アン・レッキー 『叛逆航路』
叛逆航路 (創元SF文庫)/アン・レッキー

¥1,404
Amazon.co.jp
ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、アーサー・C・クラーク賞、英国SF協会賞、英国幻想文学大賞、キッチーズ賞の7冠獲得
二千年にわたり宇宙戦艦のAIだったブレクは、自らの人格を四千人の人体に転写した生体兵器〈属躰〉を操り、諸惑星の侵略に携わってきた。だが最後の任務中、陰謀により艦も大切な人も失う。ただ一人の属躰となって生き延びたブレクは復讐を誓い、極寒の辺境惑星に降り立つ……デビュー長編にしてヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞など『ニューロマンサー』を超える英米7冠、本格宇宙SFのニュー・スタンダード登場!(Amazonより)
↑の紹介文にあるように、本書は主要なSF賞を総ナメにした超話題作。
ちなみに日本での刊行後に星雲賞も受賞し、フランスでも賞を獲ったらしいので、計9冠ということになる。驚異的な記録だ。
中身はというと――
ラドチという最大勢力の星間国家では、人間の意識を宇宙戦艦に移行し人工知能として用いられているが、そのAIの人格を人体に転写したものが〈属躰(アンシラリー)〉と呼ばれる生体兵器だ。
主人公のブレクはかつて2000年に渡り戦艦〈トーレンの正義〉のAIだったが、19年前に起きたある事件がきっかけで〈トーレンの正義〉を去り、〈属躰〉ひとつを操り復讐を企てていた。
19年前の、まだブレクがAIだった頃と、人間の体に人格を写した現在とがカットバック形式で語られていく。
過去パートは、ラドチが併合したとある星で起こったオーン副官の失脚が描かれ、現代パートでは、1000年前に自艦の副官だったセイヴァーデンを偶然拾ったブレクがラドチの皇帝アナーンダ・ミアナーイに復讐を果たさんとする。
というわけで、表紙のせいかもっと派手派手しいスぺオペを想像してたけど、意外と地味。
スぺオペだけでなく文化人類学SFな面もあり、サイバーパンクでもあり、様々なSFの要素が盛り込まれた作品となっている。
100ページくらいまでは用語や世界観の把握に手こずるものの、巻末にある用語解説を参照しながら読み進めると、徐々に面白くなってきます。
本作の設定の特殊なところは、先述した〈属躰〉の他に、ラドチの人間は性の区別をせず、誰もが「彼女」と呼ばれること。
男も女もない。というか、区別しない。
これが意外と厄介で、頭の中でキャラクターのビジュアルをとても想像しにくい。
解説にもあるように、普段我々はいかに男女の性別を意識して暮らしているかというのを思い知らされる。
ちなみにこれは三部作の一作目で、二作目『亡霊星域』はすでに刊行済み。
完結編となる三作目の邦訳が待たれる。
叛逆航路 (創元SF文庫)/アン・レッキー

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ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、アーサー・C・クラーク賞、英国SF協会賞、英国幻想文学大賞、キッチーズ賞の7冠獲得
二千年にわたり宇宙戦艦のAIだったブレクは、自らの人格を四千人の人体に転写した生体兵器〈属躰〉を操り、諸惑星の侵略に携わってきた。だが最後の任務中、陰謀により艦も大切な人も失う。ただ一人の属躰となって生き延びたブレクは復讐を誓い、極寒の辺境惑星に降り立つ……デビュー長編にしてヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞など『ニューロマンサー』を超える英米7冠、本格宇宙SFのニュー・スタンダード登場!(Amazonより)
↑の紹介文にあるように、本書は主要なSF賞を総ナメにした超話題作。
ちなみに日本での刊行後に星雲賞も受賞し、フランスでも賞を獲ったらしいので、計9冠ということになる。驚異的な記録だ。
中身はというと――
ラドチという最大勢力の星間国家では、人間の意識を宇宙戦艦に移行し人工知能として用いられているが、そのAIの人格を人体に転写したものが〈属躰(アンシラリー)〉と呼ばれる生体兵器だ。
主人公のブレクはかつて2000年に渡り戦艦〈トーレンの正義〉のAIだったが、19年前に起きたある事件がきっかけで〈トーレンの正義〉を去り、〈属躰〉ひとつを操り復讐を企てていた。
19年前の、まだブレクがAIだった頃と、人間の体に人格を写した現在とがカットバック形式で語られていく。
過去パートは、ラドチが併合したとある星で起こったオーン副官の失脚が描かれ、現代パートでは、1000年前に自艦の副官だったセイヴァーデンを偶然拾ったブレクがラドチの皇帝アナーンダ・ミアナーイに復讐を果たさんとする。
というわけで、表紙のせいかもっと派手派手しいスぺオペを想像してたけど、意外と地味。
スぺオペだけでなく文化人類学SFな面もあり、サイバーパンクでもあり、様々なSFの要素が盛り込まれた作品となっている。
100ページくらいまでは用語や世界観の把握に手こずるものの、巻末にある用語解説を参照しながら読み進めると、徐々に面白くなってきます。
本作の設定の特殊なところは、先述した〈属躰〉の他に、ラドチの人間は性の区別をせず、誰もが「彼女」と呼ばれること。
男も女もない。というか、区別しない。
これが意外と厄介で、頭の中でキャラクターのビジュアルをとても想像しにくい。
解説にもあるように、普段我々はいかに男女の性別を意識して暮らしているかというのを思い知らされる。
ちなみにこれは三部作の一作目で、二作目『亡霊星域』はすでに刊行済み。
完結編となる三作目の邦訳が待たれる。