お客様企業のベストスコア更新に寄り添う「経営キャディ」の猪子です。
現在私が所属している中小企業家同友会では、もっぱら「地域」という言葉がキーワードになっています。
そこで、今日は「地域と中小企業」というテーマで、オススメ本をレビューします。
紹介するのは、『驚愕!竹島水族館ドタバタ復活記~』著 小林龍二(竹島水族館館長)です。
この本は、愛知県蒲郡市の竹島水族館の復活劇を描いています。
本をレビューする前に、
「え、この分類おかしくない!?」
そんな場面に出くわすことがあります。
同級生の披露宴で指定された座席が自分だけ親族席、だったり。
レンタルビデオ屋で『タイタニック』が「パニック映画」のコーナーにあったり。
ちょっとバツが悪かったり、クスッと笑えたりするそんな場面をひそかにコレクションしていたりします。
さて、ご紹介する本は、ジュンク堂書店さんの分類ですと「理工:水棲哺乳類」の書棚に陳列されているようでしたが、
こちらは紛うことなきビジネス書であり、小分類においては中小企業の経営戦略論だと断言できます。
中小企業の経営者であれば一読する価値がある良書です。
本との出会いは先月4月下旬した。
その日は妻の地元である蒲郡市に里帰りし、温泉処の西浦町は「温泉喫茶si no no me」を散歩がてら訪れました。
足湯につかれたり、ブックカフェになっていたりと、長居できるいい感じのお店でした。
お店の本棚で偶然この本を手に取り「なるほどこれは面白い」、と半分ほど一気読みした後、名古屋へ帰ってからジュンク堂で購入。
概要メモ
・年間入館者数12万5千人で閑散日のアシカショーはお客さん1人
→47万人への超V字成長
・リソース(ヒトモノカネ)の無い企業ならではの工夫
→コストカットと新規設備投資(海洋生物と触れ合える「さわりんぷーる」の導入)
・顧客研究により低コストで実現する差別化
→誰も読まない学術解説からちょっと笑える手書きの解説看板(この魚食べたら美味いか、も含む。)へ
・「キモチワルイもの見たさ」というニーズ把握と「失敗を魅せる」というショーマンシップ
→タカアシガニやグソクムシやウツボへ当てるスポットライト、そして「何もできない」カピバラショー
・地元企業とコラボした商品開発
→菓子屋さん、包装材屋さん、、デザイン会社との共同開発し、
リアルな海洋生物パッケージの「グソクムシ煎餅」や「ウツボサブレ」、カピバラのお尻からチョコがでてくる「カピバラの落とし物」など。
・地元企業や金融機関、自治体や学生まで巻き込んだ地元イベントの開催
→がまごおり深海魚まつりにて地元にたくさんの笑顔をつくる
どれも創意工夫に富んでいて、仲間と協力して社会に提供する価値や楽しみや笑顔を増やしていく取り組みは痛快であり心を打ちます。
そして、自分のビジネスにも転用できないだろうか、と考えさせられます。
最後に、私に一番刺さった一節を引用します。
「ボクたちは魚が好きで好きでたまらない半魚人です。水族館に勤めるのが夢で、水族館の勉強、水族館に勤めるための勉強、魚の勉強などを必死にしてきた人間です。(~中略~)自分が気づかないうちに「型」ができてしまいます。(~中略~)客観的に見ると、それは井の中の蛙なのかもしれません。世界はもっと広く、もっと大きな視野でモノゴトを見るとおかしなことにも気づくのです。(~中略~)当然の感覚(先入観)で毎日仕事をすると間違う恐れがあり、そうならないためには「お客さんの常識、お客さんの当たり前」を考えて仕事をすることが大切な要素になるのではないか(~以下略~)」 本書 90頁~91頁
余談ですが、竹島水族館へは過去訪れたことがあるものの、本書を読んだ後での再訪はまた違った楽しみ方ができるでしょう。
さらに、ボロボロだった建物が令和6年4月にリニューアルオープンされたとのことで、建立された「グソクムシ御殿」を拝みに行ける日が待ち遠しいです。