平らな道に成るように | ✧︎*。いよいよ快い佳い✧︎*。

✧︎*。いよいよ快い佳い✧︎*。

主人公から見ても、悪人から見ても、脇役から見ても全方位よい回文世界を目指すお話


激しい嵐のなかで雷が落ち
竜巻が何日も居座って

命からがら生き延びて目を開けると
そこには何も無くなっていた


大切な全てが跡形もなく



心は楽になりたいと願うのに
懸命に傷だらけの身体を
何とか奮い立せようとする



呆然と立ち尽くす耳元で
誰かが囁くから



「諦めてはいけないよ」






希望を探して歩いても
足を取られる砂漠だけ

ここでどうやってやり直せと
神は言うのだろう
恨みをこぼしそうになる口を閉じて
一度だけ涙を流した


独りぼっちになった耳元で
誰かが囁くんだ


「諦めてはいけないよ」




栄養のない土を耕して雨を待ち
太陽の恵みを信じて
渇きを堪え
空腹に耐え
ようやく芽を出した命に感謝した


忘れていた笑顔を
ぎこちなく浮かべた耳元で
誰かが囁くんだ


「諦めてはいけないよ」





それでも何度も
奪われて 枯れ果てて
悲しみを繰り返す

一体何のために生かされたのか
罰を与えられたのか

でも、やめられなかった



「諦めてはいけないよ」



囁く声に怒りが湧く


もう諦めていいって言ってよ
よく頑張ったって褒めてよ



それでも誰かは同じ言葉を囁く



「諦めてはいけないよ」





目の前に光が
トンネルの出口が見えた


だけど、進むのが恐い


もしも幻であったら
二度と歩けない気がした

一瞬だけの光ほど
失ったときの喪失感は大きい


また次の暗闇に入り込んだら


今度こそ根を上げてしまう



それでも進むしかなかった



囁く声に重ねて己を叱咤した



「諦めてはいけないよ」






誰もいない寂しさに囚われて
生きることを諦めてはいけないよ


根こそぎ奪われた苦しみに呑まれて
幸福を諦めてはいけないよ


信じることを諦めてはいけないよ







平らな道に成るように







平らな道に成るように




 


平らな道に成るように








蘇れ 誇り

蘇れ 愛

蘇れ 心






号令がかかった



「諦めなかった君を讃えたい」



溢れんばかりの拍手とともに





耐え難きを耐えた

君が繋いだこの地に命が巡っているよ



忍び難きを忍んだ

君が開いたこの先に
新しい未来が待っているよ




ありがとう
ありがとう




顔を上げて胸を張れ



平らな道には
君の軌跡が実りをもたらして

こんなにも輝いている



和やかに
暖かく
尊く



平らな道に成るように