読んだ本の感想を書かないまま溜まってしまったので、一気に書いていこうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

ミエヴィル兄貴の第一短編集。

本人曰く「ウィアード(奇妙な)」と称する妖しい物語たち。

SF文庫から出てるけど、ほとんどがホラー寄りの奇想短編で、中編の「鏡」が完成度が高い。

他に、「ロンドンにおける“ある出来事”の報告」や「仲介者」、「もうひとつの空」などオープンエンドの短編もなかなか。

ちなみにミエヴィルはつい最近第二短編集『爆発の三つの欠片』が出た。

やたら分厚く、値段も高い(2700円)のでまだ買ってません。

 

 

 

 

 

 

 

「選ばれた少女たちが世界を“織る”ことで保たれている」という設定は興味深い。

しかしユートピアに見せかけられたディストピアというのはよくあるパターンにしても、この物語のメインはSF的なことよりも主人公の少女アデリスがタイプの違うイケメン2人とイチャイチャしながら苦難を乗り越えていく、少女漫画的な方向らしい。

魅力的なSF設定はあまり活かされず、10年に1人の才能を持っていてなぜかイケメンにモテモテであまり賢いとはいえないから窮地に陥るけどそのたびに運よくあるいは誰かに助けられながら切り抜けていくアデリスの奮闘ばかりが描かれる。

少女漫画やパラノーマルロマンスなどを好む人には受けるかもしれないけど、創元SF文庫で出すようなものではないと思います。

 

 

 

 

 

 

 

ミステリ好きなら知らぬ者はいない、かの有名な箴言「木を隠すなら森の中」の出典でもあるミステリの古典。名探偵ブラウン神父を主人公にした連作短編集である。

こんな大定番の教科書のような作品をいままで読んでこなかったのは、ひとえに訳文が堅苦しくて読みづらそうだなーと思っていたから。

しかしこのハヤカワ文庫で出た新訳は読みやすそう、ということでようやく手を出してみた。

結果は、想像以上に読みやすかったです。他の訳文(創元とかちくまとか)は未読だけど、たぶん一番読みやすいのはこれ。(古い訳もそれはそれで情緒があって良いんですが)

ここに出てくるトリックはどれも、いまとなっては珍しくないものばかりだけど、そもそも本書から波及していったと思うと感慨深い。

それに、その使い方もさすがの域。ミステリ初心者も上級者(なんてものがあるのかは知らないけど)も楽しめる傑作。

ところで、訳は良いんだけどタイトルに「事件簿」とつけるのはちょっと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからは国内作品。

いまや大人気作家の米澤穂信が『さよなら妖精』『王とサーカス』の登場人物である太刀洗万智を主人公に描いたミステリ短編集。

とはいえ真の主人公は“事件”であり、それを見つめる大衆の目なのでしょう。

最初に見えていた構図とは違った真相を探り出すミステリでもありつつ、大衆がなにを見るのか、見たがるのか、太刀洗は記者として、どう見せるべきであるのか。

一筋縄ではいかないそんな命題だらけで、どの視点で読んでも考えさせられ、しかし明確な答えはなく、実に面白かったけど疲れました。

今年のミステリランキングでも軒並み上位にランクインしてたね。

 

 

 

 

 

 

 

個人的に愛してやまない作家の《Vシリーズ》9作目。

おなじみの面々が、前々作に出てきた研究所の地下から見つかった死体についてアレコレ頭を悩ませる。

なかなか壮大なトリックが使われていて、ミステリ的にも面白いんだけど、もはやそんなことよりキャラクターや著者独特の哲学を読み取るほうが楽しい。

数少ない「作家推し」(←いま思いついた表現)をしてる作家の作品なので、細かく評価する気も起きない。どの作品も好きです。これも好きになりました。

 

 

 

 

 

 

 

これまた人気作家のシリーズ第二弾。

著者の魅力が全開で、まったく嫌な気持ちにならない爽快なエンタメ作品。

「なにか本でも読みたいけど暗い話とか後味が悪いやつは嫌」という方は、前作(『陽気なギャングが地球を回す』)と共にどうぞ。

シリーズ三作目も出てます。そのうち読む。

 

 

 

 

 

 

 

とまぁ、こんな感じ。

 

 

 

ちなみに去年(2016年)読んだ本のなかで個人的に一番面白かったのは、澤村伊智『ぼぎわんが、来る』でした。

 

 

 

 

 

がっつりホラーなので、苦手な方はご注意ください。

 

 

『リング』系のホラーで、新人のデビュー作なのに圧倒的なリーダビリティ。そしてすごく怖い

でもめっちゃ面白い。

 

 

 

 

 

今年もいい本に巡り合えますように。