オキシタケヒコ 『筺底のエルピス -絶滅前線-』
筺底のエルピス (ガガガ文庫)/オキシ タケヒコ

¥640
Amazon.co.jp
殺戮因果連鎖憑依体―。それは古来より『鬼』や『悪魔』と呼ばれてきた。鬼狩りの組織“門部”は、古来より改造眼球『天眼』と、時を止める柩『停時フィールド』を武器として鬼を狩り続けてきた。百刈圭と、乾叶―心に傷を抱えながら戦う二人が遭遇したのは、歴史上たった六体しか現れていない“白鬼”だった。叶の親友に憑依したその鬼を巡り組織が揺れる中、もう一つの組織“ゲオルギウス会”が動き出す。“白鬼”とは何か?二つの組織の衝突の行方は?人類の存亡をかけた、影なる戦士たちの一大叙事詩が、いま語られる。(Amazonより)
いわゆるラノベだが、著者は本格的なSF短編でデビューした経歴を持ち、本作にもそれは存分に活かされている。
世界にはびこる『鬼』と呼ばれる悪しき存在。
おそらく宇宙からやってきたとされるそれは、人間の心にとり憑き、他者への殺意を増大させる。
そんな『鬼』を討伐すべく、秘密裡に活躍する組織が“門部”だ。
門部の討伐員となった者は、《停時フィールド》という特殊能力を授けられる。(これも地球の技術ではない)
要は異能力で、主人公(たぶん)の百刈圭の停時フィールドは「朧箱(おぼろばこ)」という、四角く囲った空間の時間を三秒間だけ完全に停止するというもの。
ちなみにヒロイン(たぶん)乾叶(いぬいかなえ)の停時フィールドは、刀のようなものを出して敵を切る「蝉丸」というもの。
そして『鬼』。
人間という種を滅ぼすべくプログラムされた(と思われる)この鬼は、人間にとり憑いて殺意を増幅させ、しかもどんどん成長し変化していく。
変化した鬼は「赤鬼」や「青鬼」となるが、稀に「白鬼」や「黒鬼」も確認されている。(ちなみに、鬼がとり憑いていることを確認できるのは討伐員だけ)
鬼は、憑依した人間が死ぬと、その人間を殺した者、あるいはその死に深く関与した者にとり憑く。そうやって人間を渡っていくのだった。
設定だけ見ると、ラノベや少年漫画にありがちな伝奇モノのよう。
しかしその裏には何気にSF的な理屈が用意されていて、思いのほかしっかりした作りだということがわかる。
しかもそのSF要素が、ファーストコンタクトからタイムトラベルまで、結構多様だったりする。
そんなラノベとSFの融合のような本作は、一巻からしてすでに絶望的な状況だ。
ちょっとネタバレになるが、彼ら討伐員の主要メンバーは、人類があと百十数年後に滅亡していることを知っている。つまり、どうあっても鬼から人類を救う手立てはないのである。
にも関わらず、鬼と討伐し続けなければならない。
人類滅亡という未来が、変わることを祈って。
討伐員たちの多くは、鬼に憑依された人間によって家族を殺された者だ。
そんなこんなであらゆる悲しみや絶望が混ざり合い、正直言って気が滅入る。
文章も上手く、キャラも立ち、物語も抜群に面白い。
だけど、気が滅入る。
とはいえ、近年稀に見る良作ラノベSFなのは間違いない。
現在、三巻まで出てるようなので、絶望に耐えながら続刊も読んでいこうと思います。
でも三巻ではもっと絶望的な状況になってるらしいよ……。
筺底のエルピス (ガガガ文庫)/オキシ タケヒコ

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殺戮因果連鎖憑依体―。それは古来より『鬼』や『悪魔』と呼ばれてきた。鬼狩りの組織“門部”は、古来より改造眼球『天眼』と、時を止める柩『停時フィールド』を武器として鬼を狩り続けてきた。百刈圭と、乾叶―心に傷を抱えながら戦う二人が遭遇したのは、歴史上たった六体しか現れていない“白鬼”だった。叶の親友に憑依したその鬼を巡り組織が揺れる中、もう一つの組織“ゲオルギウス会”が動き出す。“白鬼”とは何か?二つの組織の衝突の行方は?人類の存亡をかけた、影なる戦士たちの一大叙事詩が、いま語られる。(Amazonより)
いわゆるラノベだが、著者は本格的なSF短編でデビューした経歴を持ち、本作にもそれは存分に活かされている。
世界にはびこる『鬼』と呼ばれる悪しき存在。
おそらく宇宙からやってきたとされるそれは、人間の心にとり憑き、他者への殺意を増大させる。
そんな『鬼』を討伐すべく、秘密裡に活躍する組織が“門部”だ。
門部の討伐員となった者は、《停時フィールド》という特殊能力を授けられる。(これも地球の技術ではない)
要は異能力で、主人公(たぶん)の百刈圭の停時フィールドは「朧箱(おぼろばこ)」という、四角く囲った空間の時間を三秒間だけ完全に停止するというもの。
ちなみにヒロイン(たぶん)乾叶(いぬいかなえ)の停時フィールドは、刀のようなものを出して敵を切る「蝉丸」というもの。
そして『鬼』。
人間という種を滅ぼすべくプログラムされた(と思われる)この鬼は、人間にとり憑いて殺意を増幅させ、しかもどんどん成長し変化していく。
変化した鬼は「赤鬼」や「青鬼」となるが、稀に「白鬼」や「黒鬼」も確認されている。(ちなみに、鬼がとり憑いていることを確認できるのは討伐員だけ)
鬼は、憑依した人間が死ぬと、その人間を殺した者、あるいはその死に深く関与した者にとり憑く。そうやって人間を渡っていくのだった。
設定だけ見ると、ラノベや少年漫画にありがちな伝奇モノのよう。
しかしその裏には何気にSF的な理屈が用意されていて、思いのほかしっかりした作りだということがわかる。
しかもそのSF要素が、ファーストコンタクトからタイムトラベルまで、結構多様だったりする。
そんなラノベとSFの融合のような本作は、一巻からしてすでに絶望的な状況だ。
ちょっとネタバレになるが、彼ら討伐員の主要メンバーは、人類があと百十数年後に滅亡していることを知っている。つまり、どうあっても鬼から人類を救う手立てはないのである。
にも関わらず、鬼と討伐し続けなければならない。
人類滅亡という未来が、変わることを祈って。
討伐員たちの多くは、鬼に憑依された人間によって家族を殺された者だ。
そんなこんなであらゆる悲しみや絶望が混ざり合い、正直言って気が滅入る。
文章も上手く、キャラも立ち、物語も抜群に面白い。
だけど、気が滅入る。
とはいえ、近年稀に見る良作ラノベSFなのは間違いない。
現在、三巻まで出てるようなので、絶望に耐えながら続刊も読んでいこうと思います。
でも三巻ではもっと絶望的な状況になってるらしいよ……。