佐藤究 『QJKJQ』

 

 

 

QJKJQQJKJQ
1,620円
Amazon

 

 

市野亜李亜(いちのありあ)は十七歳の女子高生。猟奇殺人鬼の一家で育ち、彼女自身もスタッグナイフで人を刺し殺す。猟奇殺人の秘密を共有しながら一家はひっそりと暮らしていたが、ある日、亜李亜は部屋で惨殺された兄を発見する。その直後、母の姿も消える。亜李亜は残った父に疑いの目を向けるが、一家には更なる秘密があった。

「平成のドグラ・マグラ」

「ものすごい衝撃を受けた」

選考委員たちにそう言わしめた、第62回江戸川乱歩賞受賞作。(Amazonより)

 

 

 

 

今年度の江戸川乱歩賞受賞作は、タイトル、あらすじからして異色というか、まるでメフィスト賞のような雰囲気がプンプンで、個人的には非常に好みである。装丁も素晴らしい。

 

 

そんなわけで久しぶりに――というか単行本で買ったのは初めてかもしれない――乱歩賞受賞作を買って早速読んでみた。

 

 

 

殺人鬼一家で育った主人公の女子高生、市野亜李亜の日常は、兄の死体を見つけた瞬間から少しずつ不穏さを帯びていく。

母までもが消え、何かを知っている父は核心を明かさない。

 

 

話の軸となるのは、兄を殺した犯人探し……だったはずが、いつのまにか主人公のアイデンティティを巡る混沌の旅へと変わっていく。

 

 

ミステリーながら、幻想小説のようでもあり、日常の崩壊を描いた不条理劇でもある。

 

 

 

“殺人鬼一家”などというものが本当に存在し得るのか。

 

 

家族の、そして亜李亜の正体とは……。

 

 

 

最終的には、なるほどそっちの方向に行くのね、という感じ。

 

 

壮大なのか矮小なのかなんとも言い難いけど、選考委員の辻村深月先生が言うように、綺麗にまとまり過ぎているきらいはあるかもしれない。

 

 

ここまで魅力的な舞台を整えたんだから、もっと深い混沌と深淵を見せてほしかった。というのは贅沢でしょうか。

 

 

 

文章も達者で、小説自体はレベルが高いのでおすすめです。

次作が出たら読みたい。