Colours/浜崎あゆみ

では、かつての浜崎あゆみには「1位を獲った」とか「200万枚売れた」といった価値しかなかったのだろうか。
もしもそれ以外の価値を語れないのだとしたら、以前にも取り上げた谷岡雅樹氏の文章にあった、「売れている(人が支持している)という下らない重さだけが頼りだ」の通りになってしまう。
しかし実際、ランキングの威力というのはあって、浜崎あゆみに限らず、1位を獲ったり売れたりすれば「凄いなぁ」と思ってしまうし、順位や売上が下がれば「人気なくなったなぁ」と思ってしまう。「CD が売れなくなった」が「音楽がつまらなくなった」に直結してしまい、「音楽は順位や売上ではない」という言葉がどこか言い訳や負け惜しみのように響いてしまう。
そうなったのは、「1位を獲った」とか「何百万枚」とか「連続記録」といったことにハシャいでいたこちら側にも原因があると思う。そういったことにハシャいでいて、それ以外の価値を語る言葉を持たないでいたから。
(特にあゆについては、今まで 1位が多かったから「1位を獲って当たり前」とか「1位じゃなきゃ音楽(あゆ)じゃない」くらいに思ってしまうのかもね。ああ、怖い怖い)
以下の記事を読んで欲しい。
オリコンランキングのレベル低下がひどすぎるらしい - SKiCCO REPORT
http://d.hatena.ne.jp/skicco/20140417/p1
CD を複数枚買わせるやり方とか CD に特典を付けるやり方を批判するのは簡単。だけど、売上やランキングで物事を判断したり、それに一喜一憂する私達にも、そういうことをさせている原因や責任があるのではないだろうか。
好きなアーティストが売れれば嬉しいし、売れることは凄いことだし、そこを否定する気は全然ないのだけれど。
浜崎あゆみの『Colours』は、売り方が下手だと言われているようだ。CD発売前に、楽曲とミュージックビデオの先行配信。ライブ会場での CD配布(2曲入り)。でもそれは、本当に下手なのだろうか。確かに、「CDを売る」という観点からいったら下手だったのかも知れない。私が配信をあまり使わないからわかりづらいところもあるのだが。
宣伝が少ないとは思った。渋谷のスクランブル交差点に垂れ幕とか渋谷タワレコや ABCマートとコラボはしていたけど、渋谷だけだし、どれだけ効果があったのだろう。
しかし、複数形態とかいかにも「CDを売る」というやり方をしたらしたで、批判があったような気もする。
今回のやり方が良かったのかどうかはわからないが、「CDを売る」よりも「音楽を聴かせる」方へとシフトしつつあるのかも知れない。これからなのだろう。
(200万という数字より、3.9万の希望を感じたいんだ!)
先日、エレファントカシマシの全国ツアーと日比谷野外大音楽堂でのライブのチケットが発売された。ツアーの東京公演(Zepp DiverCity で金曜と土曜の二日間)と 10月19日(日)のみの野音のチケットはかなりの激戦で、私の周りにも取れなかった人がたくさんいる。昔からのファンもユニバーサル以降のファンも。
一方、5月に幻になったポールの日本公演は、売り切れてないのに「完売!」とかポール本人も「ソールドアウトありがとう!」とか言ったりしていた。武道館もあれだけ必死に取ったのに、売り切れていなかった。売り切れてもないのに「プレミアチケット!」とか煽るのは空しいし、「ソールドアウトありがとう!」だなんてマヌケじゃないか。
ポール・マッカートニーは、決して人気がないわけではないし、行きたい人だって確実にいるのに、会場の大きさとか日程の組み方とか値段その他の諸々で売れ残り、「売れない」イメージを与えてしまう。いや、実際本当に前より売れなくなっているのかも知れないが、自らその価値を落とすようなことをしなくてもいいのにと思う。
「誰もが知るスーパースターっていなくなったよね」
近頃よく聞くセリフだし、私もそう思っていたし、実際そうなのかも知れないが、そう言う人に限って、ランキングや動員数に縛られているところがあるのではないか。何百万枚売れたとか大会場を埋めたとかそういうことにハシャいでいた私達にも責任があるのではないか。そうじゃないところでも、面白い人を面白がれるようにしよう。
私がそう思えたのは、チャラン・ポ・ランタンや大森靖子に出会えたからだ。
チャラン・ポ・ランタンも大森靖子もすっごく面白いよ。だからもう、「スーパースターはいなくなった」なんて言えない。そしてそれは私にとって、浜崎あゆみもエレファントカシマシもポール・マッカートニーも同じなんだよ。規模やジャンルが違っても。
だから、「それ」がちゃんと続いて行くようにして欲しい。
行きたい人がチケットを買えない。行きたい人はいるのに売れ残る。そういうことを続けていったらどうなるか。
すべての人を満足させろというのではなく、好きなアーティストをずっとずっと応援していけるように。好きなアーティストがずっとずっと活動していけるように。
ドラえもんの声優陣が変わったとき、峯田和伸が書いていた「大切なことは『ドラえもんを続けること』だよ」という言葉を思い出す。
私は何も「こじんまりやっていこう」と言いたいわけじゃない。“今いるファン” だけを大事にして “新しいファン” は開拓しなくていいと言いたいわけじゃない。チャラン・ポ・ランタンも大森靖子も貪欲に攻めていってる。
ただ、例えば、(実際は取れるのに)「○○はチケット取れない」なんて言われると、もう最初から取る気も行く気もなくすじゃん。あるいは、チケットが売れ残ったり、ランキングが下がったりするとすぐ「落ち目」だの「オワコン」だの言われたら、近付きたくなくなるじゃん。
もっと新しい人も入りやすく、今いる人もいやすく、ってだけなんだけどなぁ。そこがなかなか難しいのかな。まぁ、だからこっちも余計なものに惑わされないようにしようってだけなんだけどね。
私は、今をときめく SCANDAL やももクロや大森靖子らが浜崎あゆみをルーツに挙げてることや、浜崎あゆみの作品を数多く手がけてきた CMJK が最近 SMAP やドリカムの編曲やリミックスを手がけていることの方が、順位や売上よりもよっぽど「浜崎あゆみ」の価値を表していると思います。(SMAP の新曲「Top Of The World」かっこよさそうだったなぁ)
まだそこまで有名じゃないころのケツメイシやリップスライムがあゆの作品に参加してたり、あゆのリミックス(PARA ONE)を聴いて tofubeats がカットアップをはじめたという話などもそう。音楽界ではないけど、前回の記事の朝井リョウの「浜崎あゆみを通った」とかね。
まぁ私も、こうやって怒ってるからいけないんですよね。「あゆは評価されるべき!」って、だから評価されないんだよ!っていう。涙のテロリストより笑顔のテロリストです。評価してる人ちゃんといるじゃん!
そして、大森靖子大森靖子いってるけど、一体どんな人なのか。
あゆファンの視点から書かせてもらえば、「TO BE」や「A Song for ××」をライブで歌ったり、「July 1st」をかけて「7月1日だと思ってかけたら2日だった」とか言ったらしいですよ。
でも、そんなことよりもまず、聴いて欲しい。
この前、私の愛する歌姫の名前を入れたら、なんかの拍子で「吊るされた豚」って出てきたんだよ。おいおい、あのティッシュのことですかい? もうそれを見たとき、どーでもええわってなりましたよ。雌豚閣下上等。あゆファンにも見て欲しい。
進化する豚
大森靖子&THEピンクトカレフ「Over The Party」2014年1月1日
http://youtu.be/AbJCuIKU0uw
「Microphone」を歌うあゆのように、見え、なく、も、ない、か?
“今更だけどちょっとマジになっている”