米澤穂信 『王とサーカス』
王とサーカス/米澤 穂信

¥1,836
Amazon.co.jp
二〇〇一年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり…。「この男は、わたしのために殺されたのか?あるいは―」疑問と苦悩の果てに、太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは?『さよなら妖精』の出来事から十年の時を経て、太刀洗万智は異邦でふたたび、自らの人生をも左右するような大事件に遭遇する。二〇〇一年に実際に起きた王宮事件を取り込んで描いた壮大なフィクションにして、米澤ミステリの記念碑的傑作!(Amazonより)
今年の年末の各種ミステリランキングで軒並み1位を記録し、3冠を達成した傑作ミステリ。
ちなみに自分がこれを読んだのはランキングが出る前である、となぜか主張しておきたい気分。
著者の『さよなら妖精』という本に出てくる太刀洗万智が主人公だが、ほとんど別物なので前作を読んでいなくても問題はない。
ネパールの王宮で実際に起こった事件をきっかけに、あるひとつの殺人事件が展開されていく。
普段ニュース記事などを読んで感じる報道という行為の必要性と俗悪性。
記者である主人公の目線でそれらが誠実に描かれると共に、決して完璧な答えが導かれるわけではないけれど、太刀洗なりのひとつの信条が生まれゆく過程が興味深かった。
読者は、主人公である記者の太刀洗と同じ目線で物語を追うものの、どちらかといえば「大衆は悲劇をただ消費しているだけではないか?それこそサーカスのように」と糾弾するラジェスワル准尉や、報道することによって生まれた「報道されなかった悲劇」を叫ぶ少年の心情に共感をおぼえる。
それでもなお主人公を記者とし、端正な筆致で報道というものの意味を真摯に問う著者の姿勢もまた、尊い。
良い小説でした。
ちなみに、本書の後の主人公を描いた短編集『真実の10メートル手前』がもうすぐ発売されるとのことで、そちらも楽しみです。
王とサーカス/米澤 穂信

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二〇〇一年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり…。「この男は、わたしのために殺されたのか?あるいは―」疑問と苦悩の果てに、太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは?『さよなら妖精』の出来事から十年の時を経て、太刀洗万智は異邦でふたたび、自らの人生をも左右するような大事件に遭遇する。二〇〇一年に実際に起きた王宮事件を取り込んで描いた壮大なフィクションにして、米澤ミステリの記念碑的傑作!(Amazonより)
今年の年末の各種ミステリランキングで軒並み1位を記録し、3冠を達成した傑作ミステリ。
ちなみに自分がこれを読んだのはランキングが出る前である、となぜか主張しておきたい気分。
著者の『さよなら妖精』という本に出てくる太刀洗万智が主人公だが、ほとんど別物なので前作を読んでいなくても問題はない。
ネパールの王宮で実際に起こった事件をきっかけに、あるひとつの殺人事件が展開されていく。
普段ニュース記事などを読んで感じる報道という行為の必要性と俗悪性。
記者である主人公の目線でそれらが誠実に描かれると共に、決して完璧な答えが導かれるわけではないけれど、太刀洗なりのひとつの信条が生まれゆく過程が興味深かった。
読者は、主人公である記者の太刀洗と同じ目線で物語を追うものの、どちらかといえば「大衆は悲劇をただ消費しているだけではないか?それこそサーカスのように」と糾弾するラジェスワル准尉や、報道することによって生まれた「報道されなかった悲劇」を叫ぶ少年の心情に共感をおぼえる。
それでもなお主人公を記者とし、端正な筆致で報道というものの意味を真摯に問う著者の姿勢もまた、尊い。
良い小説でした。
ちなみに、本書の後の主人公を描いた短編集『真実の10メートル手前』がもうすぐ発売されるとのことで、そちらも楽しみです。