『蒼』
いつからか、蒼を見上げるのが癖になっていた。
何を思うでもなく、ただ空をみた。
少し冷えた夕暮れの風を頬で撫でた。
雲のない夕凪前の空、薄く伸びた蒼は視界の先まで続いている。
春風がまだ冷たい頃、繋いでいた細い君の指が離れた
頬を淡く切るような風は君の髪を揺らした。
散った花びらは僕の視(ﾒ)を奪った
花びらの向こうへ君を探した
春が来ても心は忙しなくて、君の声がしたのも気の所為で
ただ記憶を辿って、君の面影を思い浮かべるだけ
君の顔は見えないまま。
蒼の空が雨で洗われたあと、いまだに君の姿は見えないまま
生い茂る木々の陰には桜の跡など何もなくて。
蝉時雨の間奏は僕の刻(ﾄｷ)を止めた
ひぐらしの鳴く夕暮れに耽った
蝉騒を聴くたび虚しくなって、君の好きな花も枯れていて
夜に響く花を聞いて、あの日の僕らを思い描くだけ
君の声も忘れたまま。
秋になって、木の葉に脚を掬われそうで
冬になっても、星に触れることは出来ないままで
柔らかい風が吹き始めた頃、色の変わった世界で君を探している
あの日の花びらに招かれて蒼の向こうへ。
見上げた蒼は僕の脳裏を映した
桜の前の君を思い出した
吐いた嘘が胸を締め付けて、君の温もりが蘇ってきて
言えなかった言葉が涙と溢れて、君の笑顔を思い出させた
僕の言葉は掠れたまま。
いつからか、蒼を見上げるのが癖になっていた。
君の好きな花と似ていたからだ。
風に舞う花びらが頬に触れた。
薄く伸びた蒼の下、紫陽花の君にやっと会えた。
完＜＜＜＜＜
以上、『蒼』でした。
タイトル読みは｢あお｣
詞中に｢花びら｣とかたくさん出してるのですが、主なシーンは"春"にしています。
春の空のことを｢蒼天｣｢そうてん｣と言うので、春の感じが伝わればなと思います。
今回の作品を書くにあたって、｢嘘をつく男の子の話｣というリクエストを受けました。
また、その嘘の内容は｢やさしいもの、酷いもの、どちらでもいい｣ということまで伝えていただいたのですが、今回のこのストーリーは、そのどちらにも属していない気しかしていません。すみません。
この作詞のお話は、端的に言うと｢ある男の子ともう1人の誰か｣のお話です。ちなみに、"ある男の子"は星騎さんが殺しました。そんなお話です。
作詞では、全て男の子目線で書いています。男の子の死ぬ直前とその後の描写を季節を巡らて書きました。(秋と冬を少し省いたのは内緒)
実は個人的に、2018の夏のあと、とても｢幽霊になりたい｣という思考が働いてしまい、男の子を自分の代わりに殺しました。
｢もし、自分の死んだあとの世界も何気なく綺麗に回って欲しいな｣という気持ちは、無きにしも非ずな感じで書きました。
あんまり話しちゃうと、みなさんの想像力までも殺してしまうので、殺すのは詞中の男の子だけにさてください。
聞きたいことなどあれば、お気軽にTwitterやコメント欄をご活用ください！
なんだかんだ言って、2019年の初更新記事がこんな大好きな作詞に出来て最高です。よろしければ、みなさんの反応も知りたい… 気が向いたら是非、お声かけください！
うまくまとまっていない気がしますが、今回はこの辺で。
また次回、よろしくお願い致します
Twitter→→→@starknight2359