドレー。いつものソロライブとは選曲を若干変えてきました。冒頭は「あれっ、それから始めるの?」と意表をつく曲。「ロマンス」では常連のお客さんたちの「ヒロミちゃんヒロミちゃん」の掛け声が復活していました。また感染が増加傾向ということで少し心配にもなりました。
意表をつく曲はもうひとつ、公共放送局で長年放送を続けている番組のテーマ曲。普段は演奏だけ流れていますが、1980年代末ごろ歌詞がつけられて岩崎さんがそれを歌ったという話は聞いています。数日前公式動画サイトでたまたま聴いて、歌入りを聞くのは初めて!と感心していました。ご本人の生の歌声で、本当だったと改めて認識できました。
メドレーの最後はパンフレットに掲載されていない、お客さん大盛り上がりのあの曲。岩崎さんはメドレーを始める前にお客さんに説明して振り付けの練習までやらせていました。「ロマンス」や「シンデレラ・ハネムーン」でさえ1コーラス+リフレインで済ませていたのに、この曲は堂々のフルコーラス披露。久しぶりに楽しめました。
私事になりますが、地方に出かけた際ストリートピアノを見かけるといつもこの曲のメロディーを片手弾きしています。通りかかる人は誰も知らないでしょうから、たどたどしく弾いてもバレないという理屈です。
休憩中新日本フィルハーモニー交響楽団のメンバーと交替して第2部スタート。
最初は尾崎亜美さんの曲。
続いてスリー・ディグリーズがヒットさせた「天使のささやき」。日本語版で歌っていました。
「水色の朝」から始まる歌詞を聴いて、松田聖子さんのアルバム「パイナップル」(1982年)に収録されている「水色の朝」(作詞:松本隆、作曲:財津和夫)はここからヒントを得て作られたのではないかとひらめきました。
次は再び「良美のフレンチポップスコーナー」。
「シェルブールの雨傘」がとりわけよかったです。終演後歩いていても思い出して涙ぐむほどでした。年を取るとノスタルジックなメロディーが染みてきます。
おなじみの「タッチ」ももちろん披露しましたが、この曲のサビ前
♪あと何回過ぎたら二人はふれあうの~
のメロディーを耳にするたび、「檸檬」(作曲:鈴木キサブロー)のサビ前
♪人の裏の気持ちをあなたは知らない~
を連想してしまう私の発想に同意してくださる方はいらっしゃるでしょうか。
岩崎さんの新曲に続いてお待ちかねの「思秋期」。最近の演奏にしては珍しくオリジナル版に近いテンポでサクサクと進みました。せっかくのオーケストラ演奏ですから(岩崎さんは「オーケストラで歌えるのはご褒美のようなもの」とお話されていました)、間奏で萩田さんアレンジバージョンの進行を織り込んでみても面白かったかもしれません。
楽しい時間はあっという間に終わりを迎えます。年を取るとなおさら。
アンコールはいずみたくさん作曲の名作。坂本九さんが天で一緒に歌っているように思えてきました。
私はアンコールの最初に「二重唱(デュエット)」を二人で披露するのではないかと読んでいました。良美さんもカバーしましたし、二人で歌えば文字通りの二重唱になり、原点に戻るという意味でもアンコールにふさわしいと思いましたが、それはあいにく叶いませんでした。
すばらしいコンサートでしたし、15年も過ぎてからリベンジを果たせるとは思ってもいませんでしたが、欲を言えば良美さんのヒット曲をもう少し聴きたかったです。尾崎亜美さんならばあっちの曲のほうがはるかに好きですし、桑田佳祐さんが絶賛していたあの曲あたりも披露してくれたら満点でした。
当日の夜SNSを見たら普段タイムラインによく現れる音楽ライターの方や、若い世代に昭和歌謡ポップスを広める活動をなされている方もいらしていた様子。「プレシャス・ナイト」の時よりも開催が効率的に周知されて、情報を必要とする人に行き届いているようにも思えました。