飴の女 | 魔法の秘密基地。

飴の女

今日も超後ろ向きなまま、出かけた。

派遣会社に登録に行った。いつまでもいつまでも、口の中で飴玉を転がしている。早く噛み砕いてしまいたい。もっと早く溶けてなくなると思っていたのに。

会場につくと同じ歳位の女の人がお茶をがぶ飲みしていた。面接官のようだ。希望勤務地欄に3つしか枠がなかったので
何となく“神奈川”“愛知”“埼玉”と書いた。
“何故こんなに遠くなんですか?”
“いや…日本地図の真ん中辺りがいーなーって…”間抜けすぎる理由だ。
色々説明を聞いてるうちに何故かお互いの人生の話になった。
救われた気がした。
ころん。
飴が、甘い。

近くの喫茶店まで珈琲を飲みに行く。
今、砂の女を読んでいる。砂の部落から脱出しようとする男の話。甘えのない、厳しさしかない作品なのにどこかコミカルに思える。悲劇のふりした喜劇を演じているようだ。この男が今の自分に似ている気がして飴が苦くなる。
人間は生まれながらに“砂”なのかも知れない。流動的で、時に重く、狂気をはらみ、時に軽く、美しく。

この飴はまだ溶けないだろう。腐れば吐き出せばいい。
思い出は甘い。いつまでも舐めたくなるくらい中毒性がある。
しかし時として思い出は後悔となり、苦くなる。
苦くても舐め続ける。甘くなるまで、噛み砕けるその日まで。

後ろ向きは一周すれば前向きなんだぜ。

私は海老だ!