伊坂幸太郎 『夜の国のクーパー』


夜の国のクーパー (創元推理文庫)/伊坂 幸太郎

¥842
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目を覚ますと見覚えのない土地の草叢で、蔓で縛られ、身動きが取れなくなっていた。仰向けの胸には灰色の猫が座っていて、「ちょっと話を聞いてほしいんだけど」と声を出すものだから、驚きが頭を突き抜けた。「僕の住む国では、ばたばたといろんなことが起きた。戦争が終わったんだ」猫は摩訶不思議な物語を語り始める―これは猫と戦争、そして世界の秘密についてのおはなし。(Amazonより)




冒頭、語り出したのは猫。いきなりの展開である。


そんな猫が語るのは、とある国同士の戦争が終わり、勝った国の人間たちがこちら(猫のいるほう)の国を侵略してきた話。


どうやらこの国は、我々(読者)の知る世界とは違うらしい。


そもそも猫が口をきいてることからして、なるほどこれはファンタジーなのか。



と思ったのも束の間、猫が話しかけているのは、仙台から来た、株が趣味の、妻に浮気された男だったりする。


うん?仙台?
猫が喋ってるし、和風ファンタジーっぽい国が出てきてたのに、仙台から来た男?



そんな男に、猫は語る。


この国には、“クーパーの兵士”の伝説があるのだ。



クーパーとは、杉に似た木が繭のようなものを纏い、やがて根っ子を地面から抜いて動き出すバケモノのこと。
そしてそれを退治するのが、クーパーの兵士。


兵士がクーパーをやっつけたとき、クーパーの躰から水が出る。
その水を浴びた兵士たちは、透明になってしまうという。


それ故に、クーパーの兵士となった者は国に帰ってはこない。帰ってきても、透明だから見えない。


しかし国が危機に瀕したとき、クーパーの兵士は国を救うために駆けつけてくれるのだ。


そんな伝説があった。





なんのこっちゃという感じだが、一体この物語はどこへ着地するのか、そしてクーパーとはなんなのか、仙台から来たというのはどういうことか。そんな謎に引っ張られ、グイグイ読める。


「大体そんなことだろうと思ったよ」などと思っていると、「まじかよ」と驚かされる。さすがの伊坂幸太郎。



面白かったです。



個人的に、伊坂幸太郎はこういう「猫が喋る」くらいのファンタジックな要素があったほうが読みやすい。


デビュー作は確か、案山子(かかし)が喋っていた。あれも面白かった。



そういえば他に、車が語り手という作品もあったっけ。そのうち読もう。