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■進む雇用悪化 景気足かせ 失業率、戦後最悪5.5%突破も

政府による景気の“底入れ宣言”とは裏腹に雇用の悪化に歯止めがかからない。景気の先行きは不透明感が強く、企業が雇用に慎重な姿勢を取り続けているためだ。民間エコノミストの予測では戦後最悪の完全失業率5.5%の突破も確実な情勢。失業率が悪化し続ければ消費は低迷し、景気回復の足取りは重くなる。政府は今後、さらなる雇用対策を迫られそうだ。

 ◆高まる過剰感

 内閣府の外郭団体、経済企画協会が民間エコノミスト40人の経済予測を集計したところ、失業率は今後も上がり続け、2010年4~6月期に5.66%のピークを迎える。その後は緩やかに低下するが、5%台半ばで推移すると予測している。今年5月の失業率は5.2%だったが、10~12月期には5.56%、10年1~3月期には5.63%となり、過去最悪だった03年4月の5.5%を突破する見込みだ。

 雇用が一段と悪化しそうなのは、企業が雇用に過剰感を持っているからだ。日銀が6月に公表した全国短期経済観測調査(短観)によると、企業の雇用の過剰感を表した雇用人員判断指数(DI)が全産業規模でマイナス23と3ポイント悪化した。

 この数字をもとに第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストが潜在的な失業者数を試算したところ、約70万人に達した。熊野氏は「5月の失業率5.2%から単純に考えると、さらに1ポイント程度悪化している計算だ」と分析する。

 確かに、希望する仕事がみつからずやむなく短時間で働いている労働者や、自宅待機になっている休業者のような失業予備軍は増加傾向に歯止めがかからず、5月の調査では週1~9時間の短時間労働が前年同月比4万人増の189万人、休業者が同25万人増の125万人に上った。

 政府は雇用悪化を受けて雇用調整助成金を拡充した。従業員を解雇せずに休業などで雇用を維持した場合、休業手当などの一部を助成する制度だが、5月にこの制度を導入した事業所は6万7192件に達し、対象労働者数は233万人に上った。さらに経済財政白書は、企業の余剰人員である「企業内失業」が今年1~3月期に過去最悪の607万人に達したとの推計を示しており、雇用環境は戦後最悪の水準といえるのが実情だ。

 ◆「規制改革を」

 雇用情勢の悪化は、景気回復のカギを握る個人消費を落ち込ませる。そして消費不振は製造業だけでなく、非製造業の雇用調整圧力も強める。こうした悪循環を断ち切ろうと、政府は雇用調整助成金や失業保険の拡充を模索しているものの、極度に悪化している財政事情を考えれば、それにも限界がある。

 このため、熊野氏は「医療や介護福祉の分野など人材が不足している分野は多い。人材が流入しやすいような規制の改革に真剣に取り組む必要がある」と指摘している。(石垣良幸)


出典:フジサンケイビジネスアイ