恩田陸 『中庭の出来事』


中庭の出来事 (新潮文庫)/恩田 陸

¥767
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瀟洒なホテルの中庭で、気鋭の脚本家が謎の死を遂げた。容疑は、パーティ会場で発表予定だった『告白』の主演女優候補三人に掛かる。警察は女優三人に脚本家の変死をめぐる一人芝居『告白』を演じさせようとする――という設定の戯曲『中庭の出来事』を執筆中の劇作家がいて……。虚と実、内と外がめまぐるしく反転する眩惑の迷宮。芝居とミステリが見事に融合した山本周五郎賞受賞作。(Amazonより)




5年ほど前に単行本で読んだものを、文庫にて再読。



この作品の特徴はなんといっても、幾重にも織り込まれた劇中劇。


Aパートでの出来事は、Bパートの中の劇中劇なのかな……と思っていたら、作中劇だと思っていたCパートがAパートにもBパートにも関連してきて、ええっとどれが虚構でどれが現実で……。


と、わけがわからなくなる。


単純な入れ子構造というわけでもなく、たぶん作者は意図的にずらしているのではと思う。


メモを取って計算しながら読んでも、きっちりとした解答は出ないんじゃないか、と。


いわば、三つの主なパートを箱に放り込み、ルービックキューブのように縦横にひねって回してごちゃごちゃにしたものを「どうぞ」と差し出されたかのような感覚。



ラストでは一応各パートが収束し、謎も解かれたような気にはなるけど、どこか釈然としない部分も多々残る。


元々オープンエンドが好きな著者ではあるが、この作品はその極北のような位置にあると作品だ。




ストーリーを楽しむというより、その特殊な構造や、思わず付箋を貼りたくなるセリフの数々を堪能するのがよろしいでしょう。



あと、演劇の話でもあるので、舞台好きも必読です。