私が、心から尊敬している歌手はそれこそ沢山いらっしゃって、お一人ずつ上げていったらエンドレスになってしまいますけど、中でも マリア・カラスは特別な存在です。(ちなみに、私の中の本当の一番は、迷いなく、メゾ・ソプラノのジュリエッタ・シミオナート)シミオナートを知ったのも、カラスを聴いていて、共演者だったシミオナートの声に惹かれていった、という経緯からだったし。
マリア・カラス。 このお名前はクラシック音楽に馴染みのない一般の人にも広く知られている(知られていた、になりつつあるけど)。。。何も知らない私の両親でも知っていたくらいだから凄い(亡くなられた時には日本でも大きく報道されたと聞いています) ギリシャ系移民の子としてニューヨークに生まれ、後ギリシャに渡って研鑽をつみ、イタリアでデビュー。アクロバティックな聴かせどころの多い、超高音・技術を要求されるコロラトゥーラから、重く力強いドラマチックな要素の多いリリコ・スピント、ドラマティコの役まで(ソプラノにもいろんな声の種類があります)こなし、並はずれた優れた歌唱でセンセーショナルを巻き起こしました。 「20世紀最大の歌手」とも称されています。
彼女の声を初めて聞いたのは、中学生の時でした。当時ピアノに夢中で、FMなどのラジオ番組を録音して聴く、というのにハマっていた時のこと。いつもはピアノしか興味が無く、他のジャンルの演奏は飛ばしていたのですが、たまたま聴きたかった演奏の前にオペラアリアが入っていて。。。「カルメン」のハバネラ(恋は野の鳥)でした。部活で合唱部に入っていたので、歌は好きな方でした。でも、初めて聴いたその声はどこか暗く「綺麗」ではないのだけど、独特の響きで、耳がそば立ったというか、途中からゾクゾクしてきて。(今思えば”鳥肌”) なんだろ~これ 曲名と演奏者をしっかりチェック、マリア・カラスという有名はオペラ歌手の演奏だと初めて知りました。
言ってみれば、カラスの演奏が私を音楽の道に連れて来てくれた、と言えますし、大学に入学してからは通学途中は必ずカラスのCDを聴きながら、でしたし、図書館でもいつも聴いていました。それこそ片っ端から、彼女が歌っているもの、映っているもの、書かれているもの、関係しているもの、殆ど全部チェックしました。(図書館って良いですよね~) 今だってそんなに上達していないイタリア語。。。当時は、一生懸命歌詞・対訳カードにかじりついて、必死に目で追いながら、歌唱の意味を追いながらの鑑賞でした。 でも、聴いているうちに 歌詞と声に込められている心理描写がもの凄くて。。。容赦なく聴き手に迫って来るものがある。。。 カラスの魅力の虜でした。 ビデオでリサイタルの模様が見られると知って大興奮。ハンブルグコンサート、コベントガーデンコンサートの二つ。ますます惹きつけられていきました。特に、コベントガーデンの方には、後半「トスカ」の第二幕を他キャストと共に演じている様子が入っていて、もう、びっくりでしたよ。。。演技しながら歌う、演じるって、こういう事なの~って。。。この衝撃は、多分今まで見聞きしてきた中で一番大きかったかもしれません。
その後、私は ソプラノ・レッジェーロ(コロラトゥーラまでいかないが軽い声のソプラノ、女中や村娘などの役が多い)と判断され、カラスの劇的な歌唱を参考にしすぎるとよろしくない、もっと軽く、高くということで少しずつ聴く回数が減って行きましたが。。。
賛否両論で、大っ嫌いだという人もいれば、信者のように崇めている人もいて(私はどちらかと言えば”信者系”ですけど)感じ方はいろいろだけど、あの「トスカ」を観て心動かされない人はいないのでは と思います。 難し過ぎて埋もれてしまって(歌える人がいなかった、大衆に退屈だと思われていた)いたベルカントのオペラを甦らせて劇場で再演したのは、カラスの功績。大富豪オナシスとの恋愛など私生活もオペラっぽい。。。最後はパリでひっそりと逝かれたそうですが。。。
もし、ドラえもんの”タイムマシン”があったなら(最近の車のCMでジャン・レノがドラえもんになって出てきて大笑いしました)、タイムスリップして、全盛期のカラスのオペラ「トスカ」か「アイーダ」あたり、あと「アンナ・ボレーナ」「ノルマ」とか観劇してみたい~~~。 少しでもこの偉大な歌手に近づけるように、さぁ、今日も勉強だ。。。
maria callas at covent garden 1962 and 1964