エドワード・ケアリー 『堆塵館』
十九世紀後半、ロンドンの外れに巨大なごみ捨て場があった。幾重にも重なる山のその中心には『堆塵館』という、ロンドンの不用なごみの寄せ集めでできた巨大な屋敷があり、ごみから財を築いたアイアマンガー一族が住んでいた。一族の者は、生まれると必ず「誕生の品」を与えられ、その品を一生涯肌身離さず持っていなければならなかった。十五歳のクロッド・アイアマンガーは誕生の品の声を聞くことができる一風変わった少年だった。
一方、十六歳の孤児のルーシー・ペナントは、召使いとして堆塵館に入り、館の風変わりな伝統と習慣を教えられ、暖炉掃除係として働くことになる。そしてある夜クロッドと出会ったことで、一族の運命が大きく変わっていく……。
『望楼館追想』から十五年、物への偏愛の著しいエドワード・ケアリーが満を持して送る超大作。(Amazonより)
あらすじは↑の通り。
ごみ山(文字通り“山”だ)の上に気付かれた堆塵館に住まうアイアマンガー一族の異端児、物の声が聞こえる少年クロッドと、新たに召使いとして館にやって来た少女ルーシーが出会うとき、館に不穏な影が……。
特徴としては、表紙にもなっている、著者自身によるグロかわいい挿絵の数々。
そしてその絵を体現するような、ちょっと(かなり?)変わった登場人物たち。
本国では少年少女向けのヤングアダルト作品でもあるらしく、子供も楽しめるし、もちろん大人が読んでも滅法面白い。
なにより、この終わり方!
本作は三部作の第一部だが、これはもう二部も読むしかあるまいて。
どうやら無事に第二部の刊行も決まったらしく、楽しみに待つとしよう。
唯一のネックは値段か。
海外文学の単行本としてはまぁ法外というほどではないものの、3000円(税抜き)はやや高い。
それでも買って読む価値はある。
電子版もあるが、個人的には紙で買っておきたい一冊だ。(紙のほうは館の見取り図もあるので)
ケアリーの邦訳二冊(『望楼館追想』『アルヴァとイルヴァ』)は共に絶版なので、ぜひとも復刊を望みたい。