■実感なき「底打ち宣言」 雇用・賃金悪化 凍りつく消費 月例経済報告  | 渋谷からお届けします!

■実感なき「底打ち宣言」 雇用・賃金悪化 凍りつく消費 月例経済報告 

 政府が6月の月例経済報告から「悪化」の表現を削除し、事実上の“景気底打ち宣言”に踏み切った。前日には日銀も景気の現状判断について「下げ止まりつつある」との認識を示したばかりで、土砂降りだった日本経済に薄日が差してきた。だが、企業の業績不振を背景に完全失業率は5%の大台に乗り、夏のボーナスも軒並み減額。雇用・賃金情勢の悪化から個人消費の持ち直しも力強さに欠け、庶民の景気実感は「底打ち」にはほど遠い。(田端素央)

 「夏商戦は小売業全体で厳しいと覚悟している」

 大手百貨店関係者が弱音を漏らす背景には、雇用や所得の急激な悪化がある。「派遣切り」に端を発した雇用調整は今や正社員に及び、4月の完全失業率は5年半ぶりに5%台を記録した。所得環境も急激に悪化しており、大手企業の今夏のボーナスは前年比で平均19・4%減と過去最大の下落率を記録。中小企業ではボーナス自体を支給できないケースも増えている。

 「悪化に歯止めがかかった実感はない」。大手スーパー関係者からもこんな声が聞こえてくる。

 4月の全国スーパー売上高は前年同月比3・7%減となり、5カ月連続で前年実績を下回った。食料品は3カ月、衣料品にいたっては40カ月連続の前年割れだ。大手百貨店5社の5月の売上高(速報値)も10%台の減少となる見通しだ。

 今月初め、与謝野馨財務・金融・経済財政担当相は景気について「(1~3月が)底打ちの時期だったと思う」と述べた。財界からは「経営者として与謝野大臣の言っていることは実感に近い」(日本経団連の御手洗冨士夫会長)との見方を支持する声が相次ぎ、景気回復への期待感は一気に高まった。だが、消費の現場は凍てついたままだ。

 定額給付金など政府の景気対策もあり、6月の月例報告では個人消費が「一部に下げ止まりの兆し」と上方修正された。その一方で政府は「今後の個人消費は所得との綱引き」(内閣府幹部)と所得環境の悪化による消費回復の腰折れを懸念する。景気対策の効果も「今年後半から来年始めころに息切れする」(野村証券金融経済研究所)との見方が市場では支配的だ。

 政府には苦い思い出がある。平成5年6月の月例報告をめぐり、船田元・経済企画庁長官(当時)が「景気はおおむね底入れした」と表明したものの、その後の急激な円高や冷夏で撤回に追い込まれた「幻の底入れ宣言」だ。雇用・賃金情勢の悪化が続き、消費が一段と落ち込めば、当時の“二の舞”になりかねない。


出典:産経新聞