おみくじ 大吉
「明けましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いします。」という父の挨拶で、我が花山家の一年が始まる。
俺、花山大吉。 大学2年生なんだけど、家族と一緒に年越す大学生もねぇ・・
でもま、これが我が家の恒例行事だからしかたない。
そして、恒例行事といえばもう1つ。 挨拶すんでからの近くの神社への初詣とおみくじ。
なんせ俺とおみくじは縁が深いのですよ。 母の妊娠がわかった時(俺ができたとき?)親父がおみくじ
引いたら大吉だったらしい。 で、そのまま名前ってのもなぁ・・・
「んじゃ俺、初詣行ってくんで。」
「なんやまた今年も一人かいな? みっちゃんでも誘ってみたらどないやのん?」
「なんで、みつこやねん。 子供の頃一緒に遊んでただけやん。 最近は口もきいてへんわ。」
「そうかぁ? うちらには、ちゃんと挨拶もするし愛想もええし。 それに、べっぴんなってきたし。」
「もう! 新年早々うっとうしい話すんなや。 行ってくるで。」
みつことは、藤岡みつこ。 俺と同じ年で3軒横の家に住んでる幼馴染。
子供の頃はよう遊んだけど、何時の頃からか話もせんようになった。
母親のせいで(おかげで?)昔のこと思い出しながら神社に向かうと、そこは驚くほど人がいた。
「なんや、去年も多少は人おったけど、こんなに・・・」と呆然としてると後ろから「だいきち。 おい大吉」
と呼ぶ声が聞こえた。
「なんや、山本か。 久しぶりやな元気か?」
「ああ、なんとか元気でやってる。 今は家の商売手伝って、お好み焼き焼いとるで。 食べに来てや。」
「そうなんや! ほな今度食べにいくわ。 まけてや!」
「おうまかしとけ、ただしおかんのおらん時だけやで。」二人は顔を見合わせて笑った。
「それにしても、えらい人やな。 なんでこんなに人おるんやろ?」
「それやがな、やっぱ不況なんやろなぁ。 近場で安くなんとちゃうか?」
「そうか、ほな並ばんとしゃぁないな。 山本はもうすんだんか?」
「ああ、俺はもう帰るとこや。 人多いから、はやいとこ並んだほうがええで。」
「そうするわ。 ほんだらまた食いに行くから。 そんときにでも。」 と、山本と別れて行列に並んだ。 その時である。
「痛いなぁもう。 なんでぶつかってくるん。」と言う女の声。
「何言うとんねん。 ぶつかってきたんお前やんか。」と互いに顔を見た。
「みつこ!」「だいきち・・・くん?」ビックリである。
(あちゃ、この長い行列でこいつに会うなんて、間がもたん・・ 何話したらええねん)
と、思ってたのは俺だけ? みつこは自分の事をよくしゃべる。 (こんなしゃべる奴やったっけ?)
なんでも、女子高からそのまま短大に進み、そこそこの会社に就職が内定したらしい。
「そうか、俺は4年制やからまだやけど、短大やとそんな年なんやなぁ。 春には社会人か。 給料でたらよろしく!」
なんとなく、みつこのペースにのせられた感じではあったが、ぽつぽつと話し出せるようになった。
「初任給って少ないんやで。 それでおごってもらうつもりなら、就職祝いよろしく!」
それからは子供の頃の話で盛り上がった。
「うちのおかんが、みつこべっぴんなった言うてたけど、がきの頃は男か女かわからんかったからな。」
「そう? でも、俺のよめさんにしたる って言うてたやん。 あれは嘘なん?」
「え~、そんなこと言うたか? ま、言うたとしてもガキのたわごとやん。」
「そんな・・・ 私今まで信じて待ってたのに・・・」 「まじか! すまん。 そんなつもりちゃうねん。」
「がははは。ひっかかった。」 「おい、お前ナァ・・・ 」 てな具合である。
おかげで長い行列を待つのも退屈せずにすんだ。
(続く)
「明けましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いします。」という父の挨拶で、我が花山家の一年が始まる。
俺、花山大吉。 大学2年生なんだけど、家族と一緒に年越す大学生もねぇ・・
でもま、これが我が家の恒例行事だからしかたない。
そして、恒例行事といえばもう1つ。 挨拶すんでからの近くの神社への初詣とおみくじ。
なんせ俺とおみくじは縁が深いのですよ。 母の妊娠がわかった時(俺ができたとき?)親父がおみくじ
引いたら大吉だったらしい。 で、そのまま名前ってのもなぁ・・・
「んじゃ俺、初詣行ってくんで。」
「なんやまた今年も一人かいな? みっちゃんでも誘ってみたらどないやのん?」
「なんで、みつこやねん。 子供の頃一緒に遊んでただけやん。 最近は口もきいてへんわ。」
「そうかぁ? うちらには、ちゃんと挨拶もするし愛想もええし。 それに、べっぴんなってきたし。」
「もう! 新年早々うっとうしい話すんなや。 行ってくるで。」
みつことは、藤岡みつこ。 俺と同じ年で3軒横の家に住んでる幼馴染。
子供の頃はよう遊んだけど、何時の頃からか話もせんようになった。
母親のせいで(おかげで?)昔のこと思い出しながら神社に向かうと、そこは驚くほど人がいた。
「なんや、去年も多少は人おったけど、こんなに・・・」と呆然としてると後ろから「だいきち。 おい大吉」
と呼ぶ声が聞こえた。
「なんや、山本か。 久しぶりやな元気か?」
「ああ、なんとか元気でやってる。 今は家の商売手伝って、お好み焼き焼いとるで。 食べに来てや。」
「そうなんや! ほな今度食べにいくわ。 まけてや!」
「おうまかしとけ、ただしおかんのおらん時だけやで。」二人は顔を見合わせて笑った。
「それにしても、えらい人やな。 なんでこんなに人おるんやろ?」
「それやがな、やっぱ不況なんやろなぁ。 近場で安くなんとちゃうか?」
「そうか、ほな並ばんとしゃぁないな。 山本はもうすんだんか?」
「ああ、俺はもう帰るとこや。 人多いから、はやいとこ並んだほうがええで。」
「そうするわ。 ほんだらまた食いに行くから。 そんときにでも。」 と、山本と別れて行列に並んだ。 その時である。
「痛いなぁもう。 なんでぶつかってくるん。」と言う女の声。
「何言うとんねん。 ぶつかってきたんお前やんか。」と互いに顔を見た。
「みつこ!」「だいきち・・・くん?」ビックリである。
(あちゃ、この長い行列でこいつに会うなんて、間がもたん・・ 何話したらええねん)
と、思ってたのは俺だけ? みつこは自分の事をよくしゃべる。 (こんなしゃべる奴やったっけ?)
なんでも、女子高からそのまま短大に進み、そこそこの会社に就職が内定したらしい。
「そうか、俺は4年制やからまだやけど、短大やとそんな年なんやなぁ。 春には社会人か。 給料でたらよろしく!」
なんとなく、みつこのペースにのせられた感じではあったが、ぽつぽつと話し出せるようになった。
「初任給って少ないんやで。 それでおごってもらうつもりなら、就職祝いよろしく!」
それからは子供の頃の話で盛り上がった。
「うちのおかんが、みつこべっぴんなった言うてたけど、がきの頃は男か女かわからんかったからな。」
「そう? でも、俺のよめさんにしたる って言うてたやん。 あれは嘘なん?」
「え~、そんなこと言うたか? ま、言うたとしてもガキのたわごとやん。」
「そんな・・・ 私今まで信じて待ってたのに・・・」 「まじか! すまん。 そんなつもりちゃうねん。」
「がははは。ひっかかった。」 「おい、お前ナァ・・・ 」 てな具合である。
おかげで長い行列を待つのも退屈せずにすんだ。
(続く)