大森望編 『NOVA+ バベル』


NOVA+ バベル: 書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)/宮部 みゆき

¥994
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全十巻をもって完結した書下ろし日本SFアンソロジー『NOVA』が帰ってきた。


タイトルが数字ではなく収録作からとっているのを別にすれば、これまでの十冊と変わらない、良質なSFアンソロジー。



収録作は、


宮部みゆき 「戦闘員」

月村了衛 「機龍警察 化生」

藤井太洋 「ノー・パラドクス」

宮内悠介 「スペース珊瑚礁」

野崎まど 「第五の地平」

酉島伝法 「奏で手のヌフレツン」

長谷敏司 「バベル」

円城塔 「Φ(ファイ)」




ひとつずつ感想を。


「戦闘員」安定の宮部クオリティで、SF度は低いけどそのぶん読みやすい。

「機龍警察 化生」シリーズ長編のスピンオフ。長編が読みたくなる。

「ノー・パラドクス」圧倒されるほどのめくるめくSFガジェット。これが一番面白かった。

「スペース珊瑚礁」これまでの『NOVA』で書かれてきたシリーズの一編。著者の作品はこのシリーズが一番面白いかもしれない。

「第五の地平」ひたすら馬鹿馬鹿しいネタを、真面目な顔して書くという『野﨑まど劇場』タイプの作品。モンゴルの覇者チンギス・ハーンが宇宙であれこれ悩みます。

「奏で手のヌフレツン」相変わらず濃密な世界と文字。面白いんだけど、この著者の描く世界は生きるのが大変すぎて、読んでて辛くなる。

「バベル」タイトルにもなった中編。「そんなブラック会社、とっとと辞めちゃいなよ」と思いました。

「φ」いつもよりはわかりやすいような気がしないでもない。「あぁ~文字が減っていくぅ~」と思いました。





いまの日本SFはどんな感じか、というのがわかる良質なアンソロジーでした。